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真田十勇士

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巻ノ百七 授かった術その三

「今のそれがしは肉体がないので」
「うむ、魂だけじゃ」 
 不動も言う。
「お主はここに至るまでの修行の中でじゃ」
「身体がら魂が離れてですな」
「ここに至ったのじゃ」
「そうでしたな」
「そしてだ」
 さらに言う不動だった。
「魂だけならな」
「休む必要もなく」
「疲れることもない、しかし」
「何時果てることなくい続く」
「そのうえこの激しさじゃ」
 不動の呵責のない、まさに全ての魔を滅ぼす激しさでの攻めだ、それに対する故になのだ。
「ずっと耐えられるか」
「その勝負ですな」
「己へのな」
「そしてそれに耐えれば」
「強くなっていきじゃ」
 そしてというのだ。
「七曜の力を備えられる」
「そうしたものですな」
「うむ、しかしな」
「それでもですな」
「そもそも余の前に至った者すら五人とおらぬ」
「そして七曜を備えた者は」
「一人だけじゃ」
 まさにというのだ。
「お主の初代じゃ」
「そこまでのものですな、しかし」
「七曜の力をじゃな」
「はい、是非」
 何といってもとだ、幸村は不動に毅然として答えた。
「その所存です」
「そうじゃな、ではじゃ」
「これからもですな」
「修行を続けるぞ」
「それでは」
 幸村は不動の激しい剣撃を防ぎつつ応えた、そして彼も刀での攻撃を加えてだった。そのまま修行をしていった。
 その中でだ、次第にだった。
 幸村は不動と互角になってきていた、その太刀捌きそれに身のこなしを見て不動は唸って言った。
「うむ、少しずつじゃが」
「強くなっていますか」
「余に並ぼうとしている」
「不動尊に」
「余は明王の首座」
 その位置にある存在だというのだ。
「他の明王以上に強い」
「だからあらゆる魔を降せるのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それだけにじゃ」
「強いですな」
「その余に並ぼうとしておる」
「そうなのですか」
「このままいけばな」
 まさにというのだ。
「お主は余に並び」
「そしてですか」
「七曜の力を備えられる」
 そこまでに至るというのだ。
「このままいけばな、それにな」
「それにとは」
「ここでの時の流れは人にはわからぬが」
 それでもとだ、不動は忍の身のこなしさえ使って挑む幸村の攻めを受けつつそのうえで言うのだった。
「人の世では一睡、禅の間のことじゃが」
「それでもですか」
「ここでは十年二十年」
「そこまで長いですか」
「お主はその二十年の間休まず鍛錬をしておる」
 不動を相手にというのだ。
「見事じゃ」
「それもですか」
「実にな」
「長い修行はです」
「苦とは思わぬか」
「はい、道を極めると思えば」
 それならというのだ。 
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