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ドリトル先生と春の花達

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第七幕その五

「駄目だね、恋愛でなくてもいいんだね」
「和歌で詠うのは」
「辞世の句も和歌ですしね」
「日本じゃよくありますし」
「戦の前にも詠っていましたね」
「そう、戦国時代でもね」
 先生は学生さん達に応えて言いました。
「戦の前に連歌会をしたりしたね」
「はい、そうです」
「そうすると勝つって言われていました」
「勝ち栗、打ち鮑、昆布とかを食べてです」
「そういうこともして戦っていました」
「雅だね」
 先生は日本のそうしたならわしについても思うのでした。
「戦も観戦出来たね」
「はい、関ヶ原とかですね」
「それが出来ましたね」
「日本じゃ戦は見られました」
「民百姓も離れた場所からです」
「戦を見物出来て」
「兵達に襲われたりしませんでした」
 学生さん達もそのことをお話しました。
「戦を見物していましても」
「それでもでした」
「欧州や中国、アメリカとかだとね」 
 こうした国々の戦争はといいますと。
「もう本当に物騒でね」
「見物なんてとてもですよね」
「何時襲われるかわからなくて」
「逃げるだけでしたね」
「そうでしたね」
「もう軍が来ただけでね」
 それこそというのです。
「逃げないと大変だったよ」
「そうですね」
「そこは全く違いますね」
「戦争をするにしても」
「それでも」
「戦の前に和歌を吟ずるとかね」
 それこそです。
「なかったからね」
「だから日本は戦もですか」
「雅なものがあるんですね」
「そう言われるんですね」
「民衆の人達にあまり被害がないしね」 
 とかくこのことが素晴らしいというのです。
「いいと思うよ」
「そうですか」
「そうしたことも先生は素晴らしいと思われてますか」
「戦う前にも歌がある」
「このことが」
「イスラムや古代ギリシアにも通ずるかな」 
 先生は幻想的なものも脳裏に浮かべました、アラビアンナイトやギリシア神話で詠われている世界です。
「そうした殺伐な中にもね」
「雅がある、ですね」
「それがいいんですね」
「日本もまた」
「そうですか」
「うん、今日は有り難う」
 先生は学生さん達ににこりと笑って言いました。
「皆に大事なことを教えてもらったよ」
「いやいや、教えてもらったとかです」
「大層ですよ」
「ただお話しただけです」
「むしろ僕達の方が先生に教えてもらってます」
「それも何かと」
 医学に止まらないのが先生なので、です。医学部の学生さん達以外も教えてもらっているのです。
 だからです、学生さん達も言うのです。
「そんなこと言われると恐縮です」
「ですからそうしたことはちょっと」
「言われると困ります」
「僕達にしましても」
「そうなんだ、けれど本当に僕もわかったよ」
 和歌のそうしたこともというのです。 
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