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真田十勇士

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巻ノ百二十一 天下人の器その七

「必ずです」
「勝てるか」
「ご心配は無用です」
 秀頼にこうも話した。
「必ずや」
「そうか」
「はい」 
 主を安心させる為にあえてこう言うのだった。
「お任せ下さい、我等だけでなく」
「天下の豪傑達もじゃな」
「集まっています」
 その彼等もというのだ。
「後藤殿や長曾我部殿、それに真田殿」
「真田というと」
「はい、お父上はもうお亡くなりになっていますが」
「確か子が」
「以前それがしがお話しましたが」
「真田源次郎だったな」
「その御仁と家臣の方々とご子息が」
 その彼等がというのだ。
「来てくれるかと」
「そうなのか」
「文も送っています」
「もう届いておるか」
「九度山の方におられますが」
 その九度山にというのだ。
「既に」
「左様か」
「はい、真田殿は伊賀者達が見張っているでしょうが」
「それでもじゃな」
「必ずや来てくれます」
 こう言うのだった。
「ですからご安心を」
「そなたが言うのならな」
 秀頼は優しい、そして鷹揚な笑みで大野に応えた。家臣には優しく常にその心を労わる主なのが秀頼だ。
「間違いない」
「有り難きお言葉」
「戦のことはな。しかしな」
「民達はですか」
「家を去る、これは気の毒じゃ」
 天守から見つつ言うのだった。
「やはりな」
「戦の常です」
「そうじゃな、しかしな」
「しかしとは」
「その苦労を助ける為に」
 ここでこう言った秀頼だった。
「逃れている間の飯や戻ってきた時に家を建て直す為の銭を置いておくか」
「戦には」
「戦にも使うがな」
 それでもというのだ。
「豊臣の銭はまだまだ多いであろう」
「はい、十万の兵を迎え一年養っても」
 それでもとだ、今度は大野の末の弟である大野治胤が応えてきた。
「まだ十分にです」
「銭があるな」
「左様です」
「ではじゃ」
 それならとだ、秀頼は治胤に応えまた言った。
「銭を出してやれ」
「そうされますか」
「民を苦しめるのは悪じゃ」
「そしてその悪をですか」
「償うのも人のすべきことじゃ」
 だからだというのだ。
「その様にせよ、よいな」
「わかり申した」
「戦の時ですから」
 ここで言ったのは大野の上の弟の治房であった。
「やはり銭は」
「戦にじゃな」
「全て使うべきかと」
「そうじゃな、しかし余るのならな」
「それならですか」
「そうしてもよかろう」
 こう考えてだというのだ。 
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