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とある3年4組の卑怯者

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60 蹴球(サッカー)

 
前書き
 1組の生徒、本郷翼の名前のモデルは「キャプテン翼」の主人公・大空翼と、翼の師匠・ロベルト本郷としています。 

 
 前田はみぎわや城ヶ崎に責められた後、その場で鼻を赤くして泣いていた。
「うわ~うわ~うわ~ん!」
 その様子をクラスメイトの女子達が見ていた。
「前田さん、習い事は仕方ないよ・・・」
 まる子が励ますように言った。
「大丈夫よ、明日になったら一緒に練習に参加してくれるわよ」
 リリィも励ました。
「で、でも・・・、皆で一緒にやんないと、勝てないよ・・・!!」
「大丈夫だよ、まだ二週間あるから、頑張って練習すればきっと勝てるよ!」
 たまえも前田を慰めて言った。野口は前田の泣き顔を見て「ブーッ・・・!」と気付かれないように笑った。
「あ、ありがとう・・・!じゃあ、やろう・・・!」
 前田は皆と共に体育館裏へ向かった。

 同じ頃、サッカーの練習をする男子達はポジションを決めていた。
「藤木」
 藤木は杉山から呼ばれた。
「な、何だい?」
「お前、身長が高いからゴールキーパーやらねえか?」
「え、僕がゴールキーパー?!」
 藤木は自分で務まるかが不安だった。
「ああ、藤木君ならきっとできるよ!」
 ケン太も励ました。
「うん・・・。わかった、やってみるよ!!」
 藤木は承諾した。その時、永沢が急に話しかける。
「藤木君、キーパーは大事な役目だよ。君のような卑怯者はシュートが怖くてきっと逃げるだろうね」
「な、永沢君・・・」
 藤木は永沢に嫌な事を言われて落ち込んだ。
「藤木君、大丈夫だよ!練習すればきっとボールへの怖さもなくなるよ!怪我を恐れるなよ!」
 ケン太が励ました。
「ありがとう、ケン太君・・・」
 こうして次々とポジションが決まっていった。以下のような分け方となった。

 FW(フォワード)
 大野、杉山、ケン太、内藤、中島、三沢
 MF(ミッドフィルダー)
 長山、丸尾、花輪、杉浦とくぞう、ナベちゃん(渡辺)、関口、ひらば(平岡)
 DF(ディフェンダー)
 永沢、山根、山田、ブー太郎、若林、たかし
 GK(ゴールキーパー)
 藤木、小杉、はまじ

「それじゃあ、始めようか!」
 ケン太が言い出した。
「でも始めは何をすればいーんだ?」
 はまじが聞いた。
「そうだね。まずはパスでキャッチボールをしよう。渡す相手に正確にボールを蹴る事は大事だからね。一人がバスしたら、次の人に替わってっていう順番でやろう」
 こうしてパスの練習をする事になった。皆半数ずつに分かれてパスを行った。簡単な事ではあるが、正確にボールを渡すことは大事な事であり、失敗すれば連携が崩れてしまう。そのため正確にパスする相手に向かってボールを蹴る事は基本中の基本なのだ。
 丸尾がボールを蹴り損ねた。丸尾がもう一度蹴る。しかし、向かいに立つ関口の所には向かわず、横の1組が練習している方に転がってしまった。
「はあ、すみません・・・」
「しっかりしてくれよぉ!」
「俺取ってくるよ」
 杉山がそう言って1組の練習する場所に向かった。
「ワリい、そのボールとってくんねえか?」
「いいよ!」
 答えたのは本郷だった。本郷がボールを蹴り返す。ボールは宙に上がり、杉山の胸に正確に飛んできた。杉山がボールを胸トラップした。
「す、すげえ・・・」
 杉山は本郷のキックの正確さに愕然とした。
「なんてキックコントロールだ・・・」
 杉山のみならず、見ていた4組全員も驚いていた。
「すごいな、あの本郷君がシュートしたら、僕は絶対止められないな・・・」
 藤木が弱音を吐いた。
「藤木君!今から弱気になるなよ!練習するのみだ!!」
 山根が熱くなって言った。
「山根君・・・。うん、そうだね!」
 練習が再開された。藤木の番が来た。ナベちゃんが藤木にボールを蹴って渡す。藤木は受け止めようとして足で止めたが、弾いてしまった。藤木は慌てて後ろに下がってボールを胸に当てて足で抑えて止めた。そして次の渡す相手、ブー太郎にボールをキックで渡した。しかし、わずかに逸れてしまい、ブー太郎は何とか受け取った。
「藤木、ちゃんと蹴ろブー!」
「ご、ごめん・・・。はあ~」
 藤木は溜め息をついた。パスの練習は続いた。藤木は今度は何とか大きな失敗はしなかった。
「よし、パス練習はそこまでにして、紅白戦をやろう!」
 ケン太が皆に呼び掛けた。
「紅白戦ってどうわけるブー?」
「よし、こっちで決めよう!」
 ケン太は大野、杉山とともにチームの分け方を相談した。そして割り振りが決まった。

 紅組
 FW(フォワード)
 ケン太、杉山、三沢
 MF(ミッドフィルダー)
 長山、とくぞう、たかし、関口
 DF(ディフェンダー)
 永沢、山田、ブー太郎
 GK(ゴールキーパー)
 小杉

 白組
 FW(フォワード)
 大野、中島、内藤
 MF(ミッドフィルダー)
 丸尾、花輪、ナベちゃん、ひらば
 DF(ディフェンダー)
 山根、若林、たかし、はまじ
 GK(ゴールキーパー)
 藤木

 なお、本来ゴールキーパーのはまじは人数の関係でディフェンダーに回った。紅白戦が開始された。
お互いがボールを奪い合う。紅組の杉山がボールを奪取した。ケンタにパスする。ケン太はミッドフィルダーの丸尾とひらばをあっという間に突破し、ゴールに近づいた。山根とはまじが徹底的に杉山をマークし、ボールを奪おうとするが、ケンタにパスされる。ケンタがボールを見事に受け取り、シュートを放つ。藤木ははっと思い、ボールを受け止めようとする。しかし、ボールは藤木の手に掠りもせず、ゴールインした。
「ああ・・・」
 藤木は落ち込んだ。
「ドンマイだ、藤木!」
 大野が藤木を励ました。藤木がボールを投げることになった。誰に渡すか迷ったところ、大野に渡そうと考えた。大野の方角へボールを投げる。しかし、大野のそばにいた三沢にとられた。三沢がケンタにパスしようとしたが、花輪が華麗にボールを奪い、大野にパスした。
「サンキュー、花輪!」
 大野がボールをドリブルした。大野もケンタや杉山に負けず劣らずのプレーだった。ブー太郎と山田のマークをかわして内藤にパス、シュートするかと思ったら内藤は中島にパスした。中島がシュートを決める。しかし、キーパーの小杉はなんとか止めた。
(小杉君やるな・・・。ただ食べるだけかと思っていたけど君がすごいよ・・。尊敬に値する・・・)
 藤木は小杉のプレーに感心した。

 その後も紅白戦は続き、ケンタはシュートをもう一度決めた。しかし、藤木は物凄いシュートの威力に負けて止めることが出来なかった。
「白組!キーパーをはまじに替えてくれ!藤木君はディフェンダーをやってくれるかい!?」
 ケン太が案じた。
「あ、うん・・・」
 藤木はキーパーをはまじと替わった。
「ごめんよ、浜崎君・・・」
「おっしゃー、まかせろ!」
 試合を再開し、大野がボールを蹴った。そして、長山ととくぞうがボールを奪いに来たところを、中島へパスし、中島はゴールへと突進した。そこに永沢とブー太郎がマークしようとするところを大野にパスをする、大野がシュートを決める。小杉は取ろうとするが、今度は取れずにボールはゴールに刺さった。
「やったぜ!」
 その後も攻防は続き、杉山がシュートを決めた。はまじがボールを取ろうとするも、取り損ねてしまった。
「じゃあ、今日はそこまでにしよう!これでみんな何が弱点がわかったはずだ。明日からはその弱点を克服する特訓をしよう!」
 こうして解散した。藤木は2度もゴールを守れず、落ち込んでいた。
「はあ~、簡単にゴールを許すようじゃ、僕はキーパー失格だな・・・」
 藤木は己の失敗ばかりを考えていた。これでは永沢の言うとおり、自分はボールに恐怖心を持って、相手にとってゴールはがらあき同様と思われるだろう。本郷のシュートどころか、誰のシュートも止められないとさらに自分を責めた。こうなったら、風邪を引いたとでも仮病で休もうか。それともどこか怪我をしたと言って出られないとアピールしようか。藤木は球技大会から逃げ出すことを考えていた。その時、永沢が急に藤木に話しかけてきた。
「藤木君、君もしかして、今日の失敗で球技大会を休もうと思っているんじゃないのかい?」
 永沢は案の定、藤木の考えていることを見抜いていた。
「い、いや、そんなことないさ!!」
 藤木は慌てて誤魔化した。
「藤木君!」
 ケン太が藤木を呼んだ。
「ケン太君、何だい?」
「まだ始めたばかりだから落ち込むことはないよ!練習していけばきっとシュートも取れるようになるからさ!自信持てよ!」
「うん、ありがとう!」
 藤木はケン太に礼をした。
「藤木君、ケン太君も君に期待しているんだ。決してズル休みとか卑怯なことを考えるなよ」
「わ、わかったよ、永沢君・・・」
 藤木は自信は持てなくともやるしかないと思った。 
 

 
後書き
次回:「排球(バレーボール)
 体育館裏でバレーボールの練習を始めた女子達。しかし、仕切りたがりの前田が些細な失敗を怒って皆のやる気を奪ってしまい・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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