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真田十勇士

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巻ノ百十一 二条城の会食その七

「大坂そして摂津、河内、和泉の民は」
「無事にです」
「治めて頂きますか」
「その様に致します」
 家康は再び約をした、それも確かな声で。
「無論右大臣殿のことも」
「それがしのことは別に、ただ」
「民はですな」
「安らぐのなら」
「それでは以後豊臣家は別格の家として」
 その立場でというのだ。
「それがし対しましょう」
「そうして頂けますか」
「千は元気ですな」
 家康は秀頼の正室であり彼の孫である彼女のことも聞いた。
「左様ですな」
「はい」
 そうだとだ、秀頼も答えた。
「ご安心下さい」
「それは何より。では終生」
「仲睦まじくですな」
「過ごされよ、それがこの年寄りの願いです」
「そうですか、しかし」
「しかし?」
「大御所様はそれがしの祖父、しかも位も上」
 源氏長者の立場になったというのだ。
「それでは口調も」
「ははは、どうしてもですな」
「どうしてもとは」
「右大臣殿がご幼少の頃に対していた時の名残で」
「それで、ですか」
「この喋り方なのです」
 そうだというのだ。
「右大臣殿には」
「そうなのですか」
「お気になりますか」
「どうも、祖父殿にそう言われると」
「それがしを祖父と」
「いつも千から聞いておりまする」
 秀頼は微笑み家康に応えた。
「それがしのことをどう思っておられるか」
「そうでしたか」
「そして天下のことも」
 それのこともというのだ。
「どうお考えか」
「全てですか」
「千から聞いておりました」
「それは何より」
 家康も満足出来ることだった。
「それでは」
「そのお話のままに」
「はい、安らかにさせてもらいます」
 秀頼も豊臣家もというのだ。
「よいお返事をお待ちしておりますぞ」
「今すぐではなく」
「今すぐは無理であられましょう」
 それはというのだ。
「残念ですが」
「それは」
「ははは、言わずにおきましょう」
 あえて茶々のことは話さなかった。
「しかしそれでも」
「大坂で話がまとまれば」
「その時は」 
 まさにというのだ。
「よき様に」
「それでは」
 二人で酒も飲みつつ話した、そして。
 その酒についてだ、家康はこうも言った。
「やはり酒は上方ですな」
「東の酒は」
「これがどうも」 
 酒については苦笑いで話した。
「よくありませぬ」
「そういえば土が悪いとか」
「ご存知ですか」
「聞いておりまする」
 その様にというのだ。 
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