レーヴァティン
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第三十五話 北の大地その四
「だからいいと思うよ」
「俺のレーヴァティンで戦うことはか」
「ここじゃね」
「まさこにその場所に合ったってことだな、じゃあ今日は夕暮れまで歩いてな」
そしてとだ、久志は今度は今日の予定の話をした。
「そしてな」
「夜は休む、だね」
「そうしような、ただ夜もな」
普段は何でもなく休んでいるが、というのだ。
「気をつけないとな」
「凍死するよ」
「寝ている間にな」
「そうなるからね」
「そうだよ、テントに入ってな」
「そのうえで毛布にくるまって」
「そうして寝ないとね」
見れば馬そして驢馬達の背には毛布もある、しかも皮を上から被せて雪で濡れない様にされている。
「死ぬからね」
「寒さでな」
「これ砂漠もでね」
「あそこも夜は冷えるからな」
砂漠は寒暖差が激しい、昼は地獄の様に暑いが夜もまた地獄なのだ。
「しっかりした場所で寝ないとな」
「やっぱり凍死するよ」
「そうだよな」
「とにかく寒い場所で寝る時はね」
「暖かくしないと死ぬな」
「そういうことだよ、寝る時にこそしっかりしないと」
暖を取っておかないと、というのだ。
「死ぬからね」
「だから毛布も買ったしな」
「何枚もね、テントもね」
これもというのだ。
「魔法の折り畳み式のをね」
「これ凄いな」
今はほんのハンカチにしか見えない手の中にあるそのテントを見てだ、久志は唸る様にして淳二に応えた。
「これを開いたらあっという間にテントになるからな」
「六人入られる位のね」
「そうなるからな」
「優れものだよ、そのテント」
淳二は笑って久志に話した。
「ちょっと高いけれどね」
「これが一番高くついたな」
ここに来るまでに買った防寒対策のものの中でだ。
「それでそれだけにだな」
「役に立つから」
「寝る時にないとな」
「外で寝る?」
いつもの様にとだ、淳二は笑って久志に問うた。
「ここで」
「馬鹿言え、そんなことをしたらな」
「確実に凍死だよね」
「今の服装でもな」
充分に防寒を整えカイロまで持っていてもというのだ。
「死ぬな」
「だからだよ」
「テントは必要か」
「テント一枚で全然違うから」
その中に入るかどうかでだ。
「布にして一枚だけれどね」
「その一枚がな」
「かなり違うよね」
「ああ、たかが一枚でもな」
それでもとだ、久志もそのテントのことを思い出しつつ淳二に応えた。とはいってもそのテントは彼等の世界のテントだ。
「中に空気が篭って暖かくなってな」
「風も通さないしね」
「暖かさが全然違うな」
「だからなんだ」
「テント一枚でか」
「生死が分かれるって言っても過言じゃないよ」
「それだけのものってことだな」
久志もその話に納得した。
「そういうことか、じゃあ夜はな」
「テントの中で寝ようね」
「ゆっくりと暖かい中でな」
「ゲルみたいなテントだしね」
テントはテントでもとだ、淳二はそのテントについてモンゴルの遊牧民達が使っているそれだと話した。
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