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願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)

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それでも僕は殺ってない(嘘)

 
前書き
大変長らくお待たせいたしました。
 

 
「--何や、これは…」

瓦礫の山となった火薬庫。
辺りにはまだ爆発の余波で舞った粉塵が漂っており、そこへ駆けつけた武貞達を途方にくれさせた。

「せ、先生…どうしますか?」

恐る恐る、一人の生徒が聞く。
本来ならば、学園祭よろしく楽しい一時を過ごしていたであろう彼等は、目の前の惨状に慌てふためいていた。

「取り敢えず周囲に巻き込まれた奴が居らんか探せ。
んで持って怪しいやつなら殴って吐かせろ。
この状況の犯人と目的…絶対に吐かしたれ!」

「「「はい!」」」

号令によって散り散りに捜索を開始する生徒たち。
しかしながら、未だに気づくものはいない。
所々に夥しい血の痕があることを。
そしてその場所を見つけてしまった欄豹が、発狂の如く取り乱したのは別の話である。









ところ変わって校舎内。
先程までブラドを切り刻んでいたユウジは、理子と会っていた。
会話の内容は勿論ブラドの事。
先程までの経緯、行ったことなど、最初から最後まで話していた。

「じゃあ、ブラドはもう…?」
「いや、まだ生きてるな」
「殺してないんだ」
「当然。無益な殺生はしない主義でな」
「さっき切り刻んだとか言ってなかった?」
「はて。最近物覚えが悪くてな。
そんな気もするし、しない気もする」
「…もう」

遠くから見れば話し合う男女に見えなくもない。
普段から地味に過ごしているユウジに至っては、理子のファン達のターゲット担っているが。

「そもそもの話、あれって単純に不死性が高いってだけだぞ?
まぁ力が強いってのもあるけどそれだけだしなぁ」
「いや、ユウくん主観で言われてもねぇ…」

理子でも倒せると思う。
動きだって早くなかったし。

「で、母親の形見だったか?」
「うん。ペンダントなんだけど…」

理子はジェスチャーでこのくらい、とアピールする。

「色とかは?」
「えっと、青色で銀の彫金。レディースでよくある細いチェーンが付けられてるよ」

あー、これ、か?

「え、ちょ、なにそれ!?」
「これであってるか?」

ほれ、と理子が説明した通りのペンダントを渡してやる。

「いや、あってるけど、今のなに!」
「探し物の依頼とかでよくやる手法」
「えぇー…」
「因みに次元跳躍、亜空間、検索、広域、人払い、認識阻害等の魔法で行っております」
「もうそれだけで稼いでいけるんじゃないかな…」

まぁ依頼が少ないしな。
ともあれこれで理子の懸念は無くなったわけだ。

「…ねぇ、ユウくんはさ…」
「…なんだよ」
「ユウくんは何で人のためにあろうとするの?」

いきなりどうしたこいつは。
俺が人のために…?特にこれといって誰かのためにあろうとしたことは無いんだがな。

「例えばだが。
前を歩く人間が…そうだな、ハンカチを落としたとしよう。
お前さんならどうする?」
「え?それは、拾ってあげるとか?」
「そうだな。よほどの事でもない限り拾うだろう。
俺がやってるのはそう言った事とおなじなんだよ」

まぁ他にも理由はあるだろうが、思い付かんからな。

「そっか」
「おう、そうだ」

それっきり、話はなかった。
理子が何を言いたかったのか分からんが、まぁ機嫌良さそうだったのだから、問題はないのだろう。



さて、蘭豹達が来る直前、何があったのか説明しよう。
ブラドを斬殺し続けるのにも飽きてきたところへ、シャーロックが現れたのだ。
シャーロックは言う。

「彼を殺すのは止めて欲しい」

以前のような軽い気持ちが無くなり、それは誠心誠意のお願いにとれた。

「何のために?」

と俺は切り返す。
正直に言えばこの吸血鬼を生かしておくべきではない。
それはコイツが吸血鬼だからではなく、化け物だからでもない。
この現代において、人との共存を考えず、理子のようにモノとして扱っていくこの性根が、また新しい被害者を生んでいくことに他ならないからだ。

「彼は、私の孫とそのパートナーが成長するのに必要な人材だからだ」

成る程。
俺は思った。この男は裏方でシナリオを操作する、所謂ラスボスと同義の存在だと。
だから俺は――――

「わかった」

―――承諾した。
今回俺が動いたのは、結果的に見れば理子の為なのだろう。だが初めはただ俺を、引いては俺の血をブラドが狙っていたからだ。
正当防衛、反撃、逆襲。
なんとでも言えるが、それらしいことが今回の事件なのだ。
狙われたから反撃してやった。後悔はしていない。と言うやつだ。

ブラドを引っ付かんだシャーロックは消えるように去っていき、俺もまた、見つからないようにその場を後にした。

これが今回の経緯。
何とも悲しい事件だったね。





「いい流れで話を打ち切ろうとしてるのは分かってるんだけど、倉庫の爆発は遣りすぎだと思うんだけど?」
「あれはしょうがない。うっかりだ」
 
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