提督していない提督による騒がしい日常
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横須賀の秘密、「B-8Alt」
前書き
読み方はビーエイトアルトです
ビーハチでもないし
正体は伊8じゃあないですからね
ー飛龍ー
「アルー!!」
いまの時刻は朝の8時、朝食と朝礼が終わり、各々が出撃の準備をしている頃
私は誰も居ない(妖精を除く)はずの倉庫で1人叫んでいた
私が叫ぶと奥の方からひょこひょこと黒い物体が跳びながら近づいてくる
なぜか妖精を連れているが、遊んでたのかどうかわからないが...
「アル、ご飯食べに行くよ」
アル、そう呼ばれた"黒い"生き物が私の肩へと飛び乗った
この黒い生き物の正式名称は
「B-8Alt」という
海域攻略中になぜか海に浮かんでいた
見たくれからして深海から生まれた生き物なのだが、いろいろと気がかりなことがあり
サイズは手のひらサイズですこしだけ丸っこい、それに目と体の半分程を占めるほどの口がある
それに自らの意思で海に潜ることも可能だった
だが、これはまだ理解はできた、普通の生き物にもあることだからだ
しかし、アルの食べるものは明らかにおかしかった
味方のはずの、沈んだ深海棲艦を喰らうのだ
艤装も基盤となる体も何もかも、残さずに、だ
それにアルには艤装が存在する
というより、出現させる
喰らった深海棲艦の強さを一部引き継いで、自身に反映する
その1部というのはほんの一部で誤差程度しか増加しないのだが
重要な点はそこではない
上がる性能に限界がない
いくらでも上がり続けるのだ
アルの出す艤装は本体の見た目とは裏腹に艦娘に酷似している
試しに私たち艦娘が装備しようとすると激しい頭痛と共に拒否され、弾かれる
次に憲兵が装備しようとしたが、前述と同じ結果となった
提督が装備しようとすると...
すんなりと馴染んだ
司令タイプに順応するのかと思い、他の提督を呼んでみたが、結果は拒絶だった
私達の提督だけが装備できるようだった
艤装としての機能はあるが当初はまだ何一つ喰わせていなかったので駆逐を大きく下回るような性能だ
どっかのモグラには悪いがスロットすらなく、残念な性能だった
深海棲艦を糧とすることを知ってから、ひたすら喰わせ続けた
限界がないのは最近知ったばかりだ
喰わせ続けてはや1年、現在はこんなのだ
耐久560
火力302
装甲254
回避156
対空138
対潜125
雷装246
搭載154
運1
速力超高速
スロット6
圧倒的である
正直どの深海棲艦にも負けないだろう性能を誇るが
燃料、弾薬が恐ろしい勢いで減っていく
まあ、それが妥当なのだが
まだ上がる、4桁も夢では無いのだから
「よしっ、行こうか」
私はアルを肩に乗せて遠い水平線の先に消えていった
ー提督ー
「眠みぃ」
俺は自分以外誰もいない執務室で1人暇を持て余していた
時間は朝、ちょうど飛龍達が出撃したぐらいだ
執務?知らんな
「んー、やることねぇし出撃書類ぐらいは処理しといてやるか」
俺はしぶしぶ椅子から離れ、書類をすることにした
ぼけーっとしながら執務をしていると外がなにやら騒がしい
なにごとかと思い、窓から顔を覗かせる
門で憲兵と誰かが言い争っている
「うーん、どっかで見たことあるなぁ、あいつ」
俺は執務室から出て、門へと向かった
近くにいくにつれて喧騒が聞こえるようになってきた
「やっぱりか...」
俺は眉間を軽く抑えながら迎えに行ってやった
「あぁー!!彰人!!」
「あ、久保さん、どうにかしてくださいよこの人...」
なにをやってんだこいつは...
「いいよ、通してやってくれ」
俺は口添えをしてそいつを通してやる
「今回は何のようだよ、白崎」
一応説明しておくが、こいつは白崎 楓
がさつでうるせぇやつだが戸籍上は女だ
「暇だから来てやったのよ」
「俺は暇だけど暇じゃねぇし呼んでねぇ」
俺は踵を返し、鎮守府へと戻っていく
「ちょ、置いてくなし!!」
パタパタと後ろをついてきた
「彩は今日は連れてきてねぇのか」
「うん、聞いてみたけど寝てるって」
俺はポケットから携帯を取り出して操作を始めた
「あ、彩?今日なんか楓来てるんだけどおまえも来....即答かよ」
「えっ!?彩呼んだの!?」
それに頷き、門の警備をしてる憲兵にそのうち来るだろうとのことを伝える
「えーっと...立川 彩乃...さんでいいんですね?了解しました」
今度こそ元来た道を引き返して鎮守府に戻った
執務室へと通した楓に問いかける
「今日何しに来た?」
「なんにも考えてない」
俺は呆れてため息が出た
「よし、じゃあ3つ選択肢をやろう、一つ目、大淀の講座という名の愚痴聞き」
「うわっ、まともじゃねぇ」
「黙ってきけ、二つ目はロマンのための実験、最後の三つ目はとある駆逐艦達と追いかけっこ」
「どうせなら私は三つ目を選ぶぜ!!」
ふむ、1番酷なのを選んだな、こいつ
通信機を取って鎮守府全体に連絡を入れる
「島風、雪風、時津風、以下の駆逐艦3名は至急執務室へと」
そこまで言うとドアが勢いよく開いた
「なになにー?提督ー!!」
「なんですか司令ー?」
「時津風になにか御用?」
言い切る前に3人が揃った
「えっと、新しい遊び相手、白崎 楓ってやつ」
「よ、よろしくね?」
3人ははしゃぎながら白崎を連れて出ていった
「飛龍、そっちはどう?」
通信を切り替えて飛龍に繋ぐ
『ん、特に無いよー』
「そっか、アルにいいもん食わしてやれよ」
『あいあーい』
通信を切って外を見る
また憲兵が誰かと話している
あ、通した
「あいついつも来るの早いよな」
俺は玄関まで迎えに行った
「よお」
「や」
執務室へと向かう途中で居酒屋鳳翔に向かった
「おっす、飯食いに来た」
「あら、提督いらっしゃい、その方は?」
「あ、私?立川 彩乃と言います、よろしくお願いします」
立川は丁寧に頭を下げて礼をする
鳳翔も立川に釣られて頭を下げた
この際正直に言おう、立川と白崎は完全な真逆だ
凸凹コンビってやつか?まあ面白いからいいんだけどよ
「提督に立川さんはなにをお食べになります?」
鳳翔は割烹着を着付けながら注文を聞く
「じゃあいつもので、あ 彩メニューはねぇぞ、食いたいもん言ってみろ」
「えっ、じゃあ久保くんと同じのください」
鳳翔はにこやかに微笑むと厨房へと姿を消した
「そういえばいつものってなに?」
「それは出てきてからのお楽しみだ」
「それと楓は?」
「いまは駆逐と遊んでるよ」
俺はお冷を入れながら答える
さて、そろそろ飛龍達が帰ってくるころかな
そんなことを考えてると戸が開く音がした
「帰ってきたよー、鳳翔さーん、いつものー」
飛龍達がちょうど帰ってきた
「やっぱりここにいたんだ」
蒼龍は呆れた顔でのれんをくぐってきた
「あぁ、おかえり、どうだった?」
「いつも通りだよ」
飛龍は隣に座って中途半端に残っていた俺のお冷を飲む
しばらく話していると奥から鳳翔が皿を持ってきた
「提督と立川さんの分...と、飛龍は待ってね、蒼龍はどうする?」
一足早く前に豚の角煮が置かれた
「久保くんのいつものって角煮なんだねぇ」
彩はそういって角煮を口に運ぶ
「おいしー!!なにこれ!?」
「角煮だ」
「角煮よ」
「角煮だね」
俺、鳳翔、飛龍の順に答える
うん、うめぇ、変わらぬ味だ
口に入れた角煮を咀嚼しながらこの後のことを考えていた
なにしようかな、特になんもすることねぇんだよな
楓のやつ迎えに行ってやるか
「彩、それ食い終わったら楓のやつ迎えに行くぞ」
「ほはっは」
モキュモキュと口に含みながら彩は答えた
「...落ち着いて食べろ、喉詰まらすぞ」
彩が食べ終わるのを待ち、終わるのを確認してから楓を迎えに行く
楓捜索は思いもよらず難航したが、ようやく見つけることができた
「なんつーところまで走ってんだ」
俺がいつも釣りをするポイントの灯台下で力尽きていた
「ぜぇ...はぁ...はぁ...きっつい...」
「まああの中で1番キツイのだからな」
顔を上げた楓は俺の隣にいる彩に意味もない質問を投げかける
「彩は何しに来たの...?」
息を整えながら話している
「んー、特に考えてなかったな」
だろうな...
こいつらがいつも鎮守府に来てる時も何をするか考えてもなくここに来る
まあそれはそれでいいんだけどよ
「よし、じゃあ他言しないならいいもん見せてやる」
「「いいものって?」」
「いいものというより秘密の物だけどな」
俺は後を付いてくるよう促して、倉庫に向かった
倉庫に着き、厚い倉庫の扉を開く
うっわ、暑...
密閉されているわけではなかったのだが如何せん暑い
「妖精達、冷却装置つけてくれねぇか?」
そう呼びかけると近くにいた妖精はビシッと敬礼してからそそくさと物陰に消えていった
すこしして倉庫が涼しくなり、過ごしやすくなったので話しを始める
「さて、こっから先は絶対に他言無用、その約束が守れないなら見せられない」
いいか?と再度確認をとると
「わかった」
「約束する」
と言ってくれた
「なら見せよう、アル!!」
「ヨンダ?」
「ぬおっ!?」
名前を呼んだ瞬間に俺の肩から顔を出した
予想外の登場の仕方にびっくりしたが気を取り直して説明を始める
「えっとこいつはアルっていうんだ、なんか今人になってるけど...アル戻ってみて」
「ワカッタ」
アルの体が光ってからいつもの見慣れた小さな生命体の姿になった
「えっ、えっ?ど、どうゆうこと?」
「その小さいのがあの子で、あの子が小さいので...」
「理解できないのは分かる、けど落ち着け」
アルは深海生まれで、人へと変化するとヲ級にとても似ている姿になる
頭の発着艦部分がない感じだ
「アル、もういいぞ」
そういうと光を発して、また人の姿へと戻る
「えー...と?アルちゃん?」
「ソウ、アッテル」
アルは微笑みながら答える
深海棲艦に酷似しているが違う点はさっきやった通り表情はあるし感情もある
「マスター、コノコテキセイアリソウ」
アルはそういって彩を指さす
「適正が?...本気で?」
アルはコクリと頷く
「適正って、なんの?」
彩は何のことかわからずに首を傾げている
「試すなら試してみろ、彩に言ってからな」
俺はアルの本能を信じて自分でやらせてみることにした
「ネェ、テキセイタメシテミル?」
「適正?だからなんの適性なの?」
「こいつと合うかの適正だよ」
一応フォローはする、まだアルは言葉が足りないからだ
「アルちゃんはいいの?私なんかで」
「ダイジョウブ、タメスダケ」
「そ、そうなの?ならいいけど...」
「アル、重要なこと言い忘れてるぞ」
忘れている部分があったのでそこもフォローはしとく
「シッパイスルト、アタマイタクナッタリシチャウケド、イイ?」
「それくらいなら全然...いいよ」
彩も少しくらい疑ってもいいとおもうんだけどなぁ
「ちなみに言うけど適正が皆無だと頭割れるくらい痛てぇからな」
アルが感じたなら皆無ってことはないだろうけど
「大丈夫、頑張る」
「そっか、じゃあアル、試してみろ」
そう言うとアルは頷き、彩の手を取る
基本的にアルと同調している俺の頭の中にも澄んだ声のアナウンスが聞こえる
『同調、開始』
第1、グリーン
第2、グリーン
第3、グリーン
第4、グリーン
第5、レッド
『同調可能、自我を失う可能性アリ』
『実行しますか?』
「シナイ」
『了解、同調終了』
終了した途端に彩は汗をかきながら地面に座り込んだ
「ん、すこし足んなかった様だな」
俺は彩に手を差し出しながら声をかける
「タリナイ、ジガガヨワイ」
他人の意識を入れると拒絶反応が出て、自我を失うタイプのようだ
「彩と楓は風呂にでも行ってこい、服は...飛龍と蒼龍のでいいか?」
俺は頭の上に飛来している烈風に指示を出して、2人には付いていくよう促した
「やっぱり俺しかできないのか?アル」
「イママデミテキタナカデ、マスターイジョウノテキセイハイナイ」
「そっか、まあいいよ」
居たとしても俺以外に出させるわけにはいかないからな
「俺は戻るけどアルは来るか?」
「ホウショウ、イキタイ」
完全にハマりやがって...
「じゃあ行くぞ、そろそろ夕方だし」
アルを連れて、倉庫を後にした
あの後、アルが倉庫に戻り、いつも通り飛龍と蒼龍と部屋でのんびりしていると
「アルって変わってるよね」
と蒼龍が言い出した
「なんだ?いきなり、ここに変わってないやつなんていねぇだろ?元々」
「あれ?私まで変わり者になってるよ?」
自分は普通だと思っていたらしい
「まあ確かに、見た目は深海棲艦なのに艦娘側の艤装は出せるし、普通にご飯食べてるしね」
飛龍が同意する
「いいんじゃねぇか?ここでは変わってるくらいが丁度いいんだよ」
そう言って俺は立ち上がる
「あれ?どこ行くの?」
「...イベントやんの忘れてた」
「「ご愁傷さま、おやすみ」」
2人は息を揃えて同じ言葉を言い、1組の布団に入った
ご丁寧に真ん中を開けて
「さすがに眠いけどやりたいから回さんとな...」
俺はぶつくさ小言を言いながら部屋を出ていった
後書き
秘密とか言いながら教えちゃう軽い提督です
まあ想像つきますよね?
うちの提督、出撃できます
それにあのステータス、まだ上がりますしね
次回、深海棲艦、死す!!デュエルスタンバイ!!
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