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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する

作者:笠福京世
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第一部 桐嶋和ENDルート
  第04話 囲碁AIソフト

 宿泊したホテルの一室で預かった最新のノートパソコンから囲碁AIソフトを起動する。

 トッププロが「わからない強さ」と評したものが目の前で動く。もちろんパソコン1台でそんな性能を発揮できるわけはない。
 膨大なデータを高速処理できるマシンパワーが必要なため外部のディープラーニング用GPUサーバーで計算を行っている。

(それでも運用コストはかなり安くなったんだけど……)

 囲碁界の最強棋士のひとりを破った最強の囲碁AIは、1000台以上のプロセッサを束ねたクラウドサーバの上で動作した。その運用料金(*開発費は含まれていない)は年間30億円以上と噂されている。

< 和-Ai- それが市販を目指す最強の囲碁AIソフトの名前 >

 コンピュータ囲碁大会で優勝した囲碁AIを搭載し強さは折り紙付き。
 大きな特徴としては囲碁AIが苦手とした置き碁に対応し、あの有名漫画家の小畑先生がイラスト原案を務めた擬人化キャラクターの和-Ai-が、要所を教える指導機能および検討機能を搭載。

 形勢判断をくるくる変わる表情画像で伝えたり、指導機能もテキストで冷たく指摘するのではなく桐嶋和の声でおしゃべりしてくれる!

(もうアラサーなのに意外とノリノリでアフレコやってたな……)

 これが囲碁AIを開発したIT企業と彼女が契約したビジネスの一つ。日本での販売には国内の大手IT企業が関わっており、彼女の望む環境を整えるためのスポンサーとしてサーバーの運用費を捻出した。

 人間より強くなった囲碁AIもソフトにより特徴があって、それぞれの個性になっている。

 和-Ai-の特徴は、桐嶋和の棋風に似ていること。もっと正確に言うなら、桐嶋和が和-Ai-を参考に自ら棋風を作り替えたということ。

 桐嶋和は囲碁AIソフトを囲碁の研究に使うというよりも「自らの局面評価力そのものを和-Ai-のそれに置き換えていく」という踏み込んだ姿勢で囲碁AIソフトと向き合うことで自らの殻を破った。

(和-Ai-先生の声が聞こえるとか電波なことを対局中に言いはじめたときは若干心配になったけど)

 女流初の七大棋戦の挑戦者となった桐嶋和の快進撃を支えた囲碁AIソフトは、すでにティザーサイト(プロモーション用のWEBサイト)が公開され萌えキャラ化された和-Ai-のイラストが碁ちゃんねるに続々と投稿されている。

 天元戦が終わり次第、ティザーサイトが更新され、より具体的な情報が公開される。

「タイトルを取れば今まで以上に互いに忙しくなるなーー」

 二人の約束を思い出し心地よい幸福感に包まれながらベッドに潜りこみ目を瞑る。

 薄れていく意識の中で彼女の声が遠くから聞こえるような気がした。 
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