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真田十勇士

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巻ノ百二 百地三太夫その八

 そうして百地の横に現れ剣を繰り出す、百地の杖にその一撃を防がれつつもそのうえで言った。
「一人たりとも」
「古今東西な」
「一人もおりませぬな」
「左道はそうしたものじゃ」
 つまり外道、魔道と言われるものはというのだ。
「ただ人を殺め惑わすだけのものでじゃ」
「天下をどうかするものではない」
「正しくな」
「そうしたものに過ぎず」
「徳川殿に対したいならじゃ」
「そうした道に堕ちるな」
「真田殿と同じ道を歩め」
 まさにそちらをというのだ。
「よいな」
「わかりました」
「それではな、鍛錬に励んでいくぞ」
「正しき道のそれを」
「その目のままでいよ」
 澄んだそれでというのだ。
「これからもな」
「才蔵も他の者達もよい目をしています」
 このことは幸村も言った。
「どの者も多くの戦を経てきましたが」
「それでもですな」
「荒んだものはありませぬ」
 それこそ一欠片もというのだ。
「澱みも汚れも」
「ですな、正しき道を真田殿に従い歩んできたが為に」
「だからこそ」
「いい目をしておるので」
 霧隠達十勇士はというのだ。
「そうなっております」
「それでは」
「真田殿は正しきお心を持たれ」
 そしてというのだ。
「才蔵達を率いて行かれて下さい」
「それがしの道を」
「そうすれば才蔵達もです」
 霧隠との稽古を続けつつの言葉だった、霧で互いに姿を消し攻めてかわし合いつつの言葉だった。
「必ずです」
「それがしと同じ道を進み」
「正しき心のままでおります」
「それがし次第ですか」
「まず大事なのは」
 まさにというのだ。
「それです」
「それがしの心ですか」
「大丈夫だと思いますが」
「心はですな」
「これからもです」
「確かに保ち」
「進まれて下さい」
 くれぐれもというのだ、そうしたことを話してだった。幸村も霧隠も百地の修行を受けた。それは寝る間も惜しんで行われていた。
 飯の時と寝る時以外はまさに修行の日々だった、だが。
 晩飯の時に星を見てだ、幸村は言った。
「凶星が」
「ありますか」
「はい」
 その星を見てだ、幸村は百地と才蔵に話した。晩飯は山の獣と山菜や茸を鍋にしたものだ。
「一つ、幕府の中に」
「そうなのですか」
「幕府の中に」
「重臣の方がお一人」
 幸村は星を見つつ話していく。
「落ちます、それも一族ごと」
「一族ごととは」
 そう聞いてだ、霧隠は眉を曇らせて言った。
「それはまた」
「大きいな」
「はい」
 まさにというのだ。 
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