相談役毒蛙の日常
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二十四日目
キリトに一通りボールペンマスケットの作り方を教え、実際に作らせてみた。
「つか小学校でこう言うのやらなかったのか?」
「こういう工作より電子工作とかプログラミングとかしてたかな」
「なるほど」
「相談役は?」
「おれはこう言う工作とか、あとはプラモデルかな」
「なるほど」
キリトは机の上のパソコンを指差した。
「そのマシン、自作なんだ」
「マジか」
たしかに机の上のパソコンは市販品と細部が違った。
「うん。あぁ、それと…ユイ」
「はい、パパ」
「へ?」
なんでユイちゃんの声が?
パソコンの電源が入り、画面上にユイちゃんのグラフィックが浮かぶ。
「そのパソコンはアミュスフィアと同期してるんだ」
「へぇ…自分でやったのか?」
「勿論」
「すげぇな…」
ボッチは伊達じゃないな…
今度玉藻を頼もうかな…
「パパ、そちらの方はどなたですか?
トードさんに似ていますが…」
「うん、俺は明日葉灯俊。ALOではポイズン・トードって名乗ってるよ。
久し振りだね、ユイちゃん」
「えと…アバターと全く同じに見えるのですが…」
「ALOの最初期メンバーはみんなそうだよ。
SAOと同じシステムだったからアバターの体格や顔がリアルと同じだったんだ。
そのあとのアップデート1.0からランダム生成になったのさ」
なおほとんどのプレイヤーは知人にアイテム等を預けた上でアバターを作り直した。
リアルと同じ顔で続けてる酔狂な奴なんてイクシードの中でも半分だし、最初期プレイヤーの1%程だ。
「あの、フィジカル・ノックの危険性は…」
フィジカル・ノック。
直訳で『物理攻撃』だが、ネトゲ用語では意味が異なる。
つまり、現実での暴行。
「はは、心配ないよ。人通りの少ない所には行かないようにしてるから」
それに…
上着のポケットからあるものを取り出す。
「インスタントカメラ?」
取り出した物をキリトに圧し当てる。
「ビリってくるけどいい?」
「え?」
圧し当てていたインスタントカメラのような物を離し、キリトに渡す。
「それ、スタンガン」
「はぁ!?」
「インスタントカメラは少し中身を弄るだけでスタンガンになるんだ」
そしてもう一つ。
「あとはこれかな」
ズボンのポケットから、長さ十五センチ程の円柱と直径五センチ厚さ二センチの円盤を取り出す。
「今度はなんだよ」
「釣竿一式」
ソレをキリトに渡す。
「ペン型釣竿か」
「そうそう」
「ハンドルは?」
「ハンドルは不要さ」
返された物を展開する。
「知ってるか?釣竿って鞭になるんだぜ」
するとキリトは呆れたような顔をした。
「なぁ、相談役」
「何?」
「流石に刃物は携行してないよな?」
「勿論さ」
ステンレス定規は出さない方がいいかな。
「もってたら銃刀法にひっかかっちまう」
「ですが灯俊さんのインスタントカメラなどは軽犯罪法に抵触する危険が…」
「大丈夫。本職の刑事に合法って言われたから」
そもこのラインナップは綾雨さんに教わった物だ。
刃物だと職質された時非常に不味いから、刃物ではない武器を携行。
釣竿の間違った使い方も綾雨さんにおそわった。
まぁ、今まで使った事は無いがね。
「ならいいんだけど…」
「武器と認めた上で携行すんのはレッドラインなんだけどね」
「悪質警官だとしょっぴかれるぞ?」
「No problem. 刃物は持ってないし、ただの釣具だし」
一応錘と針がリールの中に入っている。
錘と糸でボーラも作れる。
「いつも持ち歩いてるのか?」
「勿論、備えあれば憂いなし」
キリトが、さっき自作したボールペンマスケットを手に取る。
「もしかしてこれも…?」
「いや、それは教室で輝…キスと打ち合う為の物だ」
「テルキスって、ギルドマスターの?」
「うん、リアルでも仲いいんだ」
「いや、それより教室で打ち合うって…」
「中に消しカス入れて飛ばすのさ」
「教師に見つかったらどうするんだ…」
「大丈夫、おれそれなりに成績いいから」
「そういう問題じゃない気が…」
「まぁ、確かにボールペンマスケットも武器足り得るけど、やっぱ威力とか精度とかがねぇ…」
「それさえどうにかなれば、って口振りだな」
「まぁ、一発限りの猫騙しみたいな物さ。
これを持ち歩くくらいならまだ二本目の鞭を携行した方がいい」
「相談役って鞭得意なのか?」
「まぁ、リアルで教わったし」
「ALOで使わないのか?」
「うーん…ALOの鞭とは少し違うんだ。
ほら、ゲームの鞭ってロープじゃん」
「あぁ…たしかに」
「まぁ、キリトも護身用に色々持っといた方がいいよ。
最近は物騒だしな。
スタンガンの作り方も後で教えてやるよ」
「そうだな…俺も今度釣竿買おうかな…」
「釣竿はなるべく丈夫でよくしなる物がお勧めだ。
あと釣糸も切れにくい物を選んだ方がいい」
とキリトへ護身用装備購入のアドバイスをしていると…
ドンドンと階段を駆け上がる音が聞こえた。
そうしてバタン!とドアが開いた。
「ボッチのお兄ちゃんが友達を連れてきたと聞いて!」
うん、とりあえずさ、君誰?
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