秋祭り

「いやあ、幸せよ今本当に」
「青空がそうだったらいいけれど」
「色気も何もないっていうのね」
「本当にないわよね」
　未来はたこ焼きを食べてから自分のお酒、杯の中のそれを飲みつつ述べた。
「高校生らしくもないし」
「まあそうかもね。けれどね」
「やっぱりその飲み方が美味しいっていうのね」
「うん、凄く」
　こう言ってだ。また飲む青空だった。
　そのうえで自分の食べものも食べつつだ。今度はこう言ったのである。
「じゃあ。お酒と食べものの後はね」
「お賽銭入れてお願いして？」
「違うわよ。まだ忘れてるのあるじゃない」
「お酒も食べものも楽しんだのに？」
「お酒用の食べものはね」
　青空はにこりと笑ってだ。こう言ったのだった。
「それはね」
「何か引っ掛かる言い方ね」
「そうかしら」
「ええ。まさかと思うけれど」
「甘いものがまだじゃない」
　今度はこれだった。
「ほら、クレープに林檎飴にチョコバナナに一口カステラにたい焼きね」
「お酒飲んでるのに甘いもの？」
「私お酒の後でも甘いものの味とかわかるから」
「だからいいっていうの」
「そうよ。それに最後はやっぱりね」
「甘いものだっていうの？」
「それで締めないと駄目でしょ」
　こう言うのである。
「だからよ。甘いものも食べてね」
「ううん、何かまだ食べてっていうだけで」
「別にいいじゃない」
　青空は焼き鳥の串を手にしてだ。口で横から思いきり引き抜いて。
　肉も葱も口の中でもしゃもしゃとさせながらだ。こう言ったのだった。
「食べられるってことは健康の証だし」
「ううん。ここぞとばかりに楽しむのね」
「そういうことよ。じゃあいいわね」
「まあ。青空がいいっていうのならね」
　杯の酒をちびりと飲みながらだ。未来は応えた。青空は遂に一升瓶をラッパ飲みで空にした。
　そして焼きそばなりたこ焼きなりを全部食べてだ。それから未来と共に屋台の方に戻り。
　それから今度は甘いものを手当たり次第に食べた。今度は歩きながら食べて横にいる未来に言うのだった。
「やっぱりね。屋台の甘いものもね」
「美味しいっていうのね」
「もう最高よ」
　クレープにチョコバナナも勢いよく食べる。
　それからたい焼きもカステラも頬張りだ。林檎飴を勢いよく食べて。
　甘栗を置いておいて水飴を舐めながらだ。こう鯛焼きを一個食べる未来に言ったのだ。
「いやあ、満足してるわ」
「それだけ食べて気分とか悪くならないの？」
「全然」
　本当にだ。何ともないというのだ。
「私どれだけ食べても気分が悪くならないの」
「食べものはそうなの」
「お酒には潰れてもね」
　だがだ。それでもだというのだ。
「食べることについては平気だから」
「甘いものをそれだけ食べてもなの」
「全然平気。それでね」
「それでねって？」
「甘いものも全部食べたし」
　水飴も舐め終え最後の天津甘栗を歩きながら剥いて中身を食べて。
　殻は袋に戻しながらだ。こうも言うのだった。