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オリジナル
プロローグ (VRMMO産ソ連が異世界を赤くする話)
前書き
国家転移ものもVRMMO転移ものも大好きです!
⇒混ぜちゃえ!
という電波を受信したので書いてみました。
革命歴572年 首都モスコー クレムリン宮殿
「だから言ったのだ! 国防を疎かにする国は滅びると!」
背中まで波打つピンクブロンドの美少女が怒声を上げている。その耳はとがっており、エルフであることが知れた。
首都モスコーのクレムリン宮殿の大会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
西部大森林を超えた竜騎士による突然のレニングラード奇襲は、ソ連側に大きな被害と衝撃を与えていた。もし、陸と海から同時攻撃を受けていたら万単位の犠牲者が出ていたかもしれない。
「レニングラードの2割が灰燼に帰したのだぞ! これを我々ソビエト連邦の危機と言わずして何という!」
飛竜のブレスによりレニングラード市内で大火災が発生し、多数の犠牲が出た。警官隊や消防士、市民の有志までもが文字通り体を張って稼いだ時間で駆け付けた航空隊が、辛くも撃退に成功した。が、奇襲を許した政府・軍への批判は大きい。
統率の取れた飛竜は250匹ほどで、人間が乗っていたことから、他国軍による攻撃であることは明らかだった。建国以来初めてのことである。
"ソビエト社会主義共和国連邦"
これがこの国の名前である。500年前、大陸東部の無人地帯に建国されたこの国は、他国との交流が一切なかった。
たまたま難破した奴隷船が大陸東部に流れ着いたのが始まりだ。その生き残り500人の "子供の亜人奴隷" と偉大なる指導者にして大魔導士レーニンを始祖とする成り立ちから言って、外界の "人間” に対する恐怖は相当のものだった。
ゆえに、富国強兵を国是としたレーニンは、軍事力の強化に余念がなかったのである。その手始めである革命歴の制定と新共通語の採用は、旧時代からの決別の象徴であった。強烈な民族意識の芽生えでもある。
ちなみに、共通語は別命 "ニホンゴ" と呼ばれている。
"ソビエト" とは評議会を意味し、多種族からなる評議国である。ニホンゴにはない言葉でありレーニンの造語だと思われている。
唯一人間だったレーニン以外に獣人、エルフ、ドワーフ、竜人族、魔族などの多種多様な亜人が混じり合い、現在において純血種はほぼいない。
発現する特徴にみられる血の強さに応じて、人間系、獣人系、エルフ系ソ連人などと呼称するのが一般的である。
「すべての権力をソビエトへ」をスローガンにした強力な中央集権国家だ。
"社会主義" とは、共産主義へと至る前段階であり「平等で公正な社会」を目指す思想である。建国時、奴隷という何一つ持たないゼロからのスタートであり、 "所有" の概念はなかった。もちろん階級もなかった。絶対王政、種族差別、身分差別、貧富の差による犠牲者だった建国者たちは、共産主義に理想をみたのである。
いまだ国家の枠組みは必要とされており、社会主義から共産主義へといかに移行していくかが、ソ連最重要のテーマとなっていた。
「ファンタジー世界に共産主義とかかっこよくね?」というレーニンの言葉が残っている。
しかしながら、当初500人しかいなかったのになぜ "共和国連邦" と名乗ったのかは歴史家により解釈がわかれている。ソ連拡大を睨んだレーニンの先見の明をたたえる声もあれば、ノリと勢いに過ぎないと不当に貶める声もある。
建国500年を経て、1億を超える人口を抱えた今、連邦制がうまく機能しているのは間違いない。レーニンの数ある功績の一つであろう。
「富国強兵の国是を忘れたか! 軍縮のザマがこれだ。同志レーニン以外の人間との融和など土台無理な話だったのだ!」
だが、500年の時が流れ、レーニンの死後その感情も風化したのだろう。いつしか、レーニンの言葉に忠実な保守派と国防よりも内政を優先する革新派にわかたれ、権力争いをするようになった。
革新派が政権をとり、軍は縮小された。しかし、建国以来初めての外部の人間との接触から続く混乱振りは、混迷を極めた。
革新と保守は、そのまま融和派と排斥派に名を変え、その対立は国論を二分しつつあったが、相手――アルメイラ王国と名乗った――の回答がレニングラード奇襲だった。
幸い撃退できたもののその被害は小さくない。
ここにソ連と王国の運命は決定づいたといってよい。
「まあまあ、落ち着いてスタリンちゃん」
「カリニー、落ち着いていられるか! この無能どもは同志レーニンのお言葉に背いた挙句、人民を見殺しにしたのだぞ。それと、スタリン言うな! 私はスターリンだ!」
「わ、わたしは見殺しにするつもりなど……」
「貴様ぁ! ジュイコーの出動を妨害しておいてどの口をほざくか!」
「……」
エルフの少女――スターリンの熱弁が一息ついたのを見計らう。カリニーと呼ばれた茶髪をおかっぱにして柔和な顔をした少女が、スターリンをなだめようとするが一向に収まらない。陸軍人民委員のトゥハウもひげ面を怒りで真っ赤にしている。
やり玉に挙げられたケレンも黙るしかない。確かに彼のミスだったからだ。ただ、軍部の台頭に否定的な融和派の彼は、どうしても軍を信用できなかったのだ。
そのせいで、レニングラード救援が遅れたことも理解している。薄くなった額に汗を流しながら、彼はカリニー教育人民委員のとりなしに内心安堵していた。だから、強気の姿勢を崩さずいっそ傲慢に言い放つ。
「だが、だからといって無断出動したジュイコー大将を処罰しないわけにはいかない。命令違反は命令違反。軍法会議を開催する意思は変わらない」
「ジュイコーが素早く動かねばどれだけの被害がでたか……ケレン書記長は責任を擦り付けるつもりか!?」
「スターリン民族人民委員、言葉が過ぎるぞ。だいたい軍部が信用ならんからいかんのだ。今回の責はすべて軍部にある」
複数の人民委員が、そうだそうだ、と唱和した。ようするにケレンたちは軍部をスケープゴートにするつもりだった。
ソ連の最高意思決定機関たる人民委員会議で軍法会議の開催が決まれば、ジュイコーはただではすまないだろう。
「……それが書記長たちの意思ですか?」
「そうだ、モロフィ外務人民委員」
それまで黙っていたグラマラスで妖艶な美女がケレンに問いかける。ため息をつきながら背中の羽を摩る姿をみて、ケレンは違和感を覚える。彼女がこの仕草をするときは碌なことがないからだ。
「だ、そうだリベヤ内務人民委員」
「ウフフ、お馬鹿さんをルビヤンカの地下にご案な~い」
「な!?」
会議室の扉が突如開くと、武装した国家保安委員会の職員たちが流れ込んでくる。あっという間にケレンたち融和派は拘束されてしまった。ニヤニヤしながら沈黙を守っていたリベヤの鮮やかな行動だった。
「リベヤ! 貴様裏切ったか!」
「はい? 裏切るも何もわたしは最初からあなたたちクズどもの仲間になったつもりはありませんしい」
リベヤは内務人民委員と国家保安委員会議長を兼任しており、国内の綱紀粛正を行ってきた。その手腕は確かで、ケレンの覚えもよく敵対者の情報をあれこれと流してきたのだ。
そのリベヤの裏切りにケレンたちは愕然とするが、もはやどうにもならない。そして、自らの運命を悟ると恐怖に陥る。
「た、頼む。命だけは助けてくれ! 金ならやる!」
「不正に蓄財した金なんて要るわけないでしょお。人間からの賄賂と軍を縮小して浮いた予算を懐にいれるなんて、やっぱりクズね」
「同志レーニンにあの世で詫びてこい」
「くそっ、はなせぇッ!!」
連行されていくケレンたちを冷たい目で一瞥すると、スターリンは、議長席に堂々と座る。
「さて、売国奴ケレンは粛清された。この国難を乗り越えるために我々は挙国し一致しなければならない。そのためにも、私スターリンが新たな書記長としてソ連人民を導くことを父祖レーニンに誓う。異議のある者はいるか?」
「異議なし」
「……異議なし」
「異議なぁし」
人民委員たちからの賛同を得て、保守派・排斥派のスターリンが電撃的に書記長へと就任した。
この知らせは新聞やラジオを通じてすぐさまソ連全土へと伝えられ、ソ連民は新たなクレムリンの主人による新時代の幕開けを感じるのだった。
後書き
設定だけぽちぽちつくっています。
王国には2011年1月の日本の外交官がいたり、レーニンの中の人は第3次世界大戦後の2048年日本で暮らす孤児だったり。
レーニンは銀髪オッドアイだったり。
果たしてレーニンは何者なんでしょうね。
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