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真田十勇士

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巻ノ九十四 前田慶次その二

「そしてその為にはな」
「策もですな」
「用いられますな」
「そうする、御主達の知恵も借りる」
 ここでだ、家康は崇伝と正純を見た。駿府にまで連れてきた家康にとっては知恵袋である者達である。
「その為にはどんな策でもよい」
「はい、しかし」
 ここで崇伝が家康に言った。
「拙僧達も策を出しますが」
「それ以上にか」
「茶々様は政のことが何もわかっておられませぬ故」
「あちらからか」
「失策を犯されて」
「そこからか」
「立ち退くこともあるかと」
「それならそれでよい」
 家康もこう答えた。
「汚い策を使えばな」
「それが天下のあらゆる者に見られて」
「幕府の評判を落とす」
 このことを危惧して言うのだった。
「だからな」
「それよりもですか」
「うむ、茶々殿がしくじられればな」
「それでよしですか」
「そうじゃ、そして崇伝ついでに聞くが」
「何でしょうか」
「御主切支丹をどう思うか」
 彼等についてだ、家康は崇伝に問うた。
「一体」
「はい、普通にしていれば拙僧もです」
「神社と同じくじゃな」
「何も問題はないと思いますが」
「しかしじゃな」
「あの者達は自分達以外の教えを認めず」
 崇伝は家康に剣呑な顔で話した、切支丹達のことを。
「仏閣も神社も壊しです」
「僧侶も神主もじゃな」
「攻めますので」
「置いておってはいらぬ災いの元となるな」
「あれでは挙句殺しまでしかねませぬ」
 崇伝の剣呑な顔はそのままだった。
「ましてやです」
「うむ、民をな」
「奴婢として売り他の国でこき使うなぞ」
「以ての他じゃ」
「拙僧はこの話を聞いて仰天しました」
 崇伝には考えられないことだからだ、少なくとも彼にはそうした考えは一切ない故に。
「それは放っておいてはです」
「民達が苦しむ」
「あってはなりませぬ」
「わしも太閤様のお傍でその話を聞いて驚いたわ」
 実際に家康もこの話を知っていた、彼にとっても信じられないことだった。
「まさかな」
「その様なことをするとは」
「うむ、これは放ってはおけぬ」
「では」
「暫く様子を見るが」
「行いが変わらないのなら」
「その時はじゃ」
 家康は強い声で言った。 
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