魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第十話
今現在、俺は自宅から篠ノ之神社までの道を走っていた。
今日は三月十日、昨日は姉さんの卒業式だった。
卒業式『だ』ではなく『だった』、そう既に終わったことだ。
昨日の卒業式には父さん母さんも俺を連れて出席していた、昨日の時点では。
おかしいと思ったのは今日の朝だ。
いつも俺を起こしに来る姉さんが来なかった。
まぁそれはいい、俺も前世では卒業式の翌日で早起きなんてしなかった。
自分で起きたのが8時半、俺は幼稚園も保育所も行って無かったが姉さんに合わせて7時に起きていた。
そのあとリビングへ行くと姉さんが膝を抱えて泣いていた。
俺が『どうしたの?』と聞いても姉さんは『何でもない』の一点張りだった。
そこで俺はふと気づいた『母さんがいない』と。
父さんは8時に家を出るから8時半現在居なくてもおかしくはない。
しかし、いつもこの時間はリビングの前の庭で洗濯物を干しているはずの母さんがいない。
俺は悟った母さんと父さんは失踪したのだと。
俺は姉さんに問いかけた『母さんはどこ?』と。
姉さんは顔を上げて言った『…母さん達は…いなくなったよ…私達を…捨てたんだ…』と、その後はまたうずくまって泣いていた。
俺はどうしていいか判らなかった。
どうしてこのタイミングなのか?
何故あの二人は失踪したのか?
テーブルの上に紙が置いてあった。
母さんの筆跡で書かれていた、どうやら二人からの置き手紙らしい。
その内容は以下の通りだった。
[千冬へ、この手紙を読んでいるということは、既に私達は発った後だと思います。
私達はある事情で此所を離れなければなりません。
あなた達を置いていく事はとても心苦しいのですが、それでもあなた達を危険に晒す訳にはいきません。
柳韻さんに話はつけてあります、後の事は柳韻さんに頼ってください。
最期に貴女の晴れ姿を見ることができて本当に良かった。
一夏の成長を見守れないのが少々心残りですが、それは貴女に任せます。
二度と会うことは叶わないでしょう。
どうか自由に正しく生きてください。
母より]
俺は取り敢えずこの事を知っているのであろう柳韻さんにこの事を伝えるべく、篠ノ之神社へ向け家を出た。
「HAHAHA!四歳児の足でこれはきついなチキショウ!」
『まだ半分じゃないか、普段の稽古よりマシでしょ』
確かにそうである、しかし…
「おいおい、何をいうのかね?いくら転生者といえど、失踪する事が判ってたとしても、育ての親がいきなり失踪してなおかつ死んだともなればかなりショックなんだよ?」
さっきから無理やりテンションをあげようとする度、母さん達の顔が、姉さんの泣いた顔が、浮かぶのだ。
『死んじゃってるの?』
「ああ、たぶん、いや、間違いなくな。
クソッ、こんなことも解ってしまうなんて、この目も考えものだな」
さっき、家を出る前、俺は父さんと母さんの情報を追った。
もしかしたらまだ近くに居るかもしれないと……
しかし現実は非情だった。
父さんと母さんの情報を見つける事はできたが、そのエイドスを視た俺は言い様の無い感覚に襲われた。
エイドスの情報が、〔生〕から〔死〕に書き変わっていたからだ。
『二人が家から出たとき気づかなかったの?』
『俺の目はいまのところは意識がある状態でしか知覚できない』
俺は自己修復術式だって使えるが、それだって魔法科主人公と違いアクティブトリガーだ。
彼のように反射的に発動することは不可能だ。
『そう、ならしょうがないね』
「お前は気づかなかったのか、橙?」
『私も寝てた、ますたーに合わせてる』
「そうか」
「……………」
「……………」
その後は互いに無言だった。
篠ノ之神社・篠ノ之家玄関前
「柳韻さーん!いますかー!?柳韻さーん!」
「はーい!」
束さんの声だがしてドタドタと足音が近づいてきた。
ガラガラと音をたてて玄関が開いた。
「やっぱりいっくんだ!どうしたの遊びに………何が有ったの?」
焦った俺の顔を見て束さんが聞いてきたが…ここで答えるべきか否か…答えよう、束さんには隠し事は通じないだろう。
「父さんと母さんがいなくなったんだ!柳韻さんを呼んで!」
「!、わかった。すぐに呼んでくる!」
束さんは驚いた顔をして家の中へ走っていった。
三十秒ほどして柳韻さんが出てきた。
「一夏君、君のお父さんとお母さんが居なくなったっていうのは本当かい?」
「うん、朝起きたら姉さんが泣いてて『母さん達は居なくなった』って言ってテーブルの上にも手紙が在って……」
「わかった、ここで…いや、束、一夏君をと部屋で待っていなさい。
私は千冬ちゃんを連れてくる!…………(何故だ !?早すぎる!)」
最後に何と言ったかは判らなかったが柳韻さんは車で走っていった。
「いっくん、中に入ろうか」
「………うん」
篠ノ之束・自室
「いっくん、いったい何があったんだい?」
「さっき…言った通り…両親が失踪した」
「ふぅ~ん、そんなに焦ることなの?いっくんにはメティスサイトが有るでしょ?」
束さんには既に魔法の前提知識はある程度教えている。
「……………はぁ、無駄だよ無駄、もうやったあとさ」
「いっくんの目って距離も如何なる防壁もすり抜けるんじゃないの?」
「そうじゃない、探したって無駄なんだよ、だって……もう、死んでるんだもん」
「え…………そんな、そんな事って……」
「事実、なんだよ。エイドスの生死の情報が、〔死〕に、なってたんだよ……二人は、もう………いないんだ」
俺は泣きそうになりながらも答えた。
「じゃあ…二人の亡骸は?ちゃんと、弔ってあげないと……」
「もう…それも無理だよ……二人を構成する肉体の…座標情報がバラバラの座標を示している」
「なんで、なんであの二人が……犯人は…わからないの?」
「無理…だよ、俺の目も万能じゃないんだ…犯人の残したものが在れば判るかも知れないけど…それも…もう無理だよ…無理なんだよ!
クソッ!なんで!なんでこんなことになってるんだ!
この目が…この目と魔法が有りながら…俺は…俺は!」
話したら楽になる?違う、いっそう現実を突きつけられるだけだ。
「いっくん………」
俺は束さんの腕に抱かれていた。
「束…さん?」
「いっくんは前に自分はもう二十歳だって言った、きっと今のいっくんは、ちーちゃんを守らないといけないとか、いろいろ考えてると思う。
だけど、悲しい時は泣いていいんだよ。
私もお祖父ちゃんがいなくなったとき、とっても悲しかった。
だから、泣いたって、いいんだよ」
「たばねさん……」
俺はそのあと泣き疲れて寝てしまった。
Side out
「寝ちゃったか…」
いっくんは前世の記憶が有るって言うし、ときどき大人っぽい所を見せるけど
寝顔とかは年相応だなぁ。
「束、ますたーの事でちょっといい?」
空気から溶け出たかのように人型の輪郭が現れた。
「どうしたの橙ちゃん?」
この娘は橙ちゃん。
いっくんの式神らしい、元は動物霊らしいけど、今は可愛いネコミミ幼女にしかみえないんだよねぇ。
「ますたーは今、精神的にとても弱っている。
私が全力で抗えば術を壊せるくらい。
ますたーは大人だけど、大人だからこそ弱ってる。
千冬と違って、両親の死を知っているのも大きい。
だから、ますたーを気にかけてあげて、もちろん千冬も」
「うん、わかった、橙ちゃんはいっくんの事が大切なんだね」
「ますたーが居るから、私が居る。
ますたーは私の存在意義で、ますたーは私の存在の前提、だから…」
「大丈夫だよ、いっくんもちーちゃんも私が元気づけてあげないとね」
「まかせた」
橙ちゃんはそう言って今度は空気に溶けるように姿を消した。
もうすぐお父さんがちーちゃんを連れてくると思うし、二人を支えてあげなきゃね!
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