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儚き想い、されど永遠の想い

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265部分:第十九話 喀血その十七


第十九話 喀血その十七

「あの丸くそして」
「シロップをかけてバターも乗せたです」
「そのケーキをですね」
「二枚です」
 それだけだ。焼いたというのだ。
「それを召し上がられますか」
「はい」
 すぐに答える真理だった。
「では御願いします」
「扉を開けますね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。婆やはだった。
 その扉を開けてだ。そのうえでだ。
 紅茶の盆とパンケーキの盆をそれぞれ片手に持って入って来たのだった。
 その婆やを見てだ。真理はだ。
 目を丸くさせてだ。こう尋ね返した。
「あの」
「はい、何か」
「今両手は」
「どちらも塞がっているというのですね」
「それでどうして扉を」
「確かに私一人ならです」
 婆や一人だと。それならばだというのだ。
「この扉を開けることはできませんでした」
「では」
「はい、私達がです」
「御手伝いさせて頂きました」
 こう言ってだ。二人の若いメイドがそれぞれ婆やの左右から出て来てだ。
 そのうえでだ。真理に対して言ってきたのである。
「婆や様の代わりにです」
「この扉を開けさせてもらいました」
「だからですね」
 ここまで聞いてだ。真理も納得して頷く。
 そのうえでだ。二人のメイド達に言うのだった。
「有り難うございます、婆やを助けてくれて」
「いえ、これが私達の仕事ですから」
「だからです」
「そうですか。それでは」
「はい、ではお嬢様」
「紅茶とケーキを召し上がられて」
 それでだ。そのうえでだと言う二人のメイドだった。
「御身体をより健やかに」
「そうして下さい」
「はい」
 真理はだ。健やかにという言葉にはだ。
 顔を曇らせ青くさせた。だがそのことには誰も気付かずにだ。今は楽しく過ごしていたのだった。彼女以外は。


第十九話   完


               2011・8・1
 
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