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真田十勇士

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巻ノ九十六 雑賀孫市その十四

「大坂におれば都や奈良の入口であり西国全体のものが集まるな」
「それがあり太閤様もこの地に城を築かれました」
「そして天下を治められました」
「そのことから見てもですな」
「幕府は大坂が欲しいのですか」
「幕府は江戸と大坂から天下を治めるつもりじゃ」
 この二つの場所からというのだ。
「江戸で東国、大坂で西国。そして大坂に集まる富も手に入れたいのじゃ」
「それで天下の政を磐石にするのが本意であり」
「豊臣家を滅ぼすまでは考えておりませぬか」
「欲しいのはあくまで地」
「大坂の城と三国ですか」
「大坂から出れば豊臣家には力はない」
 それで完全にというのだ。
「大坂城がなければわかるな」
「天下の名城ですからな、この城は」
「この城から出ればです」
「まさに豊臣家は無力です」
「何の力もありませぬ」
「大御所様は無体な方ではない」
 片桐は家康の話もした。
「あの方はな、それは御主達も知っていよう」
「はい、あの方はそうした方です」
「血を好まれる方ではありませぬ」
「無闇なことはされぬ方です」
「そうした方なのは事実です」
「そうじゃ、だからな」
 それでとだ、片桐は彼の家臣達にさらに話した。
「我等が大坂城から出て他の国に移れば」
「それでよい」
「もう後は何もされませぬか」
「そうじゃ、茶々様は江戸に入られることになると思うがな」
 片桐はこの読みも話した。
「これは他の大名もそうしておろう」
「ですな、次第に」
「そのうえで大名の方々に領国と江戸を行き来する様にされてますな」
「そうした考えの様ですな」
「幕府としては」
「それはそうさせられる」
 茶々、彼女はというのだ。
「他の大名達と同じじゃ、しかし大名であってもな」
「別格ですな」
「百万石の前田家以上の格で遇してもらえますな」
「家柄としては」
「その様に」
「だからお拾様に千姫様を嫁がせて下さったのじゃ」
 家康はというのだ。
「ならば決して無体にされぬ」
「そうした風に遇して頂いて」
「これからもですな」
「確かに扱ってくれますか」
「国持大名として」
「そうして下さる、家を残すことを考えるべきじゃ」
 豊臣家としてはというのだ。
「絶対にな、ではな」
「はい、それでは」
「我等も及ばずながら尽力致します」
「そして豊臣家を救いましょう」
「家を残しましょう」
 家臣達も片桐に口々に言った、そして彼に誓うのだった。 
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