碧い銀河
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心理と歴史
ヤン提督の第一志望は、戦史研究科。
年金は貰いたいけど、艦隊指揮官として腕を揮い、栄達する事は望んでいない。
個人が歴史に影響を及ぼす事は否定できない、と思うんだけど。
奇蹟の魔術師は歴史を研究して、逆転の発想を『可能性あり』と判断した。
物質を構成する個々の原子、分子の運動を予測する事は不可能だけど。
膨大な原子や分子の結合した物質の特性、一定の法則を解析する事は可能。
上手く言えないけど、そんな感じ?
数百億に達する人類全体の感情的、心理的な反応なんて計算できるのか?
そんな声が聞こえて来そうだけど、数々の奇跡を演出した魔術師の反応は違った。
本当に参考になったのか、良く解らないけどね。
幾度も僕に質問を浴びせ、最高の笑顔を見せてくれたよ。
ヤン提督は異世界の魔術、心理歴史学《サイコ・ヒストリカル》に共感したらしい。
相手の意図、期待、願望に基き『金貨を罠の上に置く』魔術との類似性を見出したんだ。
ローエングラム侯に面談を求め、或る構想の実現に向け動き出した。
ゴールデンバウム王朝の皇帝、門閥貴族達が繰り返した愚行の再現を防ぐ秘策。
心理学と歴史を学び戦略的視点を磨く研究、優秀な人材の養成機関。
銀河帝国公認の歴史学研究機関、財団《ファウンデーション》が設立された。
アスターテ会戦で同盟の提督は判断を誤り、兵力を分散して撃破されたけど。
第四艦隊が連絡を絶った時点で、第二艦隊と第六艦隊が合流すれば。
約2万8千隻で兵力の優勢を実現して、約2万隻の帝国艦隊に挑む事が出来た。
判断を誤る最大の要因が何か、って事は一概に言えないけど。
正常な判断の出来ない感情的暴走《ヒステリー》、思考停止状態に陥る時は。
不安や恐怖の感情が昂り、恐慌状態《パニック》になる事が多いみたい。
じゃあ、どうすれば、感情の昂り、暴走を鎮める事ができる?
『怒り』を制御《コントロール》する、心理療法プログラム。
アンガーマネジメント、と関係があるかはわからないけど。
様々な刺激に対する反射的、本能的な反応を制御する方法。
『視床・皮質的停止』の《非A》、非アリストテレス的論理も魔術師を刺激した。
ヤン提督は感情に惑わされない為の能力開発組織、非A主義の研究機関も設立。
一般意味論協会の看板を掲げ、多種多様な人材を集めた。
史上稀に見る〇〇〇の撃墜王ポプラン、シェーンコップ隊長もね。
双璧と尊称された両者の特技は高く評価され、様々な研究の対象となった。
ローエングラム侯は優秀な人材の発掘、育成に協力を惜しまず資金を援助。
既成の常識を打破する常勝の天才、不敗の魔術師に倣い可能性を広げる為に。
2つの研究所には鋼鉄の砦、帝国全域から特異な才能の持ち主が集い始めた。
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