工業高校哀歌
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第五章
彼女や好きな相手、応援しているアイドルや声優の写真や画像を生徒手帳や定期入れ、携帯に入れた。そうしてだった。
何かあれば観た、するとだった。
星野もだ、こう言った。
「それならいい」
「いいんですか」
「そうだ、女子生徒は増やせないしだ」
星野は落合達を呼びまずはこのことを告げた。
「女装なぞ論外だ」
「けれどですか」
「それならいい」
「写真や画像なら」
「それ位ならだ」
こう落合にも答えるのだった。
「いい」
「そうですか」
「そうだ、別に男女交際は否定していない」
星野にしてもだ。
「健全なものは好きにやればいい」
「では不健全なものは」
「わかるな」
星野は落合に自分のこめかみに青筋を立てて告げた。
「その場合は」
「よくわかりました」
落合もこう返した。
「それで」
「そうだ、健全な恋愛はだ」
まさにというのだ。
「好きなだけすればいい、常識の範囲内でな」
「工業高校のですか」
「女子生徒が少ないなら少ないなりにだ」
「やることがありますか」
「そうだ、それをやって青春を謳歌することだ」
「わかりました」
「それではな」
是非にとだ、こう言ってだった。
星野もそれは許した、そうして学生達は彼等の出来る限りのことで女子を傍に感じることにした。だがその中で。
落合の生徒手帳の写真を観てだ、友人達は一斉に突っ込みを入れた。
「凄いな、おい」
「八歳年上だと?」
「御前交際相手二十六歳のOLさんか」
「凄い人選んだな」
「いいだろ」
落合は彼等から観て異様なまでにあだっぽいその女性の写真を見せつつ話した。
「年上だぞ」
「いや、ちょっとな」
「年上過ぎるだろ」
「幾ら何でも八歳上はないだろ」
「同じ歳じゃないのか」
「そこはせめて大学生だろ」
「二十六歳OLはな」
友人達は口々に言う。
「もう尻に敷かれるだろ」
「というかよく相手してもらってるな」
「そんなに年上の人に」
「確かに御前しっかりしてるけれどな」
「これが俺流なんだよ」
落合は笑ってこう返した。
「交際のな」
「凄い俺流だな」
「あまりにも俺流過ぎて驚いたぜ」
「そこまでなんてな」
「いいぜ、年上もな」
星野も落合のこの恋愛については特に何も言わなかった、言ったのはこの一言だけだった。
「結婚は卒業してからにしろ」
「わかりました」
落合も頷く、何はともあれ彼等は工業高校での青春と恋愛を楽しんでいた。彼等が出来る範囲内において。
工業高校哀歌 完
2017・2・15
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