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ハルケギニアの電気工事

作者:東風
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第06話:ヴァルファーレ紹介・父上初飛行!!

 
前書き
累計PV25000、累計ユニーク20000を超えることができました。
ありがとうございます。
早速ですが、第6話を投稿いたします。
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。 

 
 こんにちは。アルバートです。

 現在、屋敷の裏側にある訓練場に来ています。ここは、いつも僕が剣の練習をしている場所で、母上にお願いされて『ヴァルファーレ』を召喚するついでに、屋敷の人たち皆に一度に紹介してしまおうとしている所です。
 でも、心配したとおり『ヴァルファーレ』を召還したとたんに、父上も母上もみんな腰を抜かして倒れてしまいました。中には気絶している人もいるようなので、これではとても紹介出来ません。
しかし、『ヴァルファーレ』でこんな事になるのでは、『シヴァ』とか『イフリート』を召還したらどうなるのでしょうね?
 さて、このままでは話が進みません。仕方ないのでみんな纏めて回復してしまいしょう。

「『ヴァルファーレ』突然呼び出してごめんね。僕の家族達に紹介したかったんだけど、こんな状況なのでちょっと待っててね。」

 ………魔法治療実施中………。

「みんな、目が覚めた?ちゃんと驚かないでって注意していたのに、みんなそろって倒れるんだから。せっかく呼び出したのに『ヴァルファーレ』に紹介できないじゃないですか。」

「しかしだな、アルバート、これを見て驚くなという方が無理だと思うが、これはいったい何だ?」

「これなんて言わないで下さい。この子は『ヴァルファーレ』。異界という、ハルケギニアとは全く違った世界に住む幻獣で、もちろんこのハルケギニアには生息していません。東方の書では召還獣と呼ばれています。」

 ここはあくまでも、『東方の書』で誤魔化します。本当のことは言えませんからね。言っても信じられないでしょうけど。

「『ヴァルファーレ』は見ての通り、大きいとはいえ鳥のような体型をしています。でも頭も良いし風竜より早く飛ぶことも出来ます。口から火を噴くような事はありませんが、もっと強力な必殺技があるんですよ。それに父上達には聞こえないでしょうけれど僕とは声に出さず頭の中で直接話が出来るので意思の疎通もしっかり出来ます。ですから、まったく危険はないのですよ。」

「まあまあまあまあ!!。この子お話が出来るの?それは素敵ね!!でもこんなに大きいなんて本当に驚いたわ!こんな子がいるなんて聞いた事もないけど、この世界に住んでいないのなら当然よね。それにしても何処か威厳があるし迫力満点だけど、落ち着いてみればとても綺麗な目をしているのね。そう、あなた『ヴァルファーレ』というの?良い名前ね。」

 なんと言いますか、母上の順応力には恐れ入ります。もうラ・ヴァリエール公爵家のカトレアさんも生まれていると思いますが、あの天然さんと良い勝負でしょうね。メイドさん他の家臣の皆さんも何とか落ち着いたようです。

「これだけの身体に見合う戦闘力があるとすれば恐ろしい威力だろうが、その必殺技とやらを見せて貰う訳に行かないかな?」

「そうですね。此処は狭いのでお見せする事は出来ないと思います。通常技(ソニックウィング)でもこの広さでは屋敷にかなりのダメージを与えてしまうでしょうから、必殺技(シューティング・レイ)を使ったら屋敷が無くなってしまいますよ。やっぱりまずいでしょう?」

 訓練場の広さは南北500メール、東西300メール有りますが、『ヴァルファーレ』の技では狭いと言って間違いないでしょう。変な方向に発射したら、どこに被害が出るか判りませんからね。うまく訓練場の中だけで収まったとしても、当分訓練場が使えなく位のダメージは与える事になると思います。

「ここでも狭いのか?それはちょっとというレベルの話しではないな。う~む、見てみたいが、被害のことを考えると此処では止めた方が良いだろうし。」

「あなた、今日のところは止めておきましょう。近いうちに、領の端の方にあるだれも住んでいない広い場所でゆっくり見せて貰いましょうよ。」

 父上も母上もどうしてそんなに好奇心一杯なんですか?そんなに見たいのですか?領地の地形が変わっても知りませんよ。父上も母上の言葉を聞いて嬉しそうにうなずいているし、これは近いうちにお披露目が必要でしょうか?どうなっても知りませんからね。

「『ヴァルファーレ』、待たせてごめんなさい。僕の両親が君に会いたいというのでちょっと来て貰ったんだ。紹介するね。まず、こちらの男の人が僕の父上で、こちらの女の人が僕の母上です。」

「『ヴァルファーレ』と言ったか。見苦しいところを見せて済まなかった。私の息子を頼むぞ。」

「初めまして、『ヴァルファーレ』さん。宜しくお願いしますね。」

 両親の挨拶に『ヴァルファーレ』も軽く頭を下げて答えます。

「それからこちらの皆さんはこの屋敷に勤めているメイドさんと執事さん達だよ。その中でもこのアニーは僕のメイドさんだから宜しくね。」

「『ヴァルファーレ』さんて、すごいですね。見とれてしまいますわ。アニーと申します。これから宜しくお願いします。」

「今日は紹介だけだけど、その内君の力を見せて貰うことになると思うから、その時は宜しくね。」

[了解した。では、今はもう良いのか?]

「うん。もう良いよ。明日までゆっくり休んでいてね。」

 『ヴァルファーレ』は軽くうなずくと異界へと帰って行った。

「すごいな。空が割れるなんて。あの向こうが異界という所なのか?」

「そうです。人の行くことの出来ない場所ですが、あの異界には他にも色々な幻獣が住んでいるのだそうです。」

「それも東方の書に書いてあったのか?おまえの書物好きも結構役に立つということか。ところで、『ヴァルファーレ』を返す時に明日とか言っていたが、何かあるのか?」

「そうそう、アルバートは皇城に行く為に『ヴァルファーレ』を召還したと言ったけど、どうするの?」

「はい、『ヴァルファーレ』に乗って皇城まで行こうと思っています。ただ、皇城のお庭に『ヴァルファーレ』が降りても大丈夫かお聞きしたかったのです。」

「『ヴァルファーレ』にって、あの幻獣に乗っていくのか?いや、だめだ。危険すぎる。風竜より早いと言っていたが、万一落ちたりしたらどうするんだ。」

「そうよ。そんな危ないことは止めなさい。」

「でも、マンティコア隊やグリフォン隊の騎士達も幻獣に乗って、その上闘っているのですよ。それに比べれば、ただ乗って行くだけなのですから安全だと思いますが。『ヴァルファーレ』の背中はとても広いし羽毛もふさふさで長いから掴まるのも楽だと思います。」

「彼らは大人で訓練された騎士だ。おまえのような子供の力で皇城までの長時間、すっと掴まっているのは無理だ。途中で力が尽きて手を離したら落ちてしまうんだぞ。」

「『ヴァルファーレ』のスピードならそれほど時間はかかりませんよ。う~ん、どうしても落ちるのが心配なら、座席のようなものを作って『ヴァルファーレ』に着けて、その座席にベルトで僕の身体を固定すれば安全ですよね。そうすれば例え宙返りしたとしても落ちたりしません。手綱も必要ありませんから乗っているだけで良いので楽々です。」

「どんな座席を作るつもりか判らないが、そんなものを着けることが出来るのか?絶対に落ちないような装備が出来るのなら少しは安心だが、それでもやっぱり心配だ。」

「どうでしょう。明日座席を着けたら父上が一度乗って、安全かどうか確かめてくれるというのは。その上で許可を頂ければ良いのではないでしょうか?」

「たしかに、実際に乗ってみるのが一番の早道だろうな。解った、明日試乗して確かめよう。ところで皇城に直接乗り込むと言ったが、いきなりそんなことをしたら間違いなく近衛部隊に迎撃されるぞ。多分『ヴァルファーレ』にはマンティコアでもグリフォンでもかなわないとは思うが、万一おまえに直接攻撃が当たれば無事では済まないだろう。なにより皇城の上で『ヴァルファーレ』が応戦して必殺技を出したらどうなるか考えたくもない。どうしたものかな。」

「それなら、私が皇帝閣下に鷹便を送っておくわ。明日『ヴァルファーレ』にアルバートが乗って行って、昼前頃に皇城の庭に降りるって。『ヴァルファーレ』の姿や大きさなんかをいっしょに連絡しておけば、いきなり攻撃してくる事も無いでしょう。でも、本当に安全なら私も乗りたいわ。アルバート、ダメ?」

 ダメ?って。母上、本当に歳いくつですか?お願い状態の母上って、10代に見えるから凄いです。

「『ヴァルファーレ』にお願いして、近いうちに母上も乗せて貰えるようにしますから。勘弁して下さい。」

 そんなこんなで今日のところは解散となりました。これからは『ヴァルファーレ』を呼び出しても、メイドさん達もビックリして腰を抜かすようなこともなくなるでしょう。

 その後、『ヴァルファーレ』に着ける座席と安全ベルトを練金して、訓練場の側にある納屋にしまいました。魔法を使って座った人の体型に合わせて大きさが変わるように作りましたから、大人が乗ってもちゃんと身体を支えてくれるはずです。イメージとしては車のバケットシートでしょうか。
明日、『ヴァルファーレ』を呼び出したら、お願いして着けてみましょう。空を飛ぶのは生前旅客機に乗って以来ですから楽しみです。飛行機と違って直に風を切って飛ぶのは気持ちいいでしょうね。

  * * * * * * * * * * * * *

 そして、夜が明けました。今日も良い天気になりそうな雲一つない青空です。
 目が覚めて、アニーに服の着替えを手伝って貰いました。今日の服装は以前母上が作ってくれた乗馬用の丈夫な物です。革の帽子と手袋も付いています。まだ一人で馬に乗れないのに、いつか使うかもしれないと言って作ってくれましたが、思わぬ所で役に立ちました。これで父上の許可が出たら、すぐに出発できます。

 身支度が終わったら次は朝食です。
 食堂に行くともう父上と母上が席に着いていました。
 僕が席について少しすると、妹のメアリーがメイドさんに連れられて来ました。メアリーも3歳になっています。もう可愛くって仕方ありません。父上も母上もものすごい親ばかぶりですが、解りますね。どうして妹って言うのはあんなに可愛いのでしょうか。別にロリではないのですが、やっぱり特別なのでしょうね。

 みんなが揃ったので朝食開始です。今日はたっぷりのサラダにポタージュスープ、スクランブルエッグとベーコンにガーリック・トーストです。父上と母上にはミルクティー、僕とメアリーはオレンジジュースが付いています。バターを塗ったトーストとベーコンがとても美味しくて、ずいぶんたくさん食べてしまいました。
 食べ終わってお皿が片付けられると、飲み物を飲みながら昨日のことや今日の予定を話します。家族の団らんですね。メアリーは万一危険が有るといけないからと言われ、昨日は訓練場に連れてきて貰えず、何が起きたのか知りませんでしたが、僕たちの話を聞いてその場にいなかったことをとても残念がりました。

「兄様、私も『ヴァルファーレ』さんを見たかったです。今日も呼ぶのでしょう?私も『ヴァルファーレ』さんに紹介して下さい。お願いです。」

「大丈夫だよ。今日は父上に安全確認の試乗をして頂くし、時間もあるからちゃんと紹介してあげるからね。」

「有り難うございます。大きくて綺麗な鳥さんですよね。とっても楽しみです。」

 おいおい、誰が説明したか知らないけど、大きくて綺麗な鳥さん?間違っちゃいないけど………。『ヴァルファーレ』が聞いたら何て言うか?

「父上が安全だと認めてくだされば、その内一緒に背中に乗せてあげるからね。空を飛ぶのは気持ちいいと思うよ。」

「お空を飛べるのですか?すごいすごい!!絶対乗せてくださいね!」

 うわ~。目がキラキラ星になってるよ。嬉しいのは解るけど少女漫画みたいだ。
 さて、朝食も終わりましたし、そろそろ準備しましょうか。
 両親と妹を連れて訓練場に移動します。アニーに頼んでおいた手荷物の準備できていますよ。

「それでは、呼び出しを行います。もう目を回したりしないでくださいね。『ヴァルファーレ』おいで!」

 空が割れて咆哮と共に『ヴァルファーレ』が飛び出してきました。見ていたメアリーは大興奮でピョンピョン跳びはねています。こういうのは子供の方が耐性があるようですね。

「おはよう、『ヴァルファーレ』、今日は妹のメアリーも来てるんだ。この子がメアリーだよ。宜しくね。それから、僕が君に乗って飛ぶのが安全かどうか、父上が確かめたいというので、一度君に乗せてあげて欲しいんだ。良いかな?」

[我も信用がないようじゃな。しようもない、乗せてやろう。ところでどうやって乗るつもりなのかえ?]

「この座席を君の背中に固定して乗りたいんだ。少し伏せてくれるかな。」

[これでよいか?]

 『ヴァルファーレ』は体を低く伏せてくれました。
 背中に昇って座席を背中の頸の付け根付近に載せます。固定用の帯が2本有って、魔法で自由に延び縮みさせる事が出来ます。まず1本は頸の前を回し、もう1本は胸の前を回して固定します。一度座って安全ベルトの調子を確認しましょう。
 ベルトは4点式で腰の周りを固定するベルトに両肩の上から下ろして腰のベルトに固定する2本のベルトで出来ています。

「『ヴァルファーレ』痛い所とか苦しい所とかないかい?」

[大丈夫のようじゃ。飛ぶのにも邪魔にならないようじゃの。]

[良かった。それじゃあ、一度父上を乗せて飛んでみて下さい。父上はあまり飛んだ経験がないと思いますからお手柔らかにお願いしますね。」

 『ヴァルファーレ』から降りて父上の方に行きます。

「父上、準備が出来ましたので乗ってみて下さい。座席に座ったらしっかりとベルトを締めて下さいね。飛び上がってから降りるまでの指示はもう出してありますから、乗っているだけで特に何もすることはありませんから。」

「よし、それじゃ行ってくるよ。」

 父上が『ヴァルファーレ』に乗ってベルトを止めたのを確認してから、僕は『ヴァルファーレ』に飛び上がるように言いました。

「『ヴァルファーレ』屋敷の上空を一周してきて下さい。」

[了解じゃ。]

 『ヴァルファーレ』が離陸しました。 
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