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やはり俺がネイバーと戦うのは間違っているのだろうか

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9.こんなことに必殺技を使うのは間違っている

 いざ試合が始まると一方的だった。
 確かに三浦は中々だし、葉山も運動部なだけあって初心者よりは強い。
 だが、それでも葉山たちは相手が悪すぎた。
 何せ、雪ノ下と半ヒス──性的興奮しないでなったヒステリアモード──の俺だ。相手が悪いところと話ではない。三浦が経験者の力を振りかざすも、力技は雪ノ下が倍で返し、フェイントなどの策を弄するも雪ノ下が全て読みきり完封した。いや俺も仕事してるからね。一応俺ノーミスだから。そんなこんなで最初の四本はこっちが瞬殺した。
「さすがだな。さすがすぎて仕事がなくなって助かるまでもある」
「そろそろ仕事をしなさいサボリ谷君」
 そう言うと雪ノ下は顎でくいっと葉山たちを指す。
 なにやら作戦会議らしい。まあ、おそらくは、
「葉山くんなら私の情報を持っているわ」
 伊達に幼なじみじゃねーってか?
「そうね。おそらくはここからは持久戦になるわね。私の体力さえ削ればもうおしまいだろうと思ってるでしょうから」








 そして、第二ラウンド。雪ノ下の言うとおり持久戦にもつれた。俺も幾らか攻めてみるが二人とも明らかに雪ノ下を狙っている。俺の方に来るとしたら油断してると思っているのだろう。それをつこうとしたボールくらいである。ほとんどのボールが雪ノ下に集まっていった。
 だが、それでもこちらに流れが来ているのは確かだ。
 なぜなら、
「フハハハ!圧倒的ではないか我が軍は!薙払え!」
「ゆきのん、すごーい!」
 材木座や由比ヶ浜がこちら側にいるからだ。由比ヶ浜はともかく、材木座がいるという事実はでかい。あいつは流れが来なければおそらく何もいわずに黙っているだろうからな。戸塚も期待が顔に浮かんでいた。
 だが、総司は顔をしかめ険しい顔をしていた。雪ノ下の体力が少ないと言うことは総司もよく知っているからだ。だが、雪ノ下も伊達にボーダーじゃない。そして、俺らの訓練を受けてきたわけじゃない。葉山が思っている以上に体力はあるはずだ。
 そうこうしているうちに、こっちもミスがたまにでて7-3。已然に葉山たちの粘り作戦は実行されていた。
 こういうの相手するのってうぜーな。嵐山さんと時枝のクロスファイアを受けてる気分だぜ。しかも、葉山たちは極みつけに葉山も三浦もベースラインの後ろに下がり守りに徹していた。攻める気が全く感じられんな。
 ラリーが続くこと十数本、ついに雪ノ下が勝負へでた。
 葉山の浮いた球に狙いを定めた雪ノ下はベースラインから前へ走る。そして、十分助走をつけ跳んだ。
「うわっ、ダンクスマッシュ」
 雪ノ下のスマッシュは葉山と三浦の間、センターマークをぶち抜いた。
 これで八点目。ここ四点を取れば俺たちの勝ちとなる。
 だが、俺は肩で息をしている雪ノ下へ声をかける。
「おい、雪ノ下」
「………ええ、あなたの察する道理よ。タイムリミットね」
 くそっ!もう来たか。
「なんかしゃしゃってくれたけどー、さすがにもう終わりっしょ?」
「まあ、お互いよく頑張ったことにしてさ、引き分けってことにしない?」
 前回に引き続きY.Hさんからの話し。
『あとはね、隼人は雪乃ちゃんが大好きなんだよねー。絶対振り向いてはもらえないと思うんだけどなー。無駄な努力は無いって比企谷君は言うかもだけど、あのアピールは無駄だと思うんだよなぁ』
 お前本当雪ノ下大好きだな!
 でもそれ悪手だからな。こいつ寧ろこいつ対抗心燃やすからな。ほれ、お前のところの女王様(笑)もお怒りだぞ。
「ちょ隼人、何言ってんの?試合だからマジでカタつけないとまずいっしょ」
 いや、何がまずいのか意味が分からん。
 ま、結局のところ雪ノ下の燃えたぎった対抗心の鎮火をするのは、
「その必要はないわ」
 そういいながら雪ノ下はフラフラとした足取りで俺の元へ来た。おいおい、酔っ払いのおっさんみたいな足取りになってるぞ。大丈夫、な訳ないか。
「残り四点、全部この男がとるから」
 でしょうね。
 材木座と目があった。俺に親指を立てた後あいつらに向かって十字を切りやがった。おい、サムズアップはおいておいて最後のはなんだ最後のは。
 戸塚と目があった。期待の眼差しを向けないでくれ。今の俺がやれることは少ないんだから。
 由比ヶ浜と目があった。でけー声で応援してんじゃねーよ、恥ずかしい。
 ギャラリーを見たら見知った顔ぶりが揃っていた。
 くそ生意気な菊地原やそのフォローに追われる歌川。玉狛の宇佐美、那須隊の熊谷、三輪隊の三輪に奈良坂、古寺、さらにパーフェクトオールラウンダー志望のアクション派スナイパーの荒船さん、二宮隊の犬飼さんなどがいた。
 そして、総司と目が合う。『ノーコンテニューでクリアしてください』、ね。つまり四球で終わらせろと。鬼畜だなぁ。
 最後に雪ノ下と目が、あわなかった。雪ノ下が倒れてきた、いや体を預けてきたからだ。端から見たら抱きついて来たようにも見えるのかねぇ。はぁ、周りへの弁解と血流がヤバい。そして、
「後は、任せるわ。比企谷君」
 ────────いや、八幡。
「Yes your Majesty(陛下の仰せのままに)」
 おわかりだろうか。普段の俺がこんなことをすると思うか?何だったら、そのままお姫様だっこをして木陰に連れて行くと思うか? 
「ゆっくり休んでいな、雪乃。あとは、俺がケリをつける」
 そう、まさかのヒステリアモードだ。
 まさしく、サイドエフェクトの無駄遣いと言われても何も言い返せん。だって俺も思ってるもん。
「さあ、続きを始めようか。葉山」
「っ!君は本当にヒキタニ君なのかい?」
「それ以外の何に見えるんだ?」
 そういい、俺はサーブのポジションに着き、構える。
 そして、雪ノ下からもらったボールを握る。雪ノ下からもらったボールを!ヒス的には大事なので二回言いました!
 よし、あれでいこう。
 俺はトスを上げる。
 膝で溜めを作り。
 体重をすべて左膝に預ける。
 そして、ラケットを上に振り上げるように振り抜く。すると上に振り上げられたラケットは自然に遠心力で体に巻き付くように振られる。
 パァン!という良い音が鳴る。刹那、打たれたボールは葉山の後ろの壁にバウンドをした。
『え?』
「なっ!」
 ボーダー組以外の奴らは驚いていたが、それボーダー組はまあだろうな。と言う顔をしていた。
「戸塚、コール」
「っ!9-3っ!!」
 ギャラリーは唖然としていたがただの速くて見えない速球だ。
 種を明かせば簡単だ。打つ瞬間にラケット越にボールへ秋水を使っただけだ。全体重がたまに乗っかっただけだ。簡単だろ?
 さらにもう一発かます。今度も反応できていなかった。
「10-3!」
 さらにもう一発。
「11-3!」
 これでマッチポイント。総司の要望どうり、すべてサービスエースだ。
「雪乃は『冗談は言っても虚言は吐かない』が座右の銘の一つだからな」
 こいつでラストだ。
 この桜吹雪、散らせるもんなら─────散らしてみやがれ!


「ゲームセット!ウォンバイ比企谷・雪ノ下ペア!12-3!」








「今日はすまなかったな、戸塚」
「ううん。大丈夫だよ。それよりも比企谷君のサーブすごいね!」
「うむ!さすがは噂の比企谷拳法であるな!」
 いい加減そのダサい名前変えようぜ。誰かさ、いないの?
「お疲れ様、比企谷君」
「大丈夫だったか?雪ノ下」
「ええ、何とかね。それよりも急いで戻りましょう。着替えてる間に授業が始まってしまうわ」
 おっとやべ。あいつらはいなくなったし明日からはしっかり練習だな。
「───比企谷君」
「ん?なんだよ」
 みんなが校舎に向かってるところ俺だけ呼び止められた。
「……………あ、ありがとう。礼を言うわ」
「ま、仲間だからな」
(おーい。お二人さーん。二人だけの空間作ってないで急がないとほんとに遅刻しますよ)
 おっと、総司がご立腹だ。俺は雪ノ下の手をつかみ駆け足であいつ等を追いかけた。
 これからも、俺らの非日常な青春ラブコメは混沌を極めていく。




 
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