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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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ジカジカの実の真価

 麦わら一味であるアキトとナミ、ウソップの3人がB・W(バロックワークス)のオフィサーエージェントであるMr.5・Ms.バレンタインペアの2人と対面する。

 彼らの間には友好的な雰囲気など存在せず先程から緊迫した空気が漂っていた。

「予想通りとはどういう意味だ?」

 Mr.5の言葉の真偽を確かめるべくアキトがその静寂を破る。
 だだそこに友好的な雰囲気など感じられず、冷徹な視線で問いかけた。

「言葉通りの意味だ。そこのカルガモをわざと逃すことでお前たちをこの場に誘い出した、それだけだ」

 Mr.5は事態が自分達の思惑通りに進んでいることの余裕からか饒舌に語り出す。
 その顔には人の嫌悪を誘う笑みを浮かべていた。

 見れば先程からカルーはナミの後ろに隠れる形で体を震わせ、酷く怯えている。
 自身を痛みつけた彼らのことが怖ろしいのだろう。
 カルーの様子からMr.5の言葉は真実なのだとアキトは確信する。

 カルーを用いたアキトたちのこの場への誘導
 リトルガーデンでそれぞれの行動を取っていたルフィ達を捕えることなど隙をつくことさえ出来れば容易であっただろう。
 仮に後ろの像がゾロとビビの2人ならばこの場に残りの仲間をカルーを利用し、アキト達を誘い出したことにも納得がいく。

 ウイスキーピークで情報リークの任を任されていたあの謎の生物2匹は潰しておいた。
 このことからも敵側であるB・W(バロックワークス)には自分達の情報は出回っていないのだと推測される。
 故に、残りのメンバーをおびき寄せるべくカルーを利用したのだろう。

 しかし、この2人はウイスキーピークでルフィとゾロの2人に惨敗していたはずである。
 実力不足が否めない奴らがゾロとルフィの2人を無傷で無力化することができるとは考えにくい。
 このことから奴らには協力者、もとい仲間がいることをアキトは想定する。

「それでは、次の質問だ。お前達の背後の像は俺達の仲間であるゾロとビビに酷似しているのは何故だ?」

 当初から気になっていた疑問をアキトは投げ掛ける。

「ああ、その解釈であってるぜ。こいつら2人はMr.3の能力によって蝋人形に変えられたんだよ。くくっ」

 Mr.5は上機嫌に含み笑いを浮かべる。

「蝋人形だと!?」

 対して驚愕を隠せないウソップ

 成程、何らかの能力によって変質されたものだと考えていたが予想通りであったらしい。

 それにしてもえらく良心的な連中だ。
 いくら自分達が有利な状況であったとしても、こうも軽々と情報を話してくれるとは思わなかった。
 仮にも敵である此方に何故、情報をそう易々と話すのかアキトには理解出来なかった。

「ええ、そうよ。"Mr.3"、彼は自身の体を媒介に蝋を作りだすことが出来るドルドルの実の蝋人間」

 Ms.バレンタインは己のペアの言葉を補足するように更なる情報をその口から吐き出す。
 
 蝋を自在に生み出すドルドルの実
 恐らく超人系(パラミシア)の能力者であり、その能力を用いてゾロとビビの2人を蝋人形へと変容させたのだろう。

 そして"Mr.3"、この数字がその人物の強さと組織内での階級を表すのならばその人物はこの2人組よりも実力・知力両方に優れた人物である可能性が高い。

 しかし、今はそんな些末事よりもゾロとビビにどれだけのタイムリミットが残っているのかということだが──

「Mr.3曰く、こいつらはもって後数分で心臓が止まり、完全なる蝋人形になっちまうとのことだ」

 どうやらタイムリミットは想像以上に残っているようだ。
 2人を救出するには十分すぎる時間である。

 即座にアキトは爆発的な起動力をもってその場から移動する。
 向かう先は今なお余裕気に口を走らせるMr.5、奴の無防備な奴の胸部に拳を──

「つまり、後はお前らを殺せば俺達の任務は……」

──叩き込む。

 Mr.5の語りは突如アキトの手により強制的に止められた。
 反応すら許されなかったMr.5は後方に勢い良く吹き飛んでいく。

 地面を幾度もバウンドしながら転がり、地面からは土煙が巻き上がる。
 Ms.バレンタインは自身が全く反応できなかったことに驚愕を隠せない。

「手前ェ……ッ!まだ俺が話している途中だろうが!?」

 受け身を取ることも出来ずに吹き飛ばされたMr.5は以外にもまだ意識を保っていた。
 口から吐血しながら、憎々し気な様子でアキトを睨み付けている。

「敵を前に隙だらけなお前が悪い」

 こいつらに構っている時間などない。
 こちらは一刻も早くゾロとビビのを救出しなければならないのだ。
 
 お前の事情など知ったことか、と言わんばかりにアキトは淡々と答える。
 そのすかした態度がMr.5の神経を逆撫でした。

 Mr.5はアキトの歯牙にもかけない態度に激怒し、懐からリボルバーを取り出す。
 己の起爆する息をカートリッジへと勢いよく吹き込み、カートリッジの充填を確認したMr.5はアキト目掛けて発砲した。

 本来弾が発射されるはずの銃口からは音だけが響き、アキト目掛けて不可視の攻撃が牙を向く。
 対するアキトはその場で動じることなくただ静観している。


 途端、アキトを中心に爆発し、爆炎が巻き上がった。

 アキトの姿は起爆した空気により生じた炎により見えない。
 だが、Mr.5は攻撃の手を緩めることなくカートリッジの弾数が尽きるまで引き金を引き続けた。

 Ms.バレンタインは爆風を利用し上空へと飛翔する。

 これでけりを付ける。
 この男は危険だ。
 早急に倒さなければならない。
 何の根拠もない焦燥にも似た思いが今の彼女の体を動かしていた。

 狙いは奴の頭部
 今なおMr.5の攻撃で炎に包まれている奴の首をへし折り、確実に息の根を止める。

「1万キロプレス!!」

 繰り出すは自身の必殺の一撃
 この能力で幾度となく敵を屠ってきた。
 今、奴は炎により周囲が見えていないはずだ。
 ならば自身の上空からの攻撃が止められる道理など存在しない。

 能力によって後付けされた彼女の体重は既に生物が耐えられる重さを超過している。
 正にあらゆる万物を破壊するギロチンが眼下に落とされた。

 Ms.バレンタインの攻撃がアキトに振り落とされ──

何……ッ!?

 瞬間、炎が勢いよく晴れ、無傷のアキトの姿が現れる。
 そして、自身の必殺の攻撃は上空を見ることなく左手によっていとも簡単に受け止められた。

 Ms.バレンタインは眼前の光景が信じられず、瞠目する。
 
 何なのだ、この男は
 まるで鋼鉄にも似た硬質の物体を相手にしているような感覚を足裏から感じる。
 まさかこの男も何らかの能力者だというのか

 唖然とするMs.バレンタインを見上げたアキトの表情からは何も読み取ることは出来ない。

 交錯する視線

 アキトは言葉を発することなく、彼女の靴底を掴み、眼前へと引き下ろす。
 続けて、驚愕の表情で此方をを見るMr.5へ勢い良く投げ飛ばした。



 Ms.バレンタインとアキトの交戦の様子を少し離れた場所から見ていたMr.5の心情は荒れに荒れていた。

「そ、そんな馬鹿な……」

 Mr.5の心情は混乱の窮地に陥っていた。

 何なのだ、この男は
 これまで自身の前に立ちふさがってきた者はボムボムの実の力によって難なく排除してきた。
 既に自身とMs.バレンタイン、加えてMr.3の策略によって危険対象である麦わらは無力化し、三刀流の男も蝋人形となった。

 あの麦わらでさえボムボムの実による爆発により一度は地に伏したにも関わらず、目の前のこの男には毛ほども効いている様子がない。

 Mr.5が気付けば、Ms.バレンタインが為す術無く此方に投げ飛ばされていた。
 反応が遅れ、彼女と衝突し、地面を彼女を抱える形で勢い良く転がる。
 加えて、能力を切るのを失念していたためその場で爆発し、Ms.バレンタインを燃やしてしまった。

 瞬く間に2人はボロボロになった自分達とは異なり、前方のアキトはその場から動くことなくこちらを静視している。

「くぅぅうッ……!」
「く、くそッ!」

 呻き声を上げるMr.5とMs.バレンタイン
 その場から痛みの影響で動くことが出来ずに、地べたを無様に這いずるしかない。

 しかし、アキトは容赦をすることなく、眼前の敵を潰すべく能力を行使した。

「─」

 アキトの周囲に微風が吹き、不可視の衝撃波が途轍も無い速度でMr.5とMs.バレンタインへと迫る。


 瞬間、不可視の攻撃が自分達の体を襲った。
 体中に激痛が走り、キャンドルタワーまで2人揃って吹き飛ばされる。

 一体いつ攻撃されたのか全く分からず、驚愕することしか出来ない。
 何の予備動作も無く、吹き飛ばされた。

「かっ…は!?」
「な、何が……ッ?」

 余りの威力に2人の背後にクレーターが出来上がる。
 Mr.5はMs.バレンタインを横抱きしながら吹き飛ばされたため彼女の分のダメージも肩代わりすることになってしまった。

 Mr.5の身体の痛みは相乗的な効果で相当なものだ。
自身の体の限界を超え、立ち上がることも出来ない。


強すぎる。麦わらや三刀流の男の比ではない


 誰よりも先にこの男を無力化すべきだったのだと今になって気付く。
 このままではMr.3もこの男の相手を務められるか分からなくなってきた。

 次第に意識が遠ざかり、2人揃って身体が地面へと崩れ落ちる。
 薄れる意識の中、自分達が最後に見たのは此方を静かに射抜くアキトの紅い瞳であった。







▽▲▽▲







 アキトが戦闘を繰り広げる中、ウソップはゾロとビビを救うべく奔走していた。
 眼前の悪趣味なキャンドルを溶かすべくウソップは油が付いた縄を辺り一帯に張り巡らせる。

 アキトが敵を引き付けてくれたおかげで自分はスムーズに準備を進めることが出来た。
 アキトとMr.5・Ms.バレンタインとの戦闘は終始アキトの独壇場であり、既に決着はついている。

 向こうではナミが正気に戻ったルフィを引っ叩いていた。
 ルフィの傍に座っていた少女は己の仲間がアキトに敗れた時点でこの場から逃げるように走り去っていく。

 異常な跳躍力でアキトが此方に跳んでくる。
 本当に目の前の少年があの魚人海賊団を壊滅させたのだと改めて実感させられる。
 ウソップはそれに見合う実力をアキトが有していることを改めて気付かされた。

「ウソップ、蝋を溶かす準備は?」
「あ、ああ、後はこの悪趣味なキャンドルを溶かすための炎が必要だな」

 ウソップは思わず仲間であるアキトに言葉を詰まらせてしまう。
 ウソップの提案を聞いたアキトはMr.5の方へと視線を向け、アキトの周囲から不可視の力が発せられる。

 途端、向こうで倒れていた敵2人が空中に浮かび上がり、アキトの元へと引き寄せられる。
 ウソップ自身、本人からアキトの能力を聞き及んでいたが、実際にその力を目にするのは今回が初めてだ。
 ウソップはその能力の有用性と怖ろしさをこの場の誰よりも深く理解した。

 アキトの能力には攻撃に移るまでの一切の予備動作が存在しない。
 加えて、能力発動後も何らかの不可視の力が働いていることは伺えるが、言ってしまえばそれだけだ。

「……便利な能力だな」
「ウソップ、この女を少し離れた場所へ置いてきてくれ」
「分かった」

 Ms.バレンタインをウソップに渡し、アキトはMr.5を眼下の油たっぷりの縄へと叩き付ける。
 縄に塗りたくられていた油にMr.5の体が爆発し、周囲が瞬く間に炎上する。

 キャンドルが炎に包まれ、順調に溶かされていった。
 アキトは今なお炎上し続ける眼前の炎の中へと2人を救出すべく足を踏み出していくのであった。 
 

 
後書き
アキトの魅力はナルトのペイン同様手を用いることなく相手を吹き飛ばすことだと思うんですよね。

<没案>
 アキトは言葉を発することなく、彼女の靴底を掴み、眼前へと引き下ろす。
 続けて、驚愕の表情で此方をを見るMr.5へ勢い良く投げ飛ばした。

「白か……」

 アキトは何と無しに呟いた。
 途端、後方からナミの鋭い視線が突き刺さる。

自分は何も見ていない。見ていないぞ……

 それにしても上空から攻撃してくるのならば、スカートを履くべきではないと思うのは自分だけだろうか 
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