とある3年4組の卑怯者
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61 排球(バレーボール)
前書き
怒りんぼかつワガママの前田さん、個人的に嫌いなのに皆の反感を買って泣く所を執筆するのを面白がる私・・・。
4組の女子達は泣いている前田を体育館裏に戻して練習を始めることにした。
「まず何からやるのお?」
冬田が聞いた。
「そうだね、まずは輪になってレシーブやろうか!」
たまえが提案した。
「いいわね、じゃ、始めようか!前田さん、いいかしら?」
リリィは前田に確認をとった。
「う・・・、ぐす・・・、いいわよ・・・!」
前田はようやく泣き止み、承諾した。こうして皆は輪になった。しかし、狭いために、楕円形と言ったほうが正しかった。
「それじゃあ、行くよ!」
ボールを持っていたとし子がボールを投げる。ボールは山田かよ子の方へ飛んだ。
「え、えい、あっ!」
かよ子が転び、ボールを手首には当てたが、落としてしまった。
「ちょっと、山田さん、しっかりしてよ!」
前田が怒った。
「ご、ごめん・・・」
かよ子がばつが悪そうな顔で謝った。
「はい、山田さん、ボール投げて!」
前田が催促した。
「う、うん・・・」
かよ子はボールを投げた。ボールはリリィに向かった。リリィがレシーブする。その後、まる子、野村、ヨリちゃんとレシーブが続き、冬田がレシーブをする。しかし、冬田はボールを彼女の後ろにある体育館の壁にぶつけてしまった。
「ちょっと冬田さん!後ろじゃなくて前にレシーブしてよ!」
「ご、ごめんなさあい・・・」
冬田がボールを投げる。高宮がレシーブし、内田、野口、小島、たまえ、そして牧村と続き、とし子が受け止める。そして前田がとし子がレシーブした球をレシーブして、ボールを高々と打ち上げてしまい、ボールは塀を越えて外へ見えない所へ行ってしまった。皆が「あ~!!」と叫んだ。
「ちょっと!アンタのせいでボールがあっちいっちゃったじゃない!!」
前田が理不尽にとし子に怒鳴った。
「でも前田さんがレシーブしたんでしょ?」
とし子が聞くように前田に言い返した。
「うるさいわね!アンタがちゃんとボールを渡さないからいけないんでしょ!?」
「そんなこといわれても・・・」
「ねえ、それよりボールどうするのお?」
冬田が二人の口論に割って聞く。
「もう、土橋さん、アンタのせいだからね!ボール取ってきな!」
前田がとし子に命令した。
「ええ!?」
「ちょっと前田さん、なんでも人のせいにするんじゃないよ!」
まる子が抗議した。
「そうだよ、とし子ちゃんが可哀想だよ!」
たまえもまる子に加勢する。
「うるさいわね!じゃあ、アンタ達も手伝ったら!?」
前田は非難されても知らん顔をしていた。
「う・・・」
その時、リリィが提案する。
「皆で探しましょうよ!」
「リリィ・・・。うん、そうだね、そうしよう!」
こうして皆で無くなったボールを探しに行った。
それぞれ手分けして探す。しかし、前田は自分は全く悪くないと言わんばかりに探すのを手伝わなかった。リリィと共に探していたとし子が申し訳なさそうな表情をしていた。
「ごめんね。こんなことになっちゃって」
「いいのよ。あれはどう見てもとし子ちゃんが悪いんじゃないわよ。前田さんの受理が悪いのよ。私ちゃんと見てたわ」
「うん、ありがとう・・・」
やがて二人の所に内田とヨリちゃんが現れた。
「二人とも、ボール見つかったって」
「え!?」
「山田さんと冬田さんが見つけたのよ」
「よかった・・・」
こうしてボールは見つかり、体育館裏へと戻った。
皆が揃った所で皆を睨みつける。
「全く遅いわよ!」
前田が労いもせずに文句をつけた。
「じゃあ、前田さんも探すの手伝えばいいじゃない!」
リリィが抗言した。
「それにさっきのボールがなくなったのもとし子ちゃんが悪いんじゃないわ!前田さんが受理をして高く上げすぎたのが悪いのよ!もう少し力を抑えていれば球を探すことにはならなかったわ!!」
前田がリリィに非難されて動揺する。
「そうよね!」
「土橋さんは何も悪くないわよね!」
「もう付き合ってられないわね!」
皆が次々とリリィの意見に同調し、前田は次々に非難されていき、動揺する。
「な、なによ・・・!!アンタ達がちゃんとやらないからでしょ~!!」
前田は逆ギレした。そして鼻を赤くして泣いた。
「アンタ達が上手くやってりゃアタシも怒りゃしないよ!!」
再び大泣きする前田を見て皆は対応に困った。
「で、でも、まだ皆始めたばかりなんだから上手く出来ないのは当たり前よ・・・!」
リリィが前田を分からせようとした。
「うるさ~い!!うわ、うわ、うわあ~ん!!」
前田は泣き続けた。野口は前田の泣き顔を見て笑いを堪えられず、咳をするふりをした。
「もう、どうするう?」
冬田が聞いた。
「きょ、今日はもう帰ろうか・・・」
かよ子が提案した。結局反対する者はおらず、前田を除く皆はその場を離れてしまった。前田は一人で泣き続けた。
「ひ、ひどい・・・!皆帰るなんて・・・!うう・・・!!」
体育館前に皆は出ると、ちょうど体育館で練習を終えた1組と3組が出てくるのが見えた。
「私達も体育館が使えたらいいのに・・・」
リリィが呟いた。
「そうだ、朝練として授業前に体育館や校庭を使えばいいんじゃないかな?そうすれば使えるよ!」
まる子が提案した。
「そうよねえ、今度からそうしましょう!」
冬田も賛成した。
「私、夜今日来れなかった城ヶ崎さん達にも電話で連絡するよ!」
たまえが言った。校庭に出ると、男子がサッカーをしているのが見えた。冬田が大野に、かよ子が杉山に見惚れる。
「大野君、かっこいいわあ~」
「す、杉山君・・・」
男子もちょうど練習を切り上げてきた。
「あ、アンタ達おつかれさあん!」
まる子が男子に向かって言った。
「お前らも練習終わったのか?」
大野が聞いた。冬田が「やあん!」と言って顔を赤くした。
「うん、てか大変だったよ、前田さんが怒るし、泣くし・・・」
まる子が今日の出来事を説明した。
「前田もしょうがねえな」
杉山が呆れた。かよ子が杉山を見て非常に体が震えていた。
「あ、あ、あの・・・、す、杉山君・・・」
「おう、山田、何だ?」
「あ、あの・・・、サッカー、が、頑張ってね・・・」
「おお、ありがとう、お前もバレー頑張れよ!お互いベストを尽くそうぜ!」
「す、杉山君・・・、う、うん!」
かよ子は杉山に励まされたことで嬉しくなった。
「花輪クン!」
リリィが花輪を呼んだ。
「何だい?baby」
「私、花輪クン応援してるわ!」
「ああ、thank you。キミもvolleyball,fightだよ」
リリィが花輪と談笑している所を藤木が羨ましそうに見ていた。
(あ~あ、リリィは花輪クンと楽しそうに話してるぞ。やっぱりこんな下手な僕じゃ応援する気なんてないよな・・・)
「藤木君、君リリィが花輪クンと楽しそうに話していて羨ましいと思っているんじゃないのかい?」
「いや、そんなことないさ・・・」
藤木は誤魔化した。
「あ、丸尾君!」
まる子が丸尾を呼んだ。
「はい、なんですか、さくらさん?」
「あのさあ、体育館が今日1組と3組に使われててさあ、ウチは体育館裏でやったんだよ。体育館の使用を時間によってどのクラスが練習可能するか決められないかな?」
「そうですね、こちらも1組とグラウンドを半分こして使ってましたしね、5組は公園で練習したと言っていましたが、ズバリいつどのクラスが練習に使うかははっきりした方がいいでしょう!明日各クラスの先生と学級委員達と相談してみます!」
「ありがとう!」
藤木は山根、永沢と共に帰り、二人と別れてやがて一人になると、今日の自分の情けなさを回顧した。
(ホントに今日は情けなかったなあ、これじゃあ、皆に迷惑かけて笹山さんやリリィにも嫌われちゃうよ・・・)
藤木は家に着いた。母も父も遅くなるから今日も夕食は店屋物を出前で取ることになるだろう。家に入ろうとして鍵を開けたところ、藤木を呼ぶ声がする。
「あ、藤木君!」
藤木が振り返ると笹山と城ヶ崎だった。
「笹山さん・・・」
「今帰るところだったの?」
笹山が聞いた。
「うん、そうなんだ。サッカーの特訓してたんだ!ははは・・・」
「へえ、男子も頑張ってるのね。私達は今日はピアノがあって出られなかったけど、こっちも明日からバレーボールの練習始めるつもりよ。ね、笹山さん?」
「そうね、藤木君、球技大会、頑張ろうね」
「笹山さん・・・、うん、そうだね!」
藤木は赤面して答えた。
「それじゃあ、藤木、またね」
「藤木君、さようなら」
「うん、じゃあね・・・」
笹山と城ヶ崎は帰っていった。藤木は笹山から頑張ろうねと言われたことに嬉しく感じ、特訓しようという気持ちを起こすのであった。
後書き
次回:「運動場」
次の日もサッカーの練習を続ける男子達。その一方、各クラスの学級委員が集まって会議を始めており、丸尾はクラス毎にグラウンドや体育館が使える日を決めるよう交渉する・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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