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真田十勇士

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巻ノ九十八 果心居士その十五

「使っていきまする」
「その様にな」
「それがし忍術も確かに使いますが」
 筧は自分のことをさらに言った。
「しかしです」
「剣や手裏剣はじゃな」
「そうしたことは他の者に劣ります」
 十勇士の他の者達に比べてだ、無論筧もそちらの方もかなりのものだ。だが義兄弟である彼等と比べると、というのだ。
「ですから」
「それでじゃ」
「はい、五行の術で戦うのが一番ですから」
「より磨くのじゃ」
 今修行して身に着けているそれをというのだ。
「よいな」
「わかりもうした」
「そうすればな」
「八卦も頭に入れたうえで」
「そうすればよい、真田殿に従い志を果たしたいならじゃ」
「そして共に同じ時で同じ場所で死ぬのなら」
「そうされよ」
 五行の術を八卦も考えつつ使っていき身に着けよというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「その様にな」
「していきまする」
 こう言ってだ、実際にだった。筧は今度は五行の術にさらに八卦の考えも頭に入れて使う様になった。そうするとさらにだった。
 術がよくなった、それでだった。
 五行の術はさらによくなった、筧は幸村と共に修行を続けていたが。
 服部は駿府において天下の動きを彼が率いる伊賀者達から聞いていた、そのうえで考える顔になり言った。
「何時かはな」
「そうなるとですか」
「棟梁は思われていましたか」
「その様に」
「うむ、後藤殿は天下の豪傑」
 こう言うのだった。
「武士であるが後藤殿が忠義を尽くす様な方はな」
「天下にそうはおらぬ」
「黒田様の様な方でもですか」
「その忠義を尽くせる方か」
「それが問題だったのですな」
「うむ」
 そうだとだ、服部は彼の家臣達に話した。
「あれだけの方故にな」
「それで、ですな」
「黒田家から離れたこともですか」
「有り得たと」
「今の様なことが」
「そうじゃ、思えば黒田様はあれで策を好まれる」
 黒田長政、後藤の主であった彼はというのだ。
「それで今のお国に入られた時も策で宇都宮家を滅ぼされておるな」
「はい、誘き出してですな」
「婚姻を申し出られて」
「そして宇都宮家を根絶やしにしました」
「あの件ですな」
「あれは後藤殿の好まれぬことだ」
 相手を誘き出してそこで不意討ちにし根絶やしにする様なことはというのだ。
「あの時でかなり不満を抱かれておった、しかも唐入りの時もある」
「黒田様が一騎打ちで敵将を倒された時ですな」
「後藤殿は助太刀されませんでしたな」
 目の前で主が生きるか死ぬかの勝負をしていたというのにだ、このことは先の話以上に天下に知られていることだ。 
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