秋祭り
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第五章
「後はね」
「後はって?」
「いよいよお願いしましょう」
「本題に入るのね」
「お祭りも見たし」
一応だ。神輿を担ぐのも見てはいるのだ。
「だからね。後はね」
「お賽銭でお願いね」
「そう。未来は何お願いするの?」
「大学。八条大学に受かるようにって」
受験のことをだ。お願いするというのだ。
「そうお願いするつもりだけれど」
「学業成就ね」
「ええ。矢とか御守りはお正月に買うけれど」
「今もお願いするのね」
「ええ。そうしようかなって」
「じゃあ私もね」
「青空も受験のことお願いするの?」
「未来と一緒にね」
今も一緒にいる彼女の少し気弱な感じの横顔を見てだ。青空はくすりと笑って言った。
「八条大学に行けるようにって」
「お願いするのね」
「未来は文学部志望よね」
「ええ」
実は未来は文学少女なのだ。それで文学部に入りたいのだ。
「百人一首とか源氏物語とか勉強したいなって」
「雅ね。私は芸術部かしら」
「漫画描きたいの?」
「そう考えてるの。学部は違うけれどね」
「それでも同じ大学に、なのね」
「うん、行こうね」
こう未来に言うのだった。
「その為にも。お勉強も大事だけれど」
「お願いもね」
「神様絶対に適えてくれるよ」
明るくだ。青空は栗を食べながら言った。
「お願いはね」
「そうね、それじゃあ」
「勉強も頑張らないとね」
「そう。駄目よ」
「それはわかってるから。ただね」
「ただって?」
「漫画はセンスなのよね」
青空は未来の横顔を見ながら話す。
「それが大事なのよ。今考えてるのは」
「どんなことなの?」
「ラブロマンスものね。考えてるのも」
「青空って恋愛ものも好きなの」
「結構ね。意外?」
「アクションものとか好きだから」
そっちの方の漫画ばかり描くと思っていたのだ。だが青空のそうした一面も聞いて未来はこう言うのだった。
「ううん、恋愛もよかったの」
「面白いものと思ったらね」
「何でもなの」
「そう、そうした主義だから」
「それで恋愛ものもなの」
「まあね。それで実は」
酒でもう既に赤くなっている顔だがそこにさらに別のことで尚更赤くさせてだ。青空は未来にこんなことを言った。
「私もなのよ」
「青空も恋愛をなの」
「それしたいなって。好きな人というか素敵な人ね」
「いたら。してみたいのね」
「そう、恋愛ってやつね」
顔を酒以外のことでも赤くさせての言葉だった。
「したいかなって」
「じゃあそのこともお願いする?」
未来はくすりとした笑みになって顔を二つの感情で真っ赤にさせる青空に尋ねた。
「今は。そうする?」
「そうね。お勉強のことも含めて」
「お願いは一つだけってことはないし」
「うん。けれどこの神社って恋愛の神様もいるの?」
「いるんじゃないかしら」
そこは詳しいことはわからないがそれでも少しはだとだ。未来は答えた。
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