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真田十勇士

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巻ノ九十四 前田慶次その三

「切支丹を禁じる」
「そうされますか」
「あの教えはよい」
 切支丹、即ち耶蘇教のそれはというのだ。
「わしも少し読んだがな」
「それはですな」
「別に構わぬ、しかし他の教えを認めずあまつさえじゃ」
「民を奴婢にして他国に売り飛ばすなぞ」
「断じて許せぬ」
「だからこそですな」
「切支丹はな」
「このままではですな」
「禁じる、それも強くじゃ」
 こうまで言うのだった。
「そしてそのうえでじゃ」
「天下も民も守りますな」
「そうする、これを破るならば」
「その時はですな」
「誰であろうと罰する」
 やはり強い声で言ったのだった。
「そうしようぞ」
「さすれば」
「そのことも考えていくとしよう」
「わかり申した」
「これも政じゃ」
 教えのことを考えることもというのだ。
「確かにしてな」
「天下も民もですな」
「守ろうぞ」
「これに反するならば」
「兵を起こしてでもじゃ」
 そうしたことをしてもというのだ。
「防ぐ」
「そうでもしないとですな」
「天下は危ういからのう」 
 こう言うのだった、駿府において。そのうえで天下の政を見ていくのだった。
 幸村もまた天下を見ていた、しかし彼はそうしたことは見ていても重くを置いてはいなかった、今の彼はというと。
 天下の豪傑達を探し続けていた、そしてこの度も豪傑の一人を見付けてだった。伊佐に対して声をかけた。
「御主じゃ」
「次はですね」
「うむ、行き先は米沢じゃ」
「米沢といいますと」
「あそこには誰がおるか知っておるな」
「上杉殿が、そして」
「うむ、前田慶次殿もじゃ」
 彼もというのだ。
「おられる」
「そしてですな」
「御主を前田殿に会わせたい」
 幸村は伊佐に確かな声で言った。
「よいな」
「それでは」
 伊佐はいつもの穏やかな声で応えた。
「米沢まで」
「行こうぞ、それでじゃが」
「はい、それでもですな」
「うむ、前田殿は槍じゃが」
「しかしそれがしは錫杖です」
 使う武器はというのだ。 
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