週刊東方「結晶回廊」
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参「詐欺」
前書き
風が瓦屋根をめくりながら荒々しく吹き、雨が機関銃の如く降り続ける中、泣き叫ぶ赤子がいた。軽く包まれたタオルを纏い、ダンボールの中から。それはまさに絶叫と言えた。何かを伝えたくとも、言語という手段も、それを行使する能力も修得していない彼には絶望的な状況なのは言わずもがな。
そして、嵐が過ぎるまで誰一人として振り向きすらしなかったのだ。
……しかし、彼はそれすらも乗り越えて、太陽の訪れを喜んだのである。そしてその後、心優しい夫婦が彼を安寧の地へと運び、それからというもの、すくすくとたくましく成長していった。
そうして幸福な時間が過ぎていったのだった。
あの事件が起こるまでは。
「幼女なんていなかった。現場からは以上です」
レポーター、俺。案内されたところはどこにでもありそうな神社で、そこには高校生くらいの巫女さんがお茶を啜っているだけだった。
「どう見ても人間だけど…幼女性癖を持った人間は初めてね」
「誰が幼女性癖だ」
「誰が幼女やねん」
「幼女はお前だ」
つか何故関西弁?
「まぁなんでもいいけど。じゃあ外の世界へ戻してあげるわね」
もうエンディング!?
俺は人間社会へと戻ってきた。幻想郷じゃ色々あったなぁ〜!さぁ、社畜生活の始まりだ!
週刊東方「結晶回廊」 これにて完結!
馬鹿野郎。
「まだ帰るには物足りないぞ」
「物足りない……って、アンタ、ここは妖怪の住む世界よ?力が無ければ喰われるだけの世界。……まぁ、スペルカードルールはあるけど。外の人間が適応できるところじゃないの!わかる?」
今すっごい気になるワードが出てきたな。
「スゴイワードルールってなんだ?凄い事言い合うのか?下ネタとか?」
「その耳は飾りなの?スペルカードルールよ。……まぁ、霊力も魔力も希薄なアンタには縁のないものだから知ったところで何もないわ」
つまり霊感がないってことか……?霊感が必要なものなのか?そういや遊○王とかはアニメじゃ変な竜とか色々出てくるが、現実では出てこないな。アニメのあいつらは霊感があるから見えるのであって、つまり、この世界の人間はそれが出来るということか!?
「おい、デュエルしろよ」
「意味がわからないわ」
確かに、妖怪が蔓延っているのなら帰った方が得策だろう。しかしこのままなんの手土産も無しには帰りたくない。
「じゃあ、俺にそのスペルカードってのを教えろよ。それで俺に才能がないって納得したら帰ってもいい」
「面倒だわ……」
くいっと、俺の袖を引っ張る少女がいた。あ、嘘。幼女だ。
「……次幼女って言ったら、案内なんてしてあげないし、スペルカードについても教えてあげない」
「少女、俺にスペルカードを教えてくれるのか?ありがてぇ!」
「うぅ〜〜ん……まぁいいや」
ルーミアが両腕を広げて、巫女さんの方を向き「ね、いいでしょ?」と軽く尋ねると、巫女さんは軽く息をついて、黙って茶を飲み始めた。逆だ、逆。
「決まり!じゃあーーー」
「お?誰だそいつ。寂れ神社に男なんて珍しいな」
そのとき、空から声が聞こえた。颯爽と箒に乗って、瞬く間に魔女帽子を着た少女が目の前に現れたのだった。
「なんだよ、ここにいるってことは能力者か?」
「知らないわ。でも魔力どころか霊力すら乏しいのよ」
「なんだと?そりゃただの一般人じゃねぇか」
一般人言うな。
「なるほどな、そいつがそれを受け入れないからスペルカードをやらせるって話か」
思ったより結構頭の回転が速い奴だった。巫女さんが何一つ驚かない表情を見せないのは、そういうものだと思っているからなのだろうか。
「いいぜ、それなら私も教えてやろう」
「おっ、いいのか」
「おう、面白そうだからな」
「揃いも揃って変人ばっか……」
魔女と妖怪による、スペルカード講座が始まろうとしていたーーー。
後書き
タイトル詐欺でもあります。
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