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ユキアンのネタ倉庫

作者:ユキアン
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Knight's & Magic & Carrier 3



三徹の代償の深い隈を付けた状態で新入生のガキの前にツェンドルブの制式採用機ツェンドリンブルに乗り、新入生のひよっこ(生贄)共の前に大量の幻晶甲冑と共に姿を見せる。

「よく来たな、ひよっこ共!!オレが銀凰騎士団副団長のトールだ!!見ての通り、オレ達は修羅場の真っ最中だ!!指導内容は全て実技!!内容は砦を建ててもらう!!文句を言う奴は入学できなかった者と入れ替える!!お前たちには工具でもあり、相棒でもある幻晶甲冑が二人に一機与えられる!!整備から改造まで全てペアで行う。半年後にもう一機が与えられるがペアはそのままだ。習うより慣れろだ!!ペアはこちらで決定している!!あとは砦づくりの専門家のペッレルヴォ氏を招いているからそちらの指示に従うように!!」

それだけを告げて荷車の中からレックスパーツ装備のキンググリッドマンあらため、レックスグリッドマンに搭乗して作業現場に戻る。国機研に納品するスレイプニールの製造が遅れているのだ。原因は性能差の激しい魔力転換炉を強引に調整するためだ。そこをなんとかした所でエルが倒れ、船体を組み上げた所でダーヴィド達も倒れ、現在稼働率は10%程だ。そろそろ最初に倒れた奴らが復帰する頃だが、その後はオレが倒れそうなのだ。そんな中で新人の指導など出来るはずがない。

そこで陛下から銀凰騎士団の砦を作れとの命令が来たのでこれ幸いと新人に行わせることにしたのだ。こっちの修羅場が終わったらちゃんとした歓迎会とかをしてやるから今はキビキビ働けぃ!!





馬車の振動が睡眠導入になるのか意識が落ちそうになるのを舌を強く噛んで覚醒させる。

「眠そうだな、トルティオネス」

「失礼しました。スレイプニール級2番艦の製造で忙しかった物ですから。団長はダウンしてますけど」

馬車の振動に揺られてエルがオレの膝を枕にして寝ている。男相手に膝枕をする趣味はない。嬢ちゃんが居ればそっちに任せている所だが、今回は魔力転換炉の製造の秘密を教えていただけることになったためお留守番だ。

「報告は聞いておる。魔力転換炉の調整に手こずったようだな」

「お恥ずかしながら。稼働安全域までは持っていきましたが1番艦より先にダメになる可能性が高いです」

「そこまでか」

「実験回数が少ないので、まだ調整不足というのが本音です。最低でも3桁の実験を行いたいのですが、大きな事故を起こしそうなので」

メルトダウンで済めばいいなぁ。大爆発とか汚染とかは無いとは思うけど、どうなるか分からん。ゲッター炉心よりは大丈夫なのは確定だけどな。あれがメルトダウンしたらゲッターと一つになるしかない。ふと思ったんだが、この世界にゲッター線は無いよな?確かめる術がないからどうしようもないけど。

「どうした、トルティオネス」

「いえ、少し気になったことが合ったのですが、思い違いのようでした。それにしても、護衛が離れていて大丈夫なのでしょうか?」

「ほう、やはり気付くか」

「レーダーの術式を編んだ張本人ですから」

この馬車を囲むように10機ほどの魔力転換炉の反応を掴んでいる。吸排気音はほとんど聞こえないが、距離の問題だろう。木々の隙間から一瞬だけ捉えた姿はカルダトアとは別種の機体で、練度もかなりのものだろう。エルも足音と僅かな吸排気音に反応して起き上がり外を確認する。確認が終わると先程までと同じように人の膝を枕に眠りに落ちる。それにちょっとだけイラッとする。

「トルティオネス、お主も少し眠れ。今更その程度で不敬だなどとはもうさん」

「すみませんが、お言葉に甘えさせていただきます」

気を抜いた途端意識が暗転する。どれだけ眠っていたかは分からないが、寝ながらも使用していたレーダーの魔術が異常を起こして飛び起きる。エルが転がり落ちて痛そうにしているがこっちはそれどころじゃない。窓の外を確認すると同時にいつでも魔術触媒を抜けるように構える。外はいつの間にか霧に覆われ、この霧がレーダーをジャミングしているようだ。陛下とオルヴァー所長が慌てていないということは、これが魔力転換炉の生産地を守る結界でもあるのだろう。

「いたたた、トール、何があったんですか?」

「この霧がミノ粉と同じだ。オレのレーダーの魔術がジャミングされている。すごいな、磁気も狂わされてるし、風の流れすら歪だ。バミューダに近いんだろうな。それを魔術で再現している」

「本当だ。レーダーの感度を最低まで下げても無駄みたいですね」

「だろう」

結構強力で対抗するのも馬鹿らしいので抵抗をやめて席に座る。

「そろそろ目的地ですか、オルヴァー所長」

「何故私に?」

「オレとエルがアレだけのものを作りまくってようやく連れて行って貰える場所に貴方がいる。生産地出身なのでしょう。それも、繋ぎ役を担った」

「それだけでは分からないですよ。私も他の代償を払ってここにいるかもしれません」

「ならもう一つ、魔力の質が違うんですよね、貴方。それと模擬戦の時のダーシュの騎操士達もだ。ついでに周りを護衛しているのもそうだな」

「そこまで分かりますか。やはり、貴方達は異質で、面白いですね」

「やりたいことと寿命を考えると色々と手を出しまくる必要があるんでね。魔力転換炉の技術が欲しいのも効率のためだしな」

「ちなみにですが、魔力転換炉の技術を得てどうしますか?」

「とりあえずは超大型化してスレイプニール級に1基で十分にしたい。あまり連結させると負担が大きいことはわかったからな。その次はサイズは小さくして通常の魔力転換炉の3倍ぐらいの大きさで5倍ぐらいの出力が出せるものを用意してから専用機作りだな。設計図は引いてあるんだけど、見てみるか?」

「是非」

オレの専用機として考えている物の設計図を荷物の中から引っ張り出して見せる。

「すごく、大きいですね。魔力転換炉の大きさを聞いた時点で分かっていましたが、これは、剣にまで魔力転換炉を積みますか」

「サイズがサイズだし、頑丈さも必要になる。そうなると幻晶騎士と同じで肉体強化を使う必要がある。それと皮膚硬化もだ。対艦戦用幻晶騎士だからな」

「対艦戦、スレイプニールが奪われると?」

「所詮は技術。真似をされるのは先行者の特権だ。それに対抗する物を作るまでがセットだ。あと、趣味」

オレはリアルロボットよりもスーパーロボットが好きだ。それが厳つければ厳ついほど良い。それにベストマッチした対艦刀を引っさげた特機(スーパーロボット)

グルンガスト零式

個人的にはヴァルシオンの方が好きなのだが、歪曲フィールドもクロスマッシャーも再現できないために断念。あっ、メガ・グラビトンウェーブは再現できた。ただし、使用した本人にも超重力が襲いかかり自壊してしまうために断念した。

その点、零式ならばブーストナックルがワイヤー式になるだけで他は殆ど再現できた。無論、斬艦刀もだ。その斬艦刀に魔力転換炉を搭載しなければならない上に、先程あげた通常の魔力転換炉の3倍ぐらいの大きさで5倍ぐらいの出力が出せるものを用意しなければならない。何とか再現したいものだがどうなるやら。

「それにしても、幻晶騎士に人の顔ですか。それも厳ついですね」

「団長の方が異色ですよ。サイズは一回り大きくなる程度でしょうが、魔力転換炉を2基か3基搭載するのは確定ですし、遠近両用の魔導兵装を開発中ですし」

「あっ、ネタバレするなんて酷いですよトール!!折角親方たちにも内緒にしているのに」

「やかましいわ。緊急展開滑走翼専用機のアーバレストと緊急展開滑走翼強襲用機のレーヴァティンの設計図を勝手に持ち出しやがった仕返しだ」

「お主ら、スレイプニールで忙しいはずなのに何時そんなものを作っておる」

「食事をしながらが多いですね。左手でパンを食いながら右手で図面を引いてます」

「あとは、全体に合わせて動かないと効率が悪いですから、空いた時間にちょこちょこと」

「その時間を休息に使おうとは思わんのか」

「普通ならそうなのですが、現在は修羅場に突入中です。途中での休息は途中で力尽きるのとほぼ変わりません」

「ですので倒れるまで休ませないが今の現状です。そろそろ鍛冶師から殉職者が現れるでしょうが、とある国ではよくあることです」

日本ではよくあることだ。そんなことを話していると霧を抜け、眼前に壁が見えた。幻晶騎士ですら登るのが大変そうな壁とも呼べる谷と、その谷間を塞ぐ関が聳え立っていた。それを守るように森のなかに居た幻晶騎士が駆動状態でも2個中隊いる。また、関には中型小型のダインスレイブが合計で8基見える。

「最優先でこっちに回したみたいですね。関内に魔力転換炉が結構仕込んであるみたいですし」

「関全体に大規模な皮膚強化と肉体強化がかかってますね。大型のダインスレイブじゃないと抜けそうにないですね」

「お主らなら一目見ただけで見抜くか。この先が生産地だ」

関内を通過中もエルは初めて見る型の幻晶騎士をつぶさに観察し、オレは関の魔術をつぶさに観察する。

「魔力効率は、オレのほうが上だな。というより、全体的に古い感じがするな」

「幻晶騎士も何処か、この場所に合っていない感じがします。森の中での護衛も行うための仕様なのでしょうが、2機種を運用した方がいいと思いますね」

「ここはFAプランを売り込むチャンスか?」

「興味本位ですが、この関を貴方達が突破するならどうしますか?」

オルヴァー所長の質問にオレとエルは即答する。

「突破だけなら緊急展開滑走翼で上から通り抜けるか」

「もしくは地面がそこまで踏み固められていませんから大型ドリルで穴を掘ってスルーが予算的にも楽ですね」

陛下とオルヴァー所長が引いているが、これはスマートに解決したときだ。

「落とすとすれば、予算度外視で森の入口からスレイプニールのアームストロングと中型ダインスレイブで森を切り開きながら、そのまま関を大型ダインスレイブで破砕します。もしくは魔力転換炉を使い捨ての爆弾にして吹き飛ばすかですね。もったいないので絶対にしませんけど」

「時間度外視なら森の地下に拠点を築いて、甲冑騎士の斥候型をベースに更に改良を施して暗殺なり、毒を撒いたり、夜中に大きな音を鳴らしたりで戦闘力を削るだけ削ってを繰り返してじっくりと料理でしょうね。おはようからお休みどころかそのまま徹夜で嫌がらせですね。こっちは3交代制位で回せば関側の体制にもよるけど2ヶ月でガタガタにはなるかな?こっち側の練度次第だけど。面倒だから絶対にやりたくないけど」

正直、最初に出した緊急展開滑走翼で夜間迷彩を施してやるのが一番簡単だろうな。陛下達が更に引いているが、質問してきたのは二人だからな。

馬車が緩やかな上り道を上っていき、峰を越えた所で目的地が見えた。四方を山に囲まれた盆地に存在する森。その中央に明らかに人の手が入った上で前世での物語に出てくるような大樹とそれらを利用した建造物の数々。

「あれがわしらの目的地、アルフヘイムである」

発音が少し異なるだけでほぼ妖精郷と同じだろう名前に確信する。

「アルフヘイムとは秘匿者の末裔、魔と技の民、エルフの住まう地」

「そして魔力転換炉の生産地の一つだ。約束を果たす時が来たな」







「ここが、魔力変換炉の生産地」

「製法どころか生産地も秘匿されていたから気にはなっていたが、こんな場所だったとはな。探知系の魔術は未だにジャミングされてるな。まあ、気温から標高は割り出せるから、あとは夜になれば星から座標計算ぐらいは余裕だな」

「お主、そんなことまで出来たのか」

「手元に道具がないんで正確性はないですが」

荷物の中から地図を取り出して指で円を描く。

「大体ここら辺でしょう?」

「……黙秘させてもらいます」

「返し方として悪いですよ。そういう場合は笑いながら否定する方が良い。まっ、製造方法が知れれば制圧なんて面倒なことはしませんよ」

「……考えたことはないのですか?製造方法が秘匿されているのに我々エルフが攻め込まれていないのは製造方法を知っても製造できないと」

「大方、魔術で製造するんだろう?魔力転換炉のアホなほど硬い金属を加工するのに」

「気付いていましたか」

「そりゃあ、気付く。まっ、別にオレ達以降の世代に製造方法が伝わらなくても良い。オレ達は今、魔力転換炉か、それの代替になる物を作れればな。オレとエルなら技術的な問題程度乗り越えてやるさ」

「やってやりますよ。トールが一緒なら何処までも突き進めますよ」

陛下がオレ達を変な目で見てくる。あの目はいつもの諦めで見てくる目じゃない。何処かで見たことがある目だ。今世じゃなくて前世で見た、そう、確か

「陛下、今、オレ達のことをそっちの目で見たでしょう」

「そっちとは?」

「はっきり言っておきますけどオレはノーマルですよ!!男色の趣味なんて一切ないですから!!」

「いや、エルネスティの見た目からな、そっちに手を染めたのかと」

「ぶっちゃけ、トラウマから不能なんですから染まることなんて絶対にないですよ!!」

「その年で不能か」

「脂ぎったおっさんに無理矢理掘られそうになったら不能にもなりますよ」

「それは、まあ、なんだ、許せ」

「二度と誤解しないなら一度だけは許します」

不能なのは結構気にしてることだが、知らないのなら仕方ない。知っていて話題にするのなら男として相手を消すしかない。

馬車の中の空気が酷く重い物に変わるが無視だ無視。やがて馬車はアルフヘイムの中でも際立って奇妙な形をした建物へと向かう。巻き貝の様に見えなくもないし、土台部分はキノコのようにも見える不思議な建物だ。元建築家としては中々興味深い。

「ここがアルフヘイムの中枢機関、森護府じゃ」

馬車が近づくと森護府の扉が開かれて、馬車が扉を潜る。最初からそういうために作ってあるんだろうな。そして、案内に現れたエルフは本来の文化に沿った服装をしていた。なるほど、元の世界のラノベなんかと変わらないような文化なのだろう。

「ようこそアンブロシウス陛下、オルヴァー様、こちらへ。中で大老がお待ちです」

案内のエルフに通されたのは、祭壇にも見えるが玉座と言われても納得できそうな場所であり、中央の椅子に腰掛ける者が居た。その者に大して陛下が挨拶をする。

「久しいのぅ、大老・キトリー。わしが玉座に着いて以来であるから30年ぶりほどか」

キトリーと呼ばれた存在をオレはどう捉えて良いのか悩む。これがエルフの成れの果ての直前と言うものだろうか。

「そう長いときではない、アンブロシウス。だがお前は老けたな」

声を聞いて更に違和感が酷くなる。これは本当に生きている者が出せる声なのか。機械に喋らせた方がまだ生きているように感じられるほど、聞き取りにくい。脳が声ではなく音としか捉えることが難しい。

「ご挨拶じゃのぅ、まあ徒人とはそういうものじゃ。さて、此度はわしらの要求を聞き入れたこと感謝いたそう」

「よい、大いなる思索の時のために、必要なこともあると理解している」

「先に伝わっているかも知れぬが、わしの要件は魔力転換炉の製法よ。それを、この二人に伝えてもらいたい」

「お前もそれを問うのだな」

「わしもとな?」

「陛下、当然のことですが魔力転換炉の数がそのまま戦力の差に繋がる以上は過去にも製法を聞き出すのは当然でしょう」

「そうだ。歴代の徒人の王も一度はそれを問うてきた。毎回連れて来る者は異なるが、そのことごとくが失敗に終わった」

「まあ、当然でしょうね。大体の予想は付いていますよ。魔力転換炉はエルフの種族的な特徴によってのみ製造が可能。徒人の我らにはそれが出来なかった。場合によっては術式すら理解できなかった。だけどそれを周りに知られたくないがために書物にも一切残っていない。そんなところなんでしょう。そして徒人とエルフの違い、正確に言えば魔力転換炉の製造のための特性の違いとは魔力を直接操れるかどうか。つまり、エルフは徒人と魔獣の中間に位置する種族なのでしょう。それすらも予想できない過去の術士や学者とは一緒にして欲しくはないですね」

「ほう、徒人にしては頭が回るようだ。徒人と魔獣の中間に位置する種族かどうかはともかく、それ以外はほぼ事実だ。それを予想し、知ってなお製法を欲するのか。無駄であるのに」

「この世に無駄なんてものは一切ない。ゴミだろうと、いずれは時の流れがそれを星の循環に戻す」

「ほぅ、見てきたかのように言うのだな」

「見る必要はない。オレとエルは知っているだけだ。だが、知らない知識もある。それが今回は魔力転換炉の製法に関わることだけだ。エルフが長い時を思索するように、オレとエルは短い時を幻晶機の開発に捧げるだけだ」

「ふむ、少し試させてもらおうか。アンブロシウス、離れておれ」

大老に言われるまま陛下がオレ達から距離を離して壁際まで移動する。その間にエルに小声でいつでも魔術触媒を抜けるように指示を出しておく。そして大老が腕を上げると同時に炎の玉がいくつも浮き上がり、それと同じ数の不可視の風の玉が浮かんでいる。

「炎は任せたぞ、エル!!」

そう言うと同時にポケットからメリケンサック型の魔術触媒を装備し、術式を組み上げる。

「豪熱マシンガンパンチ!!」

肉体強化を全開で発動し、パンチと同時に風の弾丸を撃ち出して大老が生み出した風の玉を撃ち落とす。エルも同じようにウィンチェスターを抜いて、炎の弾丸で大老が生み出した炎の玉を撃ち落とす。

「トール、なんですかその魔術触媒は。普通の杖だったはずでしょう?」

「魔術触媒を複数持ってるんだよ。状況に合わせて一番良いのを使うだけだ」

懐には普通の杖型も入っているし、指輪型や工具型、靴底に仕込んだ鉄板など色々仕込んである。

「なるほど、確かにこれまでの徒人とは異なるようだ。誰ぞ、ある」

大老の言葉に一人の男性エルフが現れる。

「この者たちを奥へ案内せよ。魔力転換炉についての知識を所望だ、望むだけ教えてやれ」

どうやら認められたようだな。さて、夢にまた一歩近づくか。












触媒結晶、血液晶、精霊銀、それに詩か。新たな研究課題が増えたな。

「エル、お前はこれからどうする?」

「僕は専用機の開発に取り掛かります。現状で最高の触媒結晶がありますから」

「ワンオフなら問題はないか。なら錬金術士を借りるぞ、少し実験と研究をしたい」

「何をするんですか?」

「血液晶は触れないが、触媒結晶と詩に関してだな。錬金術士には触媒結晶の調整と言うか、ブレンドを試してみたい。成功すれば安定した高出力の触媒結晶が作れるかもしれん。オレは詩の術式を弄る。アレとオレ達の術式、そして前世の知識があれば無限の可能性が広がる予感がする」

「それは面白そうですね。僕も何かお手伝いしましょうか?」

「なら、幾つか魔力転換炉を作って確保していてくれ。グルンガスト零式の製作を頼む。実験が終わった後はスレイプニールの改良を行う必要があるし、ひよっこ共に経験を積ませないといけないからな」

零式の設計図をエルに渡しておく。自分の手で作れないのが残念だが仕方ない。オレは艦が専門だからな。

「それがありましたね。分かりました。多少弄るかもしれませんが、出来る限りを再現してみせます」

「任せる。それにしても、あと一人ぐらいは同類が欲しいな。手が回りきらん」

「そうですね。確かに仕事に殺されそうですよね」

「ダーヴィド達も育ってきてるんだが、オレ達のレベルまではまだまだ遠いな」

「仕方ないでしょう。僕達が異物なんですから」

「そうなんだよなぁ。まっ、割り切るしか無いよな」














「エル、やはり歌はリリンが生み出した最高の文化であり、ヤック・デカルチャーの塊だったぞ!!」

エルフに伝わる詩の術式を人が使う術式と混ぜ合わすことで完成した楽曲術式の凄さを分かち合おうと工房へ飛び込んだのだが、そこでは何故かオレの専用機として完成したと報告があった零式と何故か製造されているグルンガストの獅子型がスレイプニールに搬送されていた。

「おいダーヴィド、これは一体何事だ?」

「げっ、トール。おい、誰かエルネスティの坊主を連れてこい」

「ほほぅ、つまりはエルの仕業か。量産はともかく、グルンガストを持ち出してどうするつもりだったのかぐらいは知ってるだろう?吐け」

「あ〜、そのだな、アンブロシウス陛下が退位されたのは知ってるな?」

「ああ、さすがにそれぐらいは知っている」

「それで、その前陛下と留学していた皇太子殿下が専用機をご所望されて、その条件に合うのが目の前にあって、足りない分を仕様を多少変更して製造したのがあっちの方だ」

「アレはオレの専用機だって言ってただろうが!!」

「だが、坊主が言うには研究が完成したら別の専用機を作るはずだから、その分の予算を確保するために売り払おうって」

「ぐっ、確かに否定できんな。くそっ、グルンガストの販売で得た予算は次のオレの専用機に、いや、先にスレイプニールの次の型の艦の製造に回すからな!!」

「おい、専用機は良いのかよ?」

「研究は完成したがそれを磨かなければならないからな。実験艦として新しいのを製造する。こいつは決定事項だ!!」

くそっ、一度も乗れなかった。だが、楽曲術式によって更なる進化を果たした機体を絶対に作ってやるからな!!


 
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