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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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リトルガーデン ー終極ー

 辺りに広がるは万物を死滅させる灼熱の炎
 アキトたちが放った炎は天に届くが如く勢いで今なお燃え続け、時間の経過と共にその勢いを増していく。

 その業火の中、アキトは悠々と歩を進める。
 彼はゾロとビビの2人を救出すべく急ぎ足で炎の中を進んでいた。

 唯の人間が何の備えもせずにその炎の中に立ち入ればたちまちその業火に身体を焼かれ、容易く死を迎えるだろう。
 それが自然の摂理だ。

 しかし、アキトは普通の人間ではない。
 海の至宝と呼ばれる悪魔の実であるジカジカの実を食すことで固有の能力を手に入れた能力者であり、斥力と引力を操る磁界人間だ。

 その能力によって生み出した物理的な衝撃を弾く膜によってアキトは炎を弾いていた。 
 加えて、膜の表面に触れた炎の動きを能力によって操作することで悠々と足を進める。 
 周囲から見れば炎が独りでに意思を持っているかのごとくアキトを避けているように見えるだろう。
 その全てそのがアキトの有する能力によってもたらされたものである。

 それは実に自然の摂理を逸脱したものであり、アキトの有する能力の応用性の高さを示す光景でもあった。

 だが、その状態を永遠に維持出来るわけではない。
 膜内の酸素が尽きれば当然呼吸困難へと陥り、膜の維持に支障をきたすことになる。
 故に、アキトは足を急ぎ足で進め、2人の救出へと向かっている。

 周囲には同じく蝋人形へと変えられたブロギーの姿もあったが、先ずは2人の救出を優先する。
 巨人族であるブロギーの巨体に纏わりつく蝋が全て溶けるには2人よりも多くの時間を必要とするだろうと見越してのことだ。



 遂に、アキトはゾロとビビの2人のもとへと辿り着く。
 見れば2人の蝋は無事炎の熱によって溶け、生気が戻り始めていた。

 アキト自身、生きた人間の蝋人形を見るのは始めてであるため、何ともいえない気持ちで蝋が溶けるのを眺める。
 そもそも、人を生きたまま人形にするとはどういう感性をしているのか疑問を持たずにはいられなかった。

 先ずは、ビビが意識を取り戻す。

「けほけほっ!こ、ここは?」

 彼女は苦し気に咳き込み、周囲の状況を確認する。

「意識はしっかりしているか、ビビ?」

 アキトは咳き込むビビの背中を優しくさすり、今にも倒れそうな彼女の肩に手を回し支える。
 ビビはアキトの顔を不思議げに見つめる。

「アキトさん……?私は蝋人形にされたはずじゃ……」

 蝋人形にされる以前のこともしっかり覚えており、心身共に問題はなさそうだ。
 彼女が生きていることにアキトは心より安堵する。

 しかし、本当に危なかった。
 もしも、カルーと遭遇するのが少しでも遅れていれば2人を助けることが出来なかったかもしれない。

「んぁ?ここは……」

 続けて、ゾロが意識を取り戻す。
 ゾロは気の抜けた声と共に辺りを見回している。

「ゾロ、意識ははっきりしているか?」
「おお、アキト、助けてくれたのか」
「……緊張感の欠片もないな、ゾロ」

 本当にそう思う。
 ゾロは自分があと数分で死んでいたかもしれないことを理解しているのだろうか。

「つーか、周りが燃えているのに何で俺達は無事なんだ?」
「俺の能力だ」
「ああ、そういう……」

 アキトの説明を何と無しにゾロは理解する。
 対するビビは今更ながら自分が炎に包まれていることに気付き驚きの声を上げていたが。

「先ずは、ここから脱出するぞ」

 ビビの驚愕の声を今は無視しアキトはゾロの襟首を掴みその場から跳躍した。



 今なお勢いが衰えることなく自身の眼前で燃え続ける業火
 ウソップは点火したのは自分とはいえ中にいるゾロとビビの安否が心配でならなかった。
 先程、アキトが2人を救出に向かったのは分かっているが、心配なものは心配であった。

 それにしてもアキトの能力は便利すぎではないだろうか。

 予備動作無しの不可視の攻撃と引き寄せの能力
 例え、炎の中であろうとも行動を可能とする防御力
 加えて、本人曰く空を闊歩することも可能らしい。

 利便性が高すぎる。
 もはや何でもありな気がしてきた。

「ほらしゃきっとしなさい、ルフィ」
「わ、分かったよ、ナミ。分かったから引っ張らないでくれよ」

 ルフィを一喝するナミ
 見れば彼女はルフィの頬を抓り、此方へと引っ張ってきていた。

 どうやらナミの方も上手くルフィを正気に戻すことに成功したようだ。

 瞬間、前方の炎から何かが飛び出した。
 目を凝らせば上空にてゾロとビビの2人を両腕に抱えたアキトの姿が見えた。
 アキトは2人分の重さをものともせずに緩やかな動きで地上に降り立つ。

「ん?おおー!ゾロにビビじゃねーか!」

 ルフィは嬉しさに顔を綻ばせ、笑顔を浮かべる。
 ナミとウソップも同じように安堵する。

「ビビ!」

 ナミは嬉しさのあまりビビに思い切り抱き着いた。

「わっぷっ!ナ、ナミさん!?」
「良かった!本当にっ!ビビが無事で本当にっ!」
「ナミさん……」

 自身の身を真摯に心配してくれるナミに心打たれるビビ
 アキトはこうした仲間を心から思う気持ちがナミの美徳だと思う。

「ナミさん、ありがとう」

 ビビは照れくさそうにナミの背に腕を回し抱きしめ返す。  

「おおー!ゾロー、無事だったかー!」
「おお。ルフィ、お前が無事あの暗示から脱出したらしいな」

 そんな彼女達の周囲ではルフィとゾロの2人が呑気に互いの無事を喜び合っている。

「取りあえず一件落着だな、アキト」
「ああ」

 アキトとウソップの2人が互いの健闘を讃え合う。
 しばらく間、ルフィ達は和やかな時間が過ぎた。



「あの、ナミさん。そろそろ離れて……」

 今なお、ナミは抱擁の力を緩めない。
 ビビの静止の声虚しくナミはビビから離れない。
 それどころかナミはより一層ビビを抱きしめる力を強めた。

 人目を憚らずに抱き着いてくるナミに対してビビは羞恥心を感じ、頬を赤く染めた
 アキト達はそんな彼女たちを温かめな目で見つめる。

 アキト達のそんな視線に気付き一ビビは一層頬を赤く染め上げる。
 そんなビビの様子に気付くことなくナミは一層抱擁の力を強め、そんなナミに余計に照れるビビという幸せのスパイラルが降臨する。


ええ光景や……


 美人である2人が抱き合う光景はとても目の癒しになる。
 アキトはただ静かにナミとビビの2人を見ていた。
 この光景を見逃したことをサンジが知れば悔しがること間違いなしだろう。

 今なお、ビビは慌てた様子でナミを引き剝がそうと奮闘している。
 実に見応えがあり、絵になる光景であったことは想像に難くない。

 その後、事態の収束には数分の時を要した。



「えっと、私達を助けてくれてありがとうございます、アキトさん」

 ビビは何とかナミを引き剝がした。
 彼女は続けて気恥ずかし気にアキトに頭を下げた。
 まだ先程のことが恥ずかしいのか頬を赤く染めてはいるが

 感謝を忘れることなく相手に真摯に伝えることは良いことだ。
 アキト自身お礼を述べられて悪い気はしない。

「仲間なんだ。助けるのは当たり前だ」

 アキトは彼女の頭を優しく撫でる。


ええ子や……


 ビビの髪はとてもサラサラし、触り心地が良いものであった。
 アキトは無意識に彼女の頭を撫で続ける。

 対するビビは満更でもなさそうに目を細め、気恥ずかし気に頬を赤く染める。
 しかし、アキトの手を振り払うことはなくなすがままである。

 ビビは異性に頭を撫でられているというのに何故か嫌悪感を感じない。
 目の前の少年からは大人の男性の姿を幻視した。
 そう、長らく会っていない父、コブラのような

 何故、このタイミングで父の姿を幻視したのかは分からない。
 アキトの大人びた雰囲気から連想したのか、それとも頭を撫でられたからなのか。

 だが、彼女にとって今この時間はとても心安らぐものであり、甘受すべき瞬間であった。
 故に、ビビは無意識に自身の頭をアキトの方へと飼い主に甘える猫のようにすり寄せる。

 アキトとビビの周囲の空気が突如甘ったるい空気に変化する。
 ナミに続いて今度はアキトがこの場の空気を作りだしていた。

 そんな2人の周りでは……

「……」
「おい、ナミ」
「……何、ウソップ?」
「いや、お前何で不機嫌なんだよ」
「別に、そんなことはないわよ」

 ナミは無意識にビビに対して嫉妬にも似た気持ちを抱いていた。

「いやー、本当に良かったよ。ゾロ、お前が無事で。なははは!」
「いや、まったくだ。だが、あのMr.3のヤローは絶対に許さん」

 感無量なゾロとルフィの姿があった。
 ゾロに至っては青筋を立てている。

 そんな混沌とした空気を壊したのは蝋から漸く解放されたブロギーであった。
 体の節々を黒く焦がしながらも、力強い動きで炎の中から出て来る。

 ゾロとビビの2人よりも時間がかかったのはその巨体ゆえだろう。
 見たところ五体満足で何よりの様子である。

 今此処に蝋に囚われた全ての人間が無事生還した。







▽▲▽▲







「こほんっ!それでアキトはいつまでビビの頭を撫でているのかしら?」

 ナミは未だに甘い空気を醸し出すアキトとビビの2人をジト目で睨む。
 アキトは変わらず先程からずっとビビの頭を撫で続けている。

 ナミ自身、アキトが邪な気持ちでビビに触れているわけではないことは理解していたが、流石に我慢できなかった。

 アキトのビビに対する態度は親の子に対するそれに近い。
 もしくは、妹や弟などの年下に対するそれだとも理解している。
 だが、それとこれとでは話は別であった。

「あっ……」

 アキトはナミの指示通り素直にビビの頭から手を離す。
 手を離したビビが名残惜しそうに此方を見つめてきた。
 まるで飼い主に捨てられた子犬のようだ。


すまない。本当にすまない。まだビビを愛でていたいが、ナミの視線が流石に怖い


 アキトは苦渋の決断でビビから手を放す。

「皆、無事で何よりだ」

 先程までの雰囲気を一変させ、真剣な表情でアキトはルフィ達の無事を祝う。
 清々しいまでの切り替わりの速さである。

「そう言ったって騙されないわよ、アキト」
痛い、痛い(いひゃい、いひゃい)、ナミ」

 ジト目でアキトの頬を引っ張るナミ
 戦闘において無類の強さを誇るアキトも彼女には逆らえないようだ。

 そんな光景にルフィ達は笑う。
 ビビもゾロも、ウソップもカルーも楽し気に笑う。

 しかし、そんな彼らの前に空気を読まない奴がやってくる。




「塗装完了、出撃!……"キャンドルチャンピオン!!"」

 木々の向こうから巨大な何かが飛び出してきた。

 巨人族にも迫る大きな体躯
 駆動性が高そうな剛腕を組み込んだ巨大な物体が突如、出現する。

 見れば能力によって生み出された鋼鉄のロボットを操る頭髪が3の男が意気揚々と此方に向かってきていた。

 空気を読んでほしい、それがルフィ達の総意であった。
 皆が無事生還し、喜んでいる最中だというのに少しばかりは空気を読んで欲しかった。

「えェ、このタイミングで出て来るのかよ……」
「本当、空気を読んでほしいわね」
「クェー(無いわー)」
「皆、気を付けて!彼がMr.3よ!」

 ナミたちからの罵倒の嵐
 カルーに至っては羽を口の近くで器用に左右へと振り、この場にお呼びでないという意思が全開である。

 アキトは自身の予想が正しかったことを確信する。
 やはりあの男はB・W(バロックワークス)の追っ手の1人であったようだ。

「貴様、先程はよくも私の顔を蹴ってくれたな!!」

 アキトの存在に気付いたMr.3が怒りを露わにする。
 彼の顔には見事にアキトの放った蹴りの跡が痛ましく残っていた。
 奴は怒り心頭の様子で此方を睨み付けている。

 このアキト()、敵には容赦を与えない主義であった。
 怒り心頭の所申し訳ないが、奴の相手はアキトではない。

「よしっ!3、覚悟しやがれ!!」
「貴様だけは絶対に許さん!我らエルバフの誇りを汚したことを後悔させてやる!!」
「切り刻んでやるから、覚悟しやがれ」

 ルフィ、ブロギー、ゾロがMr.3へと殺気を放っていた。


 腕を組み、関節を鳴らすルフィ
 怒り心頭に自身の武器をMr.3に向け、殺気全開のブロギー
 パンダナを頭に巻き、新調した3本の刀をブロギーと同じく殺気全開な様子でMr.3を睨みつけるゾロ

 彼らの怒りは相当なもので言葉がそのまま攻撃として具現化しそうな勢いだ。
 これではMr.3は骨も残らないかもしれない。

 案の定、Mr.3は顔を青ざめ、先程までの勢いは嘘のように消え去っていた。

「ちょっ、待つのだがね。流石に3対1は卑怯ではないかねっ!?」

 ルフィ達が聞く耳を持つことはない。
 ブロギーが先頭に立つ形でMr.3への一斉攻撃とも言うべきリンチが始まった。


「むんっ!!」

 ブロギーからの先制攻撃
 Mr.3との距離を瞬時に詰め、その手に有する巨大な斧を振り降ろす。
 ブロギーはMr.3の能力によって生み出された鋼鉄の物体をまるで紙切れのようにその刃によって切り落とす。

 宙に舞う巨大な両腕

「"ゴムゴムのバズーカ"!!」

 次に動いたのはルフィ
 後方に力の限り伸ばした両手を勢い良くMr.3の顔面に直撃させる。
 Mr.3は為す術無く真横の炎の中へと吹き飛ばされる。

(あつ)(あち)ィ───っ!!」

 ドルドルの実の弱点である炎によっていとも簡単にその鋼鉄の物体は溶け、能力者である本人は悲鳴を上げる。

 続けて、熱さにその場から逃げ出すMr.3を今度はゾロが待ち受ける。

「待っ!待つのだがね!じ…慈悲を!!」
「"竜巻"!!」

 Mr.3は呆気なく、実に容赦の欠片もなくルフィ達の手によって敗北した。
 Mr.3は吹き飛ばされボロ雑巾のように向こうに転がり、慈悲など無かった。

 こうして、リトルガーデンでのB・W(バロックワークス)との戦闘が終わりを迎えた。 
 

 
後書き
ビビは可愛い(正義)異論は認めない。
キャンドルチャンピオンは良いとこなし。
 
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