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真田十勇士

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巻ノ百十一 二条城の会食その六

 そのうえでだ、遂にだった。
 秀頼と会って食事を共にした、その時にだ。
 ふとだ、こう秀頼に言った。
「久方ぶりにお目にかかる」
「はい」
 秀頼もしっかりとした態度で応えた。
「こちらこそ」
「して右大臣殿」
 あえて殿付けで彼を呼んでのことだった。
「宜しいか」
「はい、大御所様としてな」
「貴殿を大事に扱う」 
 このことを約束するのだった。
「何があろうとも」
「それでは」
「はい」
 それでというのだった。
「それがしはですか」
「わしの話を聞いて頂きたい」
「これより」
「右大臣、そして後々になるが」
「太政大臣の官位も」
「就かれよ」
 それもというのだ。
「是非」
「そうしていいですか」
「左様、しかし」
 ここでだ、家康は秀頼に彼が願うことを言うのを忘れなかった。
「それは後にされよ」
「官位をすぐにはですか」
「上げられるのは」
「止めよと」
「官位が早く上がるのは不吉」
 だからだというのだ。
「それは後にして」
「そしてですか」
「今はご自身を高められよ」
「そうあるべきですか」
「そして国持ち大名の立場を約束致す」
 このことも言うのだった。
「確かな城も」
「ですがそれには」
「大坂を頂きたい」
 秀頼が今いるこの地をというのだ。
「そしてそのうえで」
「一国のですか」
「大和か上総ならば下総も加えて」
 場合によっては二国もいいというのだ。
「そのうえで」
「確かな城に入り」
「主となられよ」
「大坂は、ですか」
「頂きたい」
 家康ははっきりとだ、秀頼にこのことを伝えた。
「是非」
「そうですか」
「お嫌か」
「正直に申し上げまして」
 どうかとだ、秀頼は家康に答えた。
「それがしもです」
「大坂にはですな」
「生まれてから住んでおりまして」
 それでというのだ。
「愛着があり申す」
「左様ですな」
「しかし天下の流れは明らか、それに豊臣が大坂にいるより」
 それよりもというのだ。
「幕府が治められた方が宜しいでしょう」
「そう言って頂けますか」
「はい、そう思う次第です」
 秀頼は家康にはっきりと答えた。
「それがしも今では」
「そうですか、では」
「はい、大坂を出る様にです」
「動かれますな」
「そうします、そして」
 さらに言う秀頼だった。 
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