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レーヴァティン

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第四十四話 琵琶湖その六

「もうどうなるかはな」
「自明の理ですね」
「家族からも見放されているしな」
「では」
「破滅する、そんな馬鹿を見ている」
「だからですか」
「溺れるつもりはない」
 酒ではないがというのだ。
「そうした馬鹿と同じにはなりたくない」
「それでは」
「色は楽しむが」
 それはするがというのだ。
「溺れるつもりはない」
「そうですね、遊郭に入りましても」
 良太も言ってきた。
「しかしです」
「それでもだな」
「はい、たのしむことはいいですが」
「溺れずにな」
「そうしていくべきです」
 良太も言うことは同じだった。
「あと若しもですが」
「梅毒か」
「この世界にもありますので」
 この病気はというのだ。
「淋病も然りで」
「花柳病だな」 
 俗にこう呼ばれていた、遊郭即ち花柳界から感染する病であることは当時から知られていたのでこう呼ばれていたのだ。
「それはあるな」
「都でもありましたね」
「この世界では治るがな」
「はい、しかし罹るとです」
 梅毒、そして淋病といった病はというのだ。
「実に厄介なので」
「最初から気をつけるべきだな」
「あまり安い場合、そして一度罹ったという人はです」
「気をつけるべきだな」
「出来るだけ」
「わかった、しかし罹るとな」
「それならであります」
 ここで知恵を出したのは峰夫だった。
「遊郭に行った後で薬か解毒の術を飲むなりかけてもらうなりするであります」
「それで菌を殺すか」
「それは出来ますので」
「そうか、ではな」
「そうするであります、実際に用心深い人はであります」
 この世界のだ。
「そうしているであります」
「そうか、ではな」
「遊郭の後は」
「解毒の術をかけてもらうか」
「それなら拙僧が」
「行かない者にかけてもらうことはしない」
 楽しんできた者が戒律を守る行かない者に迷惑をかけてはいけない、英雄はこの考えから謙二にはいいと答えた。
「寺にでも行ってかけてもらう」
「左様ですか」
「少なくとも赤い斑点が出る前にでござる」
 智は梅毒独特の症状を話に出した。
「注意をするであります」
「だから解毒の術か」
「それをかけてもらうべきでござる」
「遊郭に行った後はだな」
「そうしてもらうであります」
「俺もそんな病気は罹りたくはない」
「鼻が落ちると聞いているでござる」
 これも梅毒の症状だ、身体の至るところが腐ってきて鼻が落ちてしまうのだ。結城秀康の鼻が落ちていたのもこれのせいだと言われている。
「その前にでござる」
「罹らない様にしてな」
「そして遊郭の後は術でござる」
「そうしていくか」
 念には念を入れてという話だった、そうした話をしながらだった。一行は素麺も鯖もたらふく楽しんでだった。
「入るとすると」
「通はそうしているそうでござるしな」
「最初から病のことを考えてか」
「そのうえで遊んでいるそうでござる」
「馬鹿息子親の目盗んで鼻が落ち」
 謙二はこうも言った。 
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