モヒカン族の最期!?
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第六章
「アメリカと戦ってはいないよ」
「西部劇のネイティブみたいに」
「ネイティブでもね」
「そして居留地にもいないですね」
「見ての通りだよ」
アンカスはルースに気さくに笑って返した。
「ニューヨーカーさ」
「そうですね」
「楽しくやっているよ、ハンバーガーも好きだし」
「アメリカの食べものも」
「バスケもホッケーも野球も好きさ、ブロードウェイにも行くよ」
アメリカの文化も愛しているというのだ。
「もうあの映画のモヒカン族じゃないよ」
「そういうことですね」
「あの髪型にしている人もいないしね」
「モヒカン族でもですね」
「そうさ、モヒカン族はまだいるけれど」
「変わったんですね」
「そういうことだよ、わかったかな」
「はい」
実際にとだ、ルースも答えた。
「よくわかりました」
「そういうことでね」
「そうですね、それじゃあ後は」
「コーヒーお代わりしようか」
「そうですね、美味しいコーヒーですね」
「ここのコーヒーはいい淹れ方をしていてね」
それでというのだ。
「美味しいんだよ」
「そうですね、じゃあ」
「うん、一緒にね」
「おかわりして」
「後は昨日のヤンキースの見事な負け方と晋作の映画の話でもするか」
「ああ、昨日ヤンキース負けましたね」
「君はヤンキースファンかい?」
笑いながらルースに聞いてきた。
「確かルース君だったね」
「そうです」
「名前からするとファンかな」
「メッツが好きです」
ニューヨークの球団ではというのだ。
「そちらです」
「そうか、僕と同じだな」
「アンカスさんもメッツですか」
「ヤンキースはオーナーが嫌いなんだよ」
何かと悪名高いオーナーだ、メジャーのコミッショナーと何度も衝突している。メジャーのコミッショナーは日本のコミッショナーとは違い無能では務まらないのだ。
「だからね」
「メッツ派なんですね」
「そうなんだよ」
「そうですか、じゃあヤンキースの負け方についてですか」
「話すか」
「それじゃあ」
こうしてだ、ルースはアンカスと話した、そしてだった。
二人で野球や映画以外のことも話してそこから友人同士にもなった。それでメールやSNSでやり取りをする様になって。
ルースは学校で友人達にこんなことを言った。
「モヒカン族の人と友達になったよ」
「おいおい、滅んだんじゃないのか」
「まだいたんだな」
「それで友達になったんだな」
「ニューヨークにいてな」
他ならぬ彼等が住んでいる街にだ。
「それでだよ」
「実際にか」
「友達にもなったか」
「そうなんだな」
「そうだよ、まさか滅んでいなかったなんてな」
エースは貿易センタービル跡の時のことを思い出しつつ話した。
「それでニューヨークで働いて暮らしているとかな」
「まさか、だよな」
「日本の諺で灯台下暗しか」
「そんなのだよな」
「本当に」
「全くだよ、けれど」
こうも言ったルースだった。
「実際にいて友達になれるなんてな」
「よかったな」
「それで面白いことになったな」
「本当にそう思ってるみたいだな」
「全くだよ、あの小説のインパクトが強過ぎたけれどな」
そのモヒカン族の最期だ。
「違うんだな、モヒカン族最後の男はまだまだ出ない」
「正式なタイトルだな」
「それだな」
「もうアメリカの社会に入っているけれど」
それでもというのだ。
「モヒカン族は健在だよ」
「小説とは違ってな」
最後に友人の一人が言った、モヒカン族はまだアメリカそれもニューヨークにいる。アメリカ社会にいてモヒカンでもない、しかし間違いなく存在している。そのことは紛れもない事実だった。
モヒカン族の最期!? 完
2017・6・20
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