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虚弱ゲーマーと似非弁護士の物語 -求めたのは力では無く-

作者:昼猫
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第二章 ヒーローズ リターン トゥ エブリデイ
  Act1 東京さおっそろしいとこだべ

 
前書き
 士郎の身長が195センチ位の理由が今回の事です。
 “彼女”もどうせ自分を助けてくれる男性は、自分よりも高身長の方が良いでしょうから。

 原作欄に一つ追加しました。

  

 
 ――――私、小比類巻香蓮は絶望の淵にいました
 北海道生まれの私は高校卒業後、本来は地元の大学に通う筈だったのだが、駄目元で受験した日本有数のお嬢様学校に受かってしまい、東京に1人来た事ではありません。
 今自分が住んでいる場所は年の離れた4人の兄姉の内、東京で結婚した姉夫婦が住んでいる高級マンションです。
 勿論家賃は両親が出してくれている。だがそこが問題でした。
 先日、姉の友人を名乗る男女のカップルがお金を貸してほしいと頼んできたのです。
 勿論、初対面な人間に突然そう言われても怪しんだのだが、本当は姉にお金を借りに来たと説明しつつも、今現在連絡が取れないとの事。
 では姉を待てば宜しいのではと疑問を呈したら、大至急の入用らしい。
 一応確認しようかと思ったら、今日は確かなんかの資格を取るためのテストを受けに行くと先日聞いた覚えがある事を思い出しました。
 それによって正直如何しようかと考えていると、信用ならないなら免許証を預けておくと提示して来たので、それではと最早疑わずに家賃も含めた代金を借してしまったのです。
 理由として、二日後に必ず返すと念を押して来たのも大きかったのだろうが、何よりの理由――――では無く、原因(・・)は自分がまだまだ他者からの悪意に慣れておらず、世間も知らない箱入り娘だったからでしょう。
 だからこそ容易に騙されたのです。
 気づいたのは次の日。姉から電話を受けてから途中で質問すると、昔から記憶力の良い姉は断固としてそんな名前の友人はいなかったと訝しみながら言われました。
 その事で心配になり、預かっていた免許証に記載されている住所を頼りに住まいに足を延ばしてみれば、そこはものの見事に空き地で誰もいなかったのです。
 雑草が夥しく生えており、そこについ先日まで建物が立っていたなんて話も無かった―――この事から自分は騙されたのだと気づいたのです。
 この事を家族に相談すれば、恐らくは憤り、警察が動く様に計らってもらえるだろうし、解決するのも遠くは無いでしょう。
 だけど出来ません。
 騙した相手に腹正しさを覚える以上に、自分が心底情けないと思ったからです。
 真面目な性格だからこそ、此処まで思い詰めているのです。
 そんな精神状態で帰宅の途についていた香蓮でしたが、

 「あれ?此処、何所だろう?」

 無意識かつ朧気な足取りだったので、知らない道に知らない街角に迷っていました。
 しかも辺りは暗い。
 今はまだ5月ごろなので、この季節で夜空の下に居ると言う事はそれなりに遅いと言う事。
 しかし当の香蓮はそんな考えには至れずに、精神的に参っていたのもあって睡魔にも襲われていました。

 (不味い・・・)

 こんな時間の知らない街角の路上で危険だと言う事位は理解している様だが、睡魔が徐々に香蓮の意識を蝕んで、体全体の言う事も利かなくさせていました。
 そして、

 「・・・」

 遂に堕ちたのです。


 -Interlude-


 「あれ・・・?此処・・・何所だろう?」

 朝日の光に当てられた香蓮は、それに促されて徐々に起き上がりました。
 しかし目を覚ましたのですが、自分の置かれている状況を把握できずに混乱しています。

 「布団の中・・・と言う事は・・・・・・全部夢だった?」

 騙された事も全部?と淡い期待もしたようですが、頭が覚醒しきっていく内に周囲を見渡したことで夢では無い事に気付きました。
 何故なら知らない天井、知らない布団、知らない部屋だと気づいたからです。

 「襖?」

 如何やら自分のいる家が日本家屋形式だと気づいたようです。
 ですがそんな事より、

 「近くにバッグはあるし、何も取られてないって事は、誰かが助けてくれた?だけど何の目的で?」

 騙された後なので、この様な無償な善意に警戒する様になってました。
 そこへ襖越しから、家主だと思われる男性から声を掛けられます。

 「起きた様だが、中に入ってもいいかな?」
 「え?」

 いきなり声を掛けられて慌てる香蓮ですが、自分の衣服がはだけていないかの確認をした後、どうぞと聞こえるか聞こえないかのギリギリの小声で言いました。

 「なら遠慮なく」
 「・・・・・・」

 入って来た男性は、恐らく自分よりも高身長な俗に言うイケメンさんでした。
 まあ、黙ったのはイケメン顔に見惚れたのではなく、警戒心故でしたが。

 「起き上がれるようだけど、念のために消化しやすい御粥を作って来たんだが、食べれそうかな?」
 「・・・・・・はい」

 顔を真っ赤にしながら頷きました。
 顔を真っ赤にしたのは怒っているからではありません。何と返事を返そうかと迷っている内に、御粥から漂ってきた良い匂いに触発されたのか、空腹の合図が自分のお腹から鳴ったからです。
 この気恥ずかしさを隠すようにお盆を受け取った香蓮は、一口目を直に口へ運ぶと驚きました。

 「凄く美味しい・・・」

 思わず警戒を忘れて本音が飛び出てしまいました。

 「口に合ったなら何より、たんと食べなさい」

 そんな優しく諭すように言葉を掛けられた香蓮は、自然と警戒を解いて、そして少しづつ泣き出してしまいました。
 それを何も言わずに男性は香蓮の頭を優しく撫でています。
 それがより香蓮の心を氷解させていったのか、泣きながら御粥を食べ続けます。
 こうして、香蓮が食べ終わるまでこれが続きました。

 香蓮が食べ終わり、家主の男性――――衛宮士郎が洗い物を終えた所で、そこで漸く互いの自己紹介をします。

 「衛宮士郎と言う。好きに呼んでくれていい」
 「私は小比類巻香蓮と言います。泊めて頂いて、それに助けてくれてありがとうございました」
 「俺が勝手にやった事だから気にしなくていいが、これから如何する?一人で帰れるか?帰れないなら車で送って行ってもいいが」
 「いえ、大丈夫なんですけど・・・」

 何とも言えない表情をする香蓮に士郎は察します。

 「内容にもよるけど言いたい事があるなら言ってくれていい。ただ誰かに聞いてもらうだけでも楽になれる事はあるぞ」
 「・・・分かりました。でしたら聞いて下さい」

 最早警戒心など欠片も無い香蓮は、事のあらましから今の自分の感情の全てを吐露しました。
 それを聞いた上で士郎は、

 「――――その件、俺に任せてもらってもいいか?」
 「え?」

 正直少しでも楽になりたいだけだったのに、凄い真剣な表情で頼り甲斐のありそうな声で言われたものですから、少しの間考えてから、

 「そ、それじゃあ、お願いします」

 おずおずと答えました。
 この人なら任せられると、今は何故か全幅の信頼を置いて。

 「任された。後これは余計かもしれないが、この件が方がついてからでいいが家族とかにも話した方が良い。きっと心配してくれる筈だ」

 また諭す様に言われてから、香蓮は士郎の運転で自宅にまで送られました。


 -Interlude-


 率直に言うと今回私が騙されて大金を奪われた件は、士郎さんに相談してからたった二日後と言う電撃的な速度で解決しました。
 士郎さんから呼び出された日、士郎さんの家の応接間には見た事も無い人たちが数人に、士郎さん、そして例の自分を騙した男女が士郎さんに怯えながら、只々ひたすら私に謝罪と騙し取られた大金を全額返して来たのです。
 これで円満解決――――とは行きませんが、自分を助けてくれた実は弁護士だと言う士郎さんには感謝の言葉しかありません。

 「あの、依頼料は必ず払いますので」
 「金はいい。俺が自分から言い出したことだからな」
 「でも・・・」
 「その代わり無茶な願いだが、聞いてくれるか?」
 「えっと・・・はい」
 「ならこれを機に、如何か東京(此処)を嫌いにならないでやって欲しい。これからも嫌な目に遭うかもしれないが、如何かお願いしたい」

 その士郎の言葉に出来るかは分かりませんけどと、曖昧にだが確かにそう返しました。
 もしかしたらこれを切っ掛けに、自分のヴィジョンも何か変わるんじゃないかと言う期待もあったからです。

 ――――ですが、そんな甘い話はありませんでした。
 今までと同じく友達も出来ず、趣味は読書か音楽鑑賞です。
 でも大金を騙し取られたあの時に比べれば、別に大したことはありません。
 そう言えば、士郎さんに言われた通り実家の両親に話したら、怒られましたし心配もたくさんされました。
 姉さんや姉さんの家族にも話したら心配されましたが、そこで旦那さんが知っていた事で初めて知ることが出来ました。

 日本一有名な〇〇大学を首席入学首席卒業した文武両道の完璧超人でありながら、一年目から1人で自宅を事務所として兼用した弁護士の道に進んだ変人だと。
 だけど私はそうは思いません。
 だって、私を救い上げてくれた――――言葉にすると恥ずかしいですが・・・・正義の味方・・・何ですから。 
 

 
後書き
 モブキャラでは無い女性のフラグ建築、2本目。 
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