提督はBarにいる。
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ハロウィン間近!カボチャレシピ特集・その1
「こりゃまた……大量だな」
いつも通り、山雲農園からの野菜を受け取ったんだが。今週はちょいと様子が違う。いつもより箱が多いと思ったが……その箱のほとんどはカボチャ、カボチャ、カボチャ。大量のカボチャが所狭しと並んでいる。
「ちょっと作り過ぎちゃいましてぇ~」
山雲もこれまたいつも通りのマイペースな感じで、ホワホワと笑っている。話によると、間宮の所や鳳翔の所、食堂にも卸したらしいがこの量が余ってしまったらしい。しかし何でこんな大量に……。
「もうすぐハロウィン?ですからぁ、必要だと海外組の皆さんに言われましてぇ」
ビス子共の仕業か。そういや最近、ウチの嫁さんと何やらコソコソやってたっけな。
「しかし、他の野菜は無かったのか?サツマイモとか、里芋とか」
「サツマイモはぁ~、皆さん持って行ってぇ。里芋は間宮さんと鳳翔さんが貰って行きましたぁ」
成る程、サツマイモは焼き芋やらで皆のオヤツに。里芋は間宮と鳳翔の所で煮っ転がしにでも今ごろ化けている頃だろう。そして余ったカボチャは自動的にウチへ流れ着いた、と。
「しゃーねぇな、捨てるのも勿体ねぇ。暫くカボチャ尽くしにすりゃどうにか消費できるだろ」
「ありがとうございま~す、助かりますぅ」
さて、カボチャか……と言っても山雲の奴も張り切ったのか色々か種類のカボチャがある。それぞれの特徴に合わせた調理をしないとな。その辺を気を付けて仕込みをするとしよう。
「ふふふ、流石私ね!思った通りにカボチャデーになったわ!」
「やっぱお前の差し金かビス子」
開店と同時にやって来たビス子が、アッサリと白状しやがった。まぁ、なんと無くそんな気はしてたがな。
「だってもうすぐハロウィンでしょ?どうしても食べたかったのよ」
ぶすっと膨れてみせるビス子。そのくらいのワガママなら、普通に旦那である俺に言ってくれれば作ってやったのに。
「それで?何をご所望ですか、お嬢様」
「そうねぇ……これから私出撃だから、お腹に溜まるスイーツをお願いするわ!それとコーヒーを使ったカクテルもね」
「あいよ。悪いが早霜、カクテルは任せたぞ」
「了解です……」
こっちはどうする?腹に溜まるスイーツねぇ……カボチャを使ったパンケーキにでもするか。
《カボチャのパンケーキ~カボチャクリームを添えて~》※分量4人前
〈パンケーキ〉
・卵:1個
・グラニュー糖:40g
・カボチャ:100g
・ココナッツミルク:45ml(無ければ豆乳などでもOK)
・生クリーム:50ml
・薄力粉:62g
・ベーキングパウダー:2g
・バター:適量
〈カボチャクリーム〉
・生クリーム:100ml
・グラニュー糖:10g
・カボチャ:40g
さて、作っていくぞ。まずはカボチャの下拵えから。パンケーキ用もクリーム用も、カボチャはまとめて皮と種を取り除き、一口大に切ってからラップをして、600wの電子レンジで5分加熱。電子レンジの機種によって火の入り具合は異なるから、大体の目安だけどな。竹串を刺してみて、抵抗無くスッと入ればOKだ。カボチャに火が通ったらレンジから取り出し、フードプロセッサーやミキサー等を使ってペースト状にしておく。
薄力粉とベーキングパウダーを混ぜ合わせ、ふるっておく。
パンケーキの生地を作っていくぞ。粉を入れたボウルとは別のボウルに卵を割り入れて溶き、そこにグラニュー糖を加えて
軽く混ぜる。そこにカボチャペーストを100g加え、滑らかになるまでかき混ぜる。
卵とカボチャが混ざって滑らかになってきたら、ココナッツミルクと生クリームを加えて更に混ぜる。粉も加えたらダマが出来ないようにしっかりと混ぜ合わせる。
パンケーキを焼く前にカボチャクリームを作っておく。ボウルに生クリームとグラニュー糖を入れ、七分立て位になるまで泡立てておく。泡立てたクリームの一部と残しておいたカボチャペーストを合わせて、馴染んだら残りのクリームも加えて混ぜ合わせる。この時、泡立て器じゃなくゴムへらを使った方が作業しやすいぞ。
カボチャクリームも出来た所で、いよいよパンケーキを焼いていくぞ。フライパンを弱めの中火にかけて、バターを熱して溶かす。十分に温まったら生地を適量流し込む。今回は4人分の分量で生地を作っているから、4等分か8等分くらいがサイズ的にも丁度いいだろう。
フライパンに生地を流し込んだら、表面にポツポツと穴が空いて来たら裏返し、いい焼き色が付くまで焼く。残りの生地も同様に焼き上げたら皿に盛る。
カボチャクリームを絞り袋に入れ、パンケーキの上に飾り付けたら完成だ。
「こっちは上がるぞ!」
「こちらもOKです」
早霜に仕上がりの確認をしたが、どうやら準備はいいらしい。では同時に出すとしよう。
「はいよ、こっちが『カボチャのパンケーキ~カボチャクリーム添え~』と……」
「カクテルの方が『ホット・タレア・カルーア』となります」
「あら、ホットのコーヒーカクテルなんて気が利くじゃない?」
仄かに湯気の立つマグカップを眺めながら、ビス子が顔を綻ばせる。
「幾らブルネイが南国とは言え、夜は冷えますから」
早霜も少し照れ臭そうに、頬を染める。
「さ、折角の温かい料理と酒だ。冷めない内に食ってくれ」
「それもそうね。頂くわ!」
ビス子はいそいそとパンケーキを切り分け、乗っていたカボチャクリームをナイフで付ける。そして大きな口を開けて一口で頬張った。フワフワに焼き上げられたパンケーキと滑らかなホイップクリームからは、果物とも砂糖とも違う、野菜であるカボチャの優しいながらもしっかりとした甘み。くどくもなく、それでいて薄味という事がない。それがまたパンケーキをより引き立てる。
一気に1/4を平らげたビス子が、程よく冷めた『ホット・タレア・カルーア』に口を付ける。口内に拡がるのはコーヒーの焙煎された香りと、アーモンドのような香ばしい香り。コーヒーリキュールの定番である『カルーア』と、アーモンドのような香りを持つ『アマレット』のクリームリキュールを同量混ぜ、それをホットミルクでビルドする。香りがよく、甘味もあって飲みやすい。寝る前のナイトキャップカクテルにもオススメの一杯だ。
「ビスマルクさんはこれから出撃とのことでしたので、少し薄めに作っておきました」
「……そうね、こんなに美味しいとついつい飲み過ぎちゃいそうだから」
「いや、そもそも出撃前に飲むんじゃねぇよ」
問題はない、みたいな顔してやがるが、出撃前に飲むとかダメだろ……常識的に考えて。
「まぁいいわ、お説教なら帰ってきてから聴いてあげる。ベッドの上でなんてどう?」
「アホな事言ってないで、とっとと行けよバカ」
それじゃあね、と勘定を置いて颯爽と去っていくビス子。結局俺にグダグダ言われながらも、カルーア3杯もお代わりして行きやがった。ほろ酔いのせいで沈んだりしやがったら許さねぇぞ、あのやろう。
「へもあんみゃりおひょらにゃいんでふね、へいほふ」
「お前は喋るか食べるかどっちかにしろ、赤城」
カウンターの隅でカボチャ料理に舌鼓を打っていた赤城が、口にカボチャの煮物を放り込んだまま話しかけてきた。どうやら彼女もカボチャに目がないらしく、山雲からカボチャを大量に卸したとききつけてやって来たらしい。
「ング……でも、本当に美味しいですねぇこのカボチャの煮物」
「ウチの飲兵衛共に合わせて少し塩辛く味付けしてあるからな、その『カボチャのそぼろ煮』は」
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