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真田十勇士

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巻ノ百十 対面その四

「しかしじゃ」
「はい、鼻も落ち」
「身体が腐り髪も抜けれじゃ」
「身体に斑点が出てそれが膿み瘡蓋となり」
「身体が腐ってじゃ」
「遂には顔全体が腐り」
 そこまでなってというのだ。
「頬もなくなってな」
「そこから歯が見えることもあります」
「実に無残じゃ」
 花柳の病はというのだ。
「それを思うとな」
「あの病にはですな」
「罹るものではない」
 家康は苦い顔で言った。
「だからわしも気をつけておる」
「花柳にはですな」
「あそこの女とはな」
「そうしておられますな」
「全く、虎之助の様な者が」
 残念にも思い言う家康だった。
「あの病で死ぬとは」
「間もなく」
「残念でならぬわ」
「左様ですな」
「しかしそれも運命か」
 加藤が下流の病で死ぬこともというのだ。
「それもな」
「そうもですか」
「思う、そしてな」
「若しもですな」
「あ奴が動けぬならな」
 余命幾許もないからだ。
「それならばな」
「もうですな」
「言わぬ」
 そうするというのだ。
「あくまでな」
「そうですか」
「そうじゃ、静かにじゃ」
 その残り少ない人生をというのだ。
「送ってもらう」
「そうですか」
「わしも強く言えぬ」 
 その加藤にだ。
「そうした状況ならばな」
「ですな、それがしも」
「そうであろう」
「はい」
 柳生も言う。
「それは」
「ではな」
「文を出しますが」
「無理はするなともな」
「書かれますか」
「そうする」
 こう言ってだ、家康は実際に文を加藤に送ったがそうも書いていた。そしてその文を見てだった。
 加藤は熊本城で己の家臣達に言った。
「動くぞ」
「しかし殿は」
「今や」
「構わぬ」 
 こう言うのだった。
「何としてもじゃ」
「左様ですか」
「右大臣様の為に」
「そうされますか」
「是非共」
「うむ」
 返事は変わらなかった。
「お供する、そしてな」
「殿だけでなくですか」
「他にもですか」
「和歌山に文を出せ」 
 家臣達にこう言った。 
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