孔雀王D×D
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6・裏高野へ
孔雀、鬼丸、阿修羅は老人と向かい合って座っていた。
「お師匠様、お話というのはなんでしょうか?」
まず、孔雀が口を開いた。老人は何かに迷っている様子だったからだ。
「勿体ぶらずにさっさといいやがれ。場合によっては、降ろさせてもらうんだからよ」
鬼丸は腕を組み、胡坐をかいて老人を見つめた。
「何を偉そうに!!今からいうから待ってなさいよ。ね、おじいちゃん」
阿修羅はにっこりとほほ笑んで老人に言った。
「けっ!!」
鬼丸は阿修羅のいいようにふてくされたように横を向いた。
「実はわしは、今まで裏高野にいたのだが、孔雀よ。お前に裏高野から出頭命令がでておる」
「裏高野から?なんで、俺に?」
老人の言葉にきょとんとした顔で孔雀は問いかけた。老人はしばらく腕を組み、目を閉じた。
「そうよ、孔雀はまだ修行をまた始めたばかりなのに」
口をとがらせながら阿修羅は老人に言った。
「詳しくはわしからは言えん。直接、日光様に聞いてみるがよい」
実は老人は内容を知っていた。が、あえて告げないことにしたのだ。なぜなら、再び孔雀の運命にかかわることだからだった。
それを受けるか受けないかは孔雀自身の事であり、今ここで言ってしまうのは簡単だった。が、孔雀自身が決めることなのだから。
「おい、もしや、俺も裏高野へ行けというんじゃないだろうな?」
鬼丸は老人に詰め寄った。
「察しがいいな、鬼丸よ」
老人はにやりと微笑んだ。
「ば、馬鹿言うな!!俺は行かないぞ。あいつらにかかわるとろくなことがない」
「鬼丸よ。お前にはもうすでに前金を払っておる。拒否権はない」
食ってかかる鬼丸に向かって老人は鋭く威圧的な目つきを送った。
「ハハハ、まぁ、いいじゃないか、鬼丸」
孔雀は鬼丸の肩を2回ぽんぽんとたたいた。
「ねね、おじいちゃん。私も行っていいでしょ?」
阿修羅は老人の腕をとり甘えるように言った。
「お前は駄目じゃ。学校もあるだろう」
老人は腕を払い咳払いをしていった。
「えぇーー、孔雀と鬼丸だけじゃ心配なんだもん」
阿修羅は、頬を膨らましてすねてみせた。
「駄目じゃ」
老人はそんな阿修羅にお構いなく首を横に振り続けた。
「いいもん。じゃあ、おじいちゃんの秘密全部、みんなに言っちゃうから」
阿修羅はにやりと意味深ありげに微笑んだ。が、阿修羅は老人の秘密など知る由もない。老人に窯をかけたのだった。
叩けばいくらでも埃が出る老人であるから。
「な、なんと。阿修羅、お主はこのわしを脅すつもりか」
老人はうろたえながら阿修羅に言った。
「フフフ、いいのかなぁー。言っちゃって。ねぇねぇ、孔雀・・・・」
阿修羅は老人を横目にして孔雀に耳打ちするようなしぐさでにこりと微笑んだ。
「えぇーーい。わかった、わかった。学校の方はわしから言っておく。じゃが、どうなってもしらんからな」
老人は呆れたように首を左右に振った。
「やったぁー」
阿修羅は飛び上がって喜んだ。
「では、孔雀、鬼丸、阿修羅。明日にはたて。気を付けて行ってくるのじゃぞ。着いたら必ず日光様の下に行くのじゃ」
老人は、それだけ言い残すと部屋を立ち去った。
「じゃあ、孔雀。私、一応戻るね。二人で行っちゃだめだからね」
阿修羅もまた部屋を出て行った。
「で、鬼丸、お前はどうするんだ?」
孔雀は腕を組んだまま動かない鬼丸をみた。
「なぁ、孔雀、この件、俺はどうも嫌な予感がしてならない」
鬼丸の本能がそう感じているのか苦虫をつぶしたような顔で言った。
「嫌な予感ってなんだよ?」
呪禁道の鬼丸。密教の孔雀。お互い相容れない者ではあるが、奇妙な縁を孔雀は感じている。
「うーん、わらからねえ。わからねえが、孔雀、気を付けた方がいいぜ」
鬼丸は黒いサングラスの下の目を鋭くして孔雀をみつめた。
「ありがとう、鬼丸。明日は出発だ。帰らないならここに泊まって行くといい」
孔雀はにっこりとほほ笑んで鬼丸に言った。
明朝8時に孔雀と鬼丸。そして、阿修羅の3人は裏高野へ鬼丸の車で出発していった。
「おい、孔雀。俺の車を汚すんじゃねぇぞ」
鬼丸はにやにやしながらからかうように言った。
「え?孔雀、まだ、乗り物に弱いの?」
鬼丸の言葉に阿修羅は驚いて孔雀をみた。
「うるさいな。ほっとけよ」
孔雀は怒ってそっぽを向いた。
「ほんと、難儀なやつだぜ」
「ほんとよね。喧嘩は強いのに車に弱いなんてさ」
鬼丸と阿修羅は笑いあった。
「ほっとけって言ってるだろう。鉄の車や列車が猛スピードで走るなんて信じられるか」
「でもな、孔雀。本当にこれだけは言っておくぞ。俺の車を汚しやがったらただじゃ済まねえ」
鬼丸は孔雀の法衣の首元をつかんですごんだ。
「大丈夫だよ。薬も飲んだしな」
「へぇー、薬も嫌いな孔雀が薬のんだの?」
阿修羅はからかうように笑った。
「あぁ、車酔いして裏高野に出頭できないなんてことになったら、それこそ日光にどやされるからな」
孔雀は身震いをしてみせた。
「そうねぇ、日光様、怒ると怖いから」
阿修羅も身震いをした。
「ところで、孔雀。裏高野の途中までは車で行ったとしても、日が暮れてしまうぞ。どうするんだ?」
「それは、心配ない。阿闍梨が宿を手配しておくそうだ。温泉らしいぞ」
「温泉!!やったぁー」
阿修羅は温泉と聞いて無邪気にはしゃいだ。
「やれやれ、遊びに行くんじゃねぇのによ」
鬼丸は阿修羅の様子をみてため息をついた。
「いいじゃない。温泉よ、お、ん、せ、ん」
「それはともかく、今日はゆっくり休んで、明日には山登りだ」
孔雀は一つ咳払いをして言った。
後書き
今年も後数時間で終わりです。
先週は、私事にて更新できませんでした。が、魔界転生も今年で終焉し、新たな作品「孔雀王 D×D」を連載させることができました。
来年もよろしくお願い致します。
皆様も、よいお年を。
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