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獣篇Ⅰ

作者:Gabriella
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4 「友達」は、一生の宝物

  銀時たちに案内されて、呉服屋へたどり着く。

  見せの中に展示されている、たくさんの着物を見ていると、
  高杉(あいつ)が私のために買ってくれた、
  今 私が来ている着物のことを、思い出した。

  _なんで今、このタイミングで?

  そう思うものの、心のどこかで寂しいものがよぎる。


  _「…買うもん、決めたか?」

  銀時は、いつものように、のんきな顔をして、私に聞いた。


  _「とりあえず、候補が2つあってな。
    だが、どちらも決めかねて、困っている。
    2人で、決めてくれないか?」


  銀時とヅラが、驚いた顔をする。

  _「いいのか?オレたちで決めて。」

  桂が、けげんな顔で、聞く。


  _「ああ。頼む。」



  _「ならば、その紫の着物にしたらどうだ?似合うぞ、きっと。」

  _「ああ。俺もそう思う。」


  銀時も、賛同してくれた。



  _「…ならば、これを買おう。」




  
  レジを済ませると、私はその着物を着てみた。




  _自分で言うのもなんだが…似合う。」



  本当に、まるで私が着るために存在しているかのようだ。


  _「…似合うじゃねぇか。これで万事屋も華やかになるなァ。」

  _「ああ。とても似合っている。お前、オレと一緒に 攘夷活動をせぬか?」


  ちゃっかりヅラが勧誘してきた。



  _「ああ。考えさせてくれ。
    あ、あと銀時。よろしく頼む。」


  そう言って、銀時と一緒に、「万事屋」へ向かった。

  _「あ、そうだァ。万事屋(うち)の説明をしておこう。

    まず、構成人数は3人。オレと、新八と、神楽。神楽以外は、地球人だ。
    神楽は、『夜兎族』という宇宙最強の戦闘民族からやってきた女の子だ。

    ま、着いたら、多分もう1回 自分で自己紹介すると思うから、そこんとこよろしく。」


  _「わかった。楽しみにしている。」


  _「で、お前さァ、いままでどこにいたの?」


  出た、ちょっと困る質問。
  だが私は、決心を固めた。


  _「…驚かないか?」

  銀時は少し、怪訝な顔をする。

  まぁ、無理もないか。

  _「…ああ。」

  _「実はな、私は今まで、高杉の率いる、鬼兵隊にいた。
    いや、実際、望んでいったわけではない。
    …誘拐されたのだ、高杉(あいつ)に。」


  _「あいつが?」


  _「そうだ。私は攘夷戦争後、この地球を去り、別の(ほし)へ仕事をしにいっていた。
    つまり、私は…」

  _「殺し屋か?」


  知っていたのか、銀時は。

  _「なんで知ってるんだ?」

  _「あ?辰馬から聞いた。あいつも宇宙に行くって張り切ってたから。
    『一緒に宇宙へ行く、仲間ができた』って。」


  _「ああ、そうだったのか。」


  _「だが、誘拐されたってのには驚きだなァ。お前ぐらい強ければ、抵抗ぐらいはできるだろう、
    と思ったが。
    でも、どうやって抜け出してきたんだ?あいつは、獲物を逃すようなやつではない。
    獲物の息の根を止めるまで、容赦はしないやつだ。」

  _「むろん私でも、脱出するのに、相当な時間がかかった。
    なにしろ、首にチップを埋め込まれているのでな。出ようとすると、
    心臓に電流が流れて、動けなくなる。いくら私の戦闘能力が高くとも。」

  _「…そうかィ。大変だなぁ、お前も。」

  _「ああ。できればお前に代わってほしいくらいだ。」


  _「断る。」


  そんなに…即返答しなくたって…


  _「ま、そんな訳さね。だが、ここまで言って、チップ(これ)が反応しないのは、
    何か、おかしい。あいつ、多分もう、私がここにいるのは、知っている。」


  _「あえてか。まぁ詳しい事情はまだよく知らんが、お前も大変だな。」

  _「ああ。」



  そう言っていると、2階に「万事屋 銀ちゃん」の看板が見えてきた。

  _「…あれか?『万事屋』って書いてあるやつ…」

  _「ああ、そうだ。多分、あいつらももう、いるんじゃないのか。
    …行くぞ。」



  そう言って、もっと元気に歩き出す銀時を追いながら、万事屋へ向かった。



  銀時が、入口のドアを開ける。

  _「銀さん、お帰りなさい。」

  _「銀ちゃん、お帰りアルヨ。」


  ん?一人だけなんか、チャイニーズ臭ぷんぷんの言い回しをする女子の声が…



  _「あ、銀ちゃん、それ 誰アルか?
    彼女か、オイ。」

  _「まさか、神楽ちゃん。それはないんじゃない?ヒドイよ、それは。」

  _「んだと、コルァ。ちげーよ、そいつはオレの彼女なんかじゃねぇ。
    …友達だ。」

  _「えぇっ?友達ィィィィ?大丈夫アルか?

    だって、銀ちゃんの友達、ロクなやついないネ。」


  _「…まぁ、確かに。」

  と、メガネ君が答える。


  まぁまぁ、と銀時が仕切りなおす。


  _「この人を、紹介しよう。
    こいつは、零杏だ。だから…」


  たまりかねて、口を突っ込む。


  _「(みお)で大丈夫だ。」


  _「みお?」

  2人そろって、驚いた。


  _「ああ。今日から、しばらくの間、万事屋に居候することになった。よろしく頼む。
    本職は、殺し屋だ。」


  目をパチクリするばかりで、何も反応が返ってこない。

  まあ、仕方のないことだ。


  _「…では、そちらの自己紹介を頼む。」


  そして2人はそれぞれ、自己紹介をしてくれた。


  それぞれ自己紹介してくれたあと、私は神楽ちゃんに話しかけられた。


  _「みおちゃん、殺し屋とか言ってたけど、同じ殺し屋仲間に、「神威」ってやつ、
    いなかった?あいつ、宇宙海賊になっちまっててネ。もしかしたら、
    会ったことあるかもしれないって思って。どうアルか?」


  _「神威…聞いたことないなぁ…。でも、高杉(たかすぎ)ってやつには、会ったことあるよ。
    そういえば、そいつがいつか、『神威がどうの…』って言ってた。

    紅桜の時に。」


  _「おい、」


  すかさず銀時が口を突っ込む。

  だが私は、構わず続けた。


  _「たしか、春雨第7師団団長かなんか、やってるらしいな。」


  _「うん。あのバカ兄貴、何やってんだか。」


  _「あ、あの人、神楽ちゃんの、お兄ちゃんだったんだね。
    名前が似てるから、まさか…とは思ったけど。」


  
  新八君の「ご飯ができたよ」という声で、いったん話が途切れた。
  
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