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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第05話 異世界転生?

「なんだ、知らない天井かーー」

 朝の光で目を覚ました際に映った部屋の景色に呆然と呟く。様式美のような台詞にいくらか余裕がありそうだが、台詞の元ネタが思い出せないくらい不可解な状況に混乱していた。

「ここは誰の部屋?」

 狭い部屋にも置けるコンパクトサイズのシングルベッドから起き上がると、山積みのダンボール箱、スタンドミラー、懐かしい感じのする勉強机がある。

 記憶の何処かで見たことのあるような部屋。……とりあえず眼鏡とスマートフォンを探す。

 眼鏡は……あった。スマフォは…………ない。他には携帯が……ある?

「懐かしいタイプの携帯だな。初めて買って貰った携帯に似てるけどーー」

 ようやくスタンドミラーに映る自分の姿に気づく。

 そこには若返った-大学生になったばかりの頃の-自分の姿が映っていた。

「え、え、え、ど、どういうこと?」

 状況が呑み込めず呆然と立ち尽くした後、現実逃避とばかりに再び眠りについた。

●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇

 二度寝しても起きても現実は変わらなかった。

ーーとりあえず落ち着いて状況を整理しよう

 財布や運転免許証や携帯電話など周囲にあるものから情報を集める。

 名前は岸本 空(きしもと そら)。年齢は18歳、現住所は東京都、職業は大学生。

 そして時代はH11年3月末日。

「わけがわからないよ」
 
 学生時代に戻った?都内での一人暮らしを始めた頃に?
 タイムスリップ??いや違う……過去への転生?移転?若返り??

 何でこんなことに?

 せっかく彼女が初タイトルを取るっていうのに。
 二人の約束だってあった。
 これから、これからだってときに、なんで?……なんで??

 「ーーとりあえず彼女に会いに行こう。」

 僕が飲み会で彼女に会ったのは大学最後の年だけど、今の時期なら彼女は馴染みの囲碁サロンに顔を出してたはず。学生時代に住んでたアパートから囲碁サロンまでは数駅だったから彼女の実家よりはずっと近い。

 これからのことは彼女に会ってから考えよう。

 現実離れした出来事のショックが大きく、ふらふらと夢見心地なまま目的地へと向かった。

●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇

「あら、こんにちは。どうぞ、いらっしゃい。ここは初めて?」

 囲碁サロンに着き、声をかけて来た受付のお姉さんに尋ねる。

「はい。はじめてです。えっと……すいません。
 えっと、ここにあい。じゃなかった桐嶋さんはいらっしゃいますか?
 プロ棋士の桐嶋和です。女流棋士のーー」

「え? 桐嶋さん?」

 キョトンとした顔で見つめられる。あれ?この時期は院生だったかな?

「ねえ、アキラ君。女流棋士に桐嶋和さんって人はいた?」

 受付のお姉さんが独りで碁を並べていたオカッパの男の子に声をかける。

 彼を見て絶句した。

(今時あんなオカッパで半ズボンな小学生いないよ!)

 けど心当たりがあった。ある漫画のキャラクターに。

「……え? 君って塔矢アキラ……くん?
 じゃあ……ここは塔矢名人が経営する囲碁サロン?」

 その後ことは殆ど記憶にない。気が付けば囲碁サロンから立ち去って街を歩いていた。
 とりあえず最寄りのネット喫茶に向かいインターネットで彼女のことを調べることにした。

 日本棋院のホームページで棋士一覧を確認し再び絶句する。

 タイトル者に並ぶ一柳棋聖、桑原本因坊、座間王座、そして塔矢行洋名人の名前に。そして――桐嶋和の名前は何処にもなかった。

 気が付けばアパートに戻って、何も食べず、何も飲まず、何も考えることができず――

 この悪夢のような世界から目が覚めるように神様に祈って、声を殺して泣きながら気絶するように眠りについた。 
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