Blue Sea 『空と海の境界線』
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Operation 02-発令、ファーバンティ解放作戦-
放たれた矢
Mission19「鶴の翼」
前書き
今回は視点をぐるっと変えて、新キャラの登場です。
なので響や照月はほとんど出ません。
◇
0400 ノースポイント ニューフィールド島第2鎮守府 工廠
「……何を考えてるんだろう、私って」
私――――――翔鶴型2番艦、瑞鶴。第2拡張改装を終えてからしばらくのこと、私はあの未確認兵器と遭遇した。公式にいえば、小型相手ではあったが、油断していた私は艦載機による援護は間に合わず艤装を失った。
それから今日、ウィッチという単語を隅で聞いていた私は何か工廠にあるんじゃないかと思い、今あの回収された未確認兵器の残骸の元を見て、何か奇妙な感じはあった。「空」に強く惹き付けられるような、艦娘としてはたぶん、ありえなことかもしれないけれど。
「今、私がもう一度戦う事が出来るのなら……何をすればいいの?」
私はその残骸に語りかけているのか、訪ねているのかは分からないような尋ね方をした。その声は虚空のように消え去っただけ。空を漂うのは、ただきれいに澄んだ空気と雲だけ。
もし、私が空を飛べ戦える存在になったとしたら。戦って守り続ける存在になれるのなら……。弱気になってしまった私を、変えていくことは可能なのかしら?
ふと鳴る警報。緊急着陸した機体があることを示すサイレンだった。
これはもしかして―――――――そう思い滑走路をじっと眺める。それは、戦闘機なのかわからない「何か」を履いていて、尻尾が生えている人もいた。
私の心を突き動かす空への気持ちが、私を走らせた。
◇
「ねえねえシャーリー、ここ一体どうなってるの~?」
ルッキーニが何か不満そうに私に話しかける。地図にもない土地に来てしまった事実は変わりない、が……
「分からん……地図すら違うし近くの滑走路に降りて聞いてみないとわからないぞ~」
「はぁ~、ってシャーリー、あれ滑走路じゃない?」
返答に困ったルッキーニがふと滑走路を見つけたようだ。私はそれを見つけて着陸してみようか?とジェスチャーをしそれに喜んだルッキーニと共に着陸する。
軍事施設の一つでも、どこにいるのかわかれば私はそれでいい。すると案の定警報が鳴った。やっぱりここは軍事施設の一つだ。まあ、抵抗なんてする気はさらさらないが。
ストライカーを脱ぎ一旦寝かせると格納庫か工廠かは知らないが女性が走ってきた。まさかとは言わないが、ここも女性が主体の軍隊じゃないだろうか?と思いつつも。
まあ、走ってきたその人を見てこの世界も元の世界とほとんど一緒のメカニズム、としか言いようがなかった。とりあえず見てほしいものがあると言われて工廠に案内された。
「この残骸なんですけれど」
私達2人に見せられた残骸。一目で、ネウロイの残骸と見分けがついた。何故残骸があるかどうかは知らない。消滅せず残骸となるネウロイもあるのか、と新しく考えた。
「間違いない、ネウロイだ」
反射的にそう答える。だが私がその部屋を見渡した時ストライカーユニットらしきものを見つけた。私はそれに駆け寄る。それを見たときは何かを感じ取った。いや、その何かは言葉では表せない。
「これって……?」
「間違いなくストライカーユニットだろう、しかも機密指定レベルの」
ぱっと見ただけでも私にはわかる。そして、その駆け寄ってきた女性に素質があるのかは分からない。それを見届けるのが私になるのかもすら。
何の為に私はここに来たんだろうか。元の世界に帰れる様子すら見当たらない。まずは501への合流が優先だが、彼女がいるからには何とかしてみたいという気持ちも強い。ルッキーニがどう思うかは知らないが。
彼女が望むもの。それは誰かを守るために空を飛びたいという気持ちなのだろうか。
「なぁ、君は何を考えてストライカーユニットを見つめている?」
緑色のツインテール、ルッキーニと似ている髪型である彼女に問いかける。彼女は元々はウィッチではないまた別の誰かを守る存在、だったのだろう。奇遇ともいえるのかは分からない。
「誰かを守る……空を飛んで、みんなを」
それは実にシンプルで強い思い。
宮藤に似ているな……そう思いつつも、彼女の手をそっとストライカーに添えさせる。
するとそのストライカーは彼女に反応したのか眩い光を発し何か美しい機体のように見えてしまった。いや、それは本当にその形に変わった。
「これって……」
その機体は緑色の光を発して消えてしまった。しかし、彼女は何かを感じ取ったようだ。そしてそれが私には初めてのことであった。
「ユニットを履いている状態にできるか?」
そう彼女に言うと彼女はジャンプしてストライカーを展開した。
彼女に説明を求めるとこう答えた。
「どうにも、量子化っていうものらしくて……」
量子化……聞いてるだけでわくわくするような内容だ。そもそも量子化など恐らく不可能に近い……だけどこの機体はそれを成すのが不思議でたまらない。
「とりあえず飛行テストだ。ルッキーニ、ついてこい」
そう言うと彼女も付いてくる。ルッキーニは呼んだから勿論のことだが。
◇
(何だろう……この力は)
そのストライカーが私に吸収されたのかは定かではないが、私の意思で量子化、という状態から展開できるらしい。
また飛行テストを行う事からついてきてほしいと言われ私はそれについていく。場所はあの滑走路。その人は先に飛ぶと「来い」という感じでジェスチャーをしたタイミングで私は量子化を解除した。機体の姿が解き放たれる。誰もが目を引き付けそうなその姿。不意に「デュナメス」と呟いた。この機体の名前だろう。
呟きつつも離陸し初めてながら何故か頭の中に流れ込んでいた機体の動かし方をとりあえずやってみた、それだけでもその人からは驚かれた。どうにもかなり稀らしい。
そして頭の中で武器の中身を確認する。長射程のレーザーライフル、近接戦闘用のビームガン、そしてレーザーライフルの照射とミサイルの射出くらい。って、これ支援タイプじゃん……空母としては支援する側だったから、あまり変わらないけれど……。
「そういえば、ウチの部隊にも同じような支援向きの装備をしているやつがいたなぁ……」
オレンジ色の長い髪でウサギの耳と尻尾を生やしているその女性が言った。
「ああそうだ、私はシャーロット・E・イェーガー。気軽にシャーリーと呼んでくれ。あと、どうにも面倒な状況になってそうだ」
「あ……」
それが私が見ても理解できた。量子化の影響でいろいろ基地の警報が鳴ってたこと。
◇
同時刻 作戦海域
「聞こえるか?これより回収段階に移る」
『ようやく私たちの仕事がきたんですけどぉ……』
『まあここまでは事実上サラトガさんの護衛……仕方ないことだ』
まあ事実上仕事がそういうものだからな。と思いつつサラトガを除く5隻(吹雪含め)は大鳳を取り囲みつつワイヤーを張り船体を安定、リンクして動力系の臨時修復をしつつ航行補助を行う。
それを見つつも大鳳の損害を確認する。甲板の一部が吹き飛ばされているのと動力系に対しての被害がひどいことから、一部か所に集中砲火を浴びせられたと推測した。にしても、あの星奈と呼ばれるウィッチはよく一人で守り切れたな……と感心する。
(……問題は照月の方だな)
あっちもやる必要が出たら、今度は人数の割り振りが足りない。今回の場合は5隻もいないと引っ張りきれないのだ。それを問題としてしまう最大の理由は動力系全壊に加えた積載の重さも足を引っ張っている。
(もっとも、あの2人なら強く、繋がってる)
そう確信したい……だが彼は自分の鎮守府にいる艦娘が「ウィッチ」として目覚めたことを、まだ知らない。
鶴の声が『虚空』ではなく『空』に響き渡る。それは空を目指したものが手に入れることが出来たもの。それを彼は、鎮守府に戻ることで知ることになる。
◇
艤装を失ったものは、何になるのか。
その答えを知る者は少ない。
解となる、ウィッチという言葉。可能性の翼。
それは、鶴の想いによって鶴の手に舞い降りる。
デュナメスと呼ばれるそのストライカーは、この世が生み出したもの―――――――なのだ。
鶴は決めた。「空」を守ると。デュナメスは、それを受け止めた。
彼女の想いを乗せるように。
後書き
後半UNICORN聞いてました。
NT-Dシステムの導入は没です。
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