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真田十勇士

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巻ノ九十二 時を待つ男その一

                 巻ノ九十二  時を待つ男
 幸村は望月に言った。
「御主にも会ってもらいたい方がおってな」
「その御仁は」
「立花殿じゃ」
 立花宗茂、彼だというのだ。
「あの方のところに連れて行きたいが」
「あの方にですか」
「あの方は様々な武芸を使われるが」
「特にですか」
「拳や柔術が特に得意でな」
「それがしと同じですな」
 望月も同じだ、体術を最も得意としている。そして拳や柔術での戦いは刀や手裏剣を使う場合よりも得意なのだ。
 だからだ、幸村も言うのだ。
「それでじゃ」
「それがしは、ですか」
「立花殿のところに行くか」
「はい」
 一言でだ、望月は幸村に答えた。
「さすれば」
「そうか、ではすぐに九州まで行くぞ」
「あの方は確か」
「関ヶ原で治部殿につかれてな」
「それで、でしたな」
「お取り潰しとなった」
 そうなったのだ、そのことを処罰されてだ。
「そして今は許されて晴れてな」
「大名に返り咲かれましたな」
「陸奥棚倉にな」
「その才を惜しまれてとか」
「右府殿は人も情も知っておられる方じゃ」
 家康のこともだ、幸村は話した。
「だからな」
「あの方の才を惜しまれ」
「そしてじゃ」
「大名に戻されましたか」
「加藤殿は召し抱えようとされておった」
 加藤清正はというのだ、今は熊本を治める彼はだ。
「しかし立花殿がどうしても首を縦に振られず」
「召し抱えることは出来ませんでしたな」
「そして食客として遇しておられた」
「そうしたことでしたな」
「しかし晴れてな」
「大名に返り咲かれ」
「今はそこにおられる」
 陸奥棚倉にというのだ。
「そこにな」
「そして我等は」
「これからそこに行く」
「わかりました」
「遠いが真田の忍道を通ってじゃ」
 いつも彼等が天下を行き来する時に使う彼等だけが知っているこの道をというのだ。
「行くぞ」
「わかりました」
「そうすれば陸奥もじゃ」 
 九度山から遠いこの場所もというのだ。 
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