和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
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第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第51話 韓国対日本 前編(vs 高永夏)
H14年 北斗杯終了後 広島県因島 本因坊秀策生家
特別対局にあたり旧生家家相図を元に再現した木造平屋建の秀策生家が因島に再建された。
ヒカルの碁による秀策ブームの影響で作られた本因坊秀策記念館はこの世界にはまだない。
生家の見どころは秀策が碁を始めるきっかけとなった押入れだ。
秀策はある日いたずらをした罰として父に押入れに入れられると、薄暗い押し入れの中で碁石を見つけ夢中で並べたそうだ。
それを見た母が碁の手ほどきをすると、めきめきと碁が上達したと伝わっている。
今後も再建した生家は囲碁対局や茶室として利用できるようになっている。
囲碁人気の高まり次第で観光客も増え資料展示を行う記念館も作られることになるかもしれない。
今日の対局には中国から楊海もわざわざやってきており後で尾道にある美味しい店を紹介しろと頼まれている。
現地の大盤解説は北斗杯で日本チームの団長を務めた倉田七段。聞き手は妹弟子の香川いろは女流だ。
流石に北斗杯に出場した選手たちは対局者の高永夏を除き因島まで来ることはないが、安太善は韓国チームの団長として来日し責任を持って最後まで選手を見守るつもりのようだ。
アキラくんの対局の際は桐嶋研の棋士たちが応援に現地の熊谷を訪れていたが、因島に用意された検討室は今は少し閑散としているが、関係者から塔矢先生が後ほど訪ねてくると知らされている。
本日、和-Ai-の代理としてネット碁を見ながら打ち手を務めるのは進藤ヒカル。
進藤ヒカル本人の希望もあり図らずも北斗杯戦の韓国対日本の大将戦の再現となった。
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大盤解説会場 解説:倉田厚七段 聞き手:香川いろは女流
「それじゃあ北斗杯のオーダーは選手も納得してんだ」
「最終的な決断と責任は団長のオレにあるけどな」
「あつぽんの小細工や横暴じゃなかったんだ――」「んなこったない」
「で、どうしてオーダーを変えたの?」「んー。いろいろあってだなー―」
「――それで進藤初段が大将になったんだ」「神采配だろ?」「熱い青春だね」
「打ち手に志願したのも対局場が本因坊秀策の生家だから?」
「だろうな。代理じゃリベンジにはなんないしなー」「なるほどと納得」
「じゃあ北斗杯MVPとなった高永夏選手の印象を教えて?」
「高永夏? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど……和-Ai-も負けないよ」
「この特別対局の見どころは?」
「え〜、いしだっ、石たちが躍動する最先端の碁を、皆さんに楽しんでもらいたいね」
「ゆらゆら小刻みに震えながら解説してるけど大丈夫?」
「今日はわざわざ因島の大盤解説会場まで来てくださった皆さんのために解説陣もはりきってファンサービスするので楽しんでいってください!!」
「あつぽんは張り切りすぎて失言しないか心配」
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関係者検討室
「先番のヨンハは、和-Ai-が好きな大ゲイマジマリを選択したな」
「ええ。ヨンハは和-Ai-の碁もしっかりと自分の碁の中に取り入れてます」
「塔矢君もそうだったが、ヨンハも手堅い。和-Ai-を相手に大したタマだよ」
先ほどまでは雑談に交じっていたが対局が始まってからは、中韓の二人のトップ棋士の解説にアマチュア初段の僕が口を挟むのは難しい。
「白は右上のカカリを放置してシマリ」
「黒は普通は左辺をひらくところだが、あえて変化したな」「準備した作戦が?」
「この黒のハサミは従来のコスミツケに比べれば厚い手だ。
反面この様に隅にサバキの余地があって白にも余裕がある」
「隅にフリ替わったのは頷けるな」
「ヨンハは、あくまで左辺は守らずに模様拡大を優先してます」
「これは! 和-Ai-じゃなくて打ちたくなるカタツキだな。どう受けても黒は重複形になる」
「黒は無難に受けたが……ここで白が右下隅にツケ!?」
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大盤解説会場 解説:倉田厚七段 聞き手:香川いろは女流
「このツケは……さすがに人類の碁では前例がないだろ」
「この手は人類終わらせに来てるね」
「和-Ai-の手はあっち打ったり、こっち打ったりで、普通の人間はこんなことしない。
ずっと思ってたんだけど、どうも手の必然性を感じない」
「どういうこと?」
「オレの勝負勘(ゴースト)が囁くんだ。
ヨミも信じられないほど深いし、形勢判断も正確で、反応も恐ろしいくらいに早い。
けど、和-Ai-ってヤツは囲碁をただの計算とでも思っていやがるんじゃねーの?」
「つまり気に入らない?」
「そうだな。どうも和-Ai-からは人間の持つ欲を感じることができない。感情のない計算機みたいだ。
例えばタイトル戦の対局一つをとっても、そこには積み重ねて来た人間の歴史や情念が感じられる。
そんな舞台だからこそファンも勝負の期待に胸を膨らませんるだろ?」
「そうだね」
「先日の塔矢の打ち回しには1手でも長く粘って1目でも差を縮めたいって意思が感じられた。
積み重ねて来た囲碁に対する愛すら感じたよ。
けど和-Ai-の棋譜からは、どうも囲碁をただの記号の羅列としてしか見ていないように感じる」
「機械的ってこと?」
「どういういえばいいんだろうなー。ランダムに文字を並べた結果として面白い物語ができた。
けど、それは文学作品として優れた芸術っていえるのって感じか?」
「うーーーん。ちょっと意味がわからない」
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関係者検討室
「この黒の手は?」「これは白のサバキが注目されるな」
「隅で活きることはできないが、手を伸ばしアジをつけている」
「白のこの打ち方は2線を這わせて得をする手筋だ。」
「和-Ai-がやっかいなのは、自分は2線を平気な顔で這って勝利する。
じゃあ2線の這いが良いかというと、相手に2線の這いを強要して自分が得することもある」
「じゃあ高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処するのが正解なんですか?」
「行き当たりばったりに聞こえるけど、今のところはそうとしか答えようがないな」
「ここまでは必然か。隅は元々黒地で、右辺を凹ませた分、白が得をしている」
「後はこの白が攻めを食わないように形を作れるかどうか」
「黒は白からのキリに配慮したと思われる手を打ちましたね」
「白が軽やかに手を伸ばしてきたな。一間飛びの如き堅い手は打たないか」
「このタイミングで切断!?」
「これは高永夏ならではの強烈な発想だ」
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