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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  番外編 第1話 ハートな剣で大パニック♪

 
前書き
~一言~
またまた、寄り道してしまってすみません……。
本編はちょっと色々と考えては消しを繰り返してしまって遅れ気味になってしまってて、その息抜きで番外編を書いてたら、とりあえず途中まで出来ちゃったので 投稿したいと思います……。

今回は少々文字数が少なめになってますが…… 番外編なのでお許しを……。
元ネタは、コミックアンソロジーです。

そして、この小説を読んでくださってありがとうございます! これからも頑張ります!
速く……本編に行ける様に…… 

 
~ALO リズベット武具店~


 時刻はPM23:55 もう少しで日付が変わる時間帯。

 深夜は人通りが少なくなる~ なんて事は基本的にこの世界ではない。
 現実世界では本業が学生だったり、朝からの仕事をしている人達であれば、流石に夜は眠る為にログアウトするかもしれないが、それでも深夜型のプレイヤーも多数いる為、今尚 人気が高いALO内において インしていないプレイヤーがいない時間帯など殆ど無いと言っていい。

 それでもいつもより静かなのは確かで、リズベット武具店も今の時間帯は基本的にクローズにしている。NPC店員に任せると言った手段もあるが、リズはしていなかった。

 そんな誰もいない店内で張り切る声が聞こえてくる。

「よぉーし、いっちょやってみようじゃないの!」

 それは勿論店主のリズのもの。両頬をぱちんっ! と叩いて気合を入れている様だ。
 
「むふふっ、まぁ 色々あるけど、純粋に鍛冶職人(マスタースミス)として、この情報はありがたいのなんのってトコねっ。アルゴ様様だわ」

 ぐるんぐるん、と腕を回した後に、鍛冶ハンマーをぎゅっ と持つリズ。
 
「それにしても、特典の1つが成功率の向上って言うのはほんと、おいしいわね。本来の(・・・)目標が外れたとしても十分おいしいしー! なんなら古代武器(エンシェント・ウェポン)をやる時に訊いてたら良かったかしら?」

 苦笑いをしつつも、早速必要素材、鉱石類をメニューから取り出して作業にかかった。










 リズがアルゴに聞いた、と言うのは因みにさかのぼる事数日前の事。

『今週のアルゴオネーサンのお得情報ダヨ~。寄っとイデ、見とイデ~』
『って何やってんのよ。ここにはあたししかいないし、あたしに様があるの? アルゴ』

 それはそれは、珍しいツーショットだった。リズとアルゴの2人しかいない場面は本当に珍しく、旧SAOを含めても両手で数える程もなかったと思える。
 そんな2人が一緒になったのは、本当に偶然だった。この後 リーファとアスナ、シリカ、シノンと一緒にクエストに行く予定があって待ち合わせをしている時にアルゴと出会ったのだ。

『マーマー、固イ事イイっこ無しダヨ。ほんとにお得情報ナンダ』
『へー、まぁ アンタの情報は随分と価値があるから、興味津々なんだけど……、ちょっと今持ち合わせが無くて』

 リズはしかめっ面をしながら指を振るってステータス画面の端に表示されている残金を確認した。色々と散財したせいもあって、0がいくらか少なくなっていると言う寂しい状態になっているのだ。

『ニシシっ 今回はお代ハ 結構ダヨ。何せ、入荷したてホヤホヤの情報ダカラ』
『えっ!?』

 リズは、画面から目を離してアルゴを見た。
 その笑顔に何処となく裏を感じてしまうのは誰しもが共通する事だろう。中でもリュウキだったら、一発で訝しむ筈だ。

『……甘い話には裏がある、って言うしねぇ、甘いのはスイーツだけで十分なんだけどなぁ』
『マっ、リズっちならそう言うって思ってたヨ。何せ、リューとも付き合い長いダロウし』
『あー……、確かに リュウキだったらかなり警戒するわよねぇ。特にアンタのだったら最初は』
『ウ~ム……、それは少しばカリ、寂しイ所なんだ。オネーサン』

 リュウキに冷たくされてしまう(様に見える)のは アルゴにとっても大ダメージの様だ。
 何せ、アルゴとリュウキの付き合いは、いつもの顔なじみの皆を含めてもトップクラス。レイナを除いたら、キリトやアスナに次ぐとも言われている程だから。
 そんな長らく連れ添った情報戦においては相棒とも言える間柄の相手にぞんざいな対応をされてしまったら、やはり来るものがあるのだろう。

『自業自得な所も多いと思うけど? リュウキにも色々聞いたし、そもそも《白銀の~》伝説はアルゴが元って言うじゃない。……そりゃー、アイツだったら怒るわ。あのシャイボーイだったらさ』

 両手を左右に広げて 首を振るリズ。
 当時の事は知らないが、それでもその名残が残るリュウキの性質。それは目立つ事は極力好まなく、注目されると恥ずかしがる所。
 ソロ時代はそれが顕著に出ていた様で、遭遇率が 何処かのRPGの経験値をわんさかくれるレアモンスターに匹敵するとさえ言われていたのだ。

『ウゥ……、そ、それは置いといてダナ! この情報はリューにも相談したがガ、お墨付きを貰っダんだ。訊いた後で確認を取ると良いヨ』
『へぇ……』

 それは 俄然信憑性が増した言葉だった。
 アルゴの情報もトップクラスに優秀なのに、そこにリュウキ推奨とも取れば、最早間違いないと言っていいから。

『それでその内容がネ。鍛冶職人(マスタースミス)限定なんダヨ。だから、リズっちに言うんダ。まだ試せてないカラな』
『ほっほー、つまり あたしで実験台にしようって事? 情報の真偽を更に深める為に? やっぱ抜け目ないわねー』

 リズの言葉にアルゴは大笑いをした。

『アーハッハハっ! そーんな事は無いサー! 考えてもみてクレ。リューにお墨付きをもらったダケデモ、価値は鰻登りナンダゾ? そんな今更メンドーな事しないヨ。タダ、じょーけんが少しバカリあって。オレっちにしてはそっちが重要ナンダ』
『へー 条件? なになに?』

 この時点でリズは、アルゴの言葉に疑惑の類は一切頭から離れていた。
 リュウキとコンタクトを取れば、この真偽は直ぐにでも判る。そして アルゴがまたリュウキの不利益になる様な事を 色んな意味で反感を買うような真似をするとは思えないから。

 だが、その次のアルゴの言葉を訊いて 思いっきり動揺してしまう事になる。

『ムっフフ~。リズっち。覚えてないカイ? ほら、昔々~ キー坊の取ってキテくれた素材で、武器を作ったら あ~ら不思議。ラブリーな形の剣になった事っ』
『っっっ!!!』

 思わずがたっ! と身体を跳ね起こすリズ。

 それは、遠いあの日の思い出。
 アスナやレイナ、キリト、それにリュウキも一緒に巻き込まれた? 事件。(正直 事件と呼ぶのは極一部だが)
 
 その内容については……後ほど説明しよう。だが、この事には正直リズは看破出来ない。

『ちょーっとまった! なんでアンタが知ってんのよ! 幾らアインクラッド1の情報屋と言えども、あんな事まで知ってるなんて、プライバシーの侵害でしょー!』
『ムフフっ オレっちに知ラナイ事は無いノダ♪』

 小馬鹿にした笑いとその笑顔に 少々イラっ と来たのはリズ。

『あっそー……、リュウキに言っちゃおうかなぁ~? まーたアルゴが妙な情報で商売しようとしてるって』
『それは ちょっと待つんダ! リズっち! ステイっ! ジャスト ア モーメントだ。 コレにはリズっちにも益が断然あるんダゾ?』

 リズがそういう事くらいは 先読みしているのはアルゴだ。
 下手な英語を使ったり、少々慌てた様子はあったものの、淀みなく返していた。……少しでも慌てている、と言う事は万が一にでもリュウキの耳に入っちゃマズイ、と思っているからだろう。
 
『むー、何だか納得いかないけど……、良いでしょ。あの件を知ってて、今回の情報の話。……訊く前から確かに有益な香りがプンプンするし』

 色々と羞恥が頭の中を過ぎったリズだったが、よくよく考えてみると、非常に今回の情報はよろしい物である事を直ぐに連想する事が出来た様子。その辺りの頭の回転の速さは流石だと言えるだろう。


あれ(・・)を作る事が出来るかもしれない、って事? その類の情報でしょ? ってか、リュウキが返事をするとはねー。……いや、別におかしくはないか』
『そーサ。何せ、レーちゃんやアーちゃんが暴走しかけたダケだしナ。リューが巻き込まレタ? と言われれバ、首を横に振ルヨ』
『ほんっと、よーく知ってる事』

 リズは呆れながらそうった。

 因みに アルゴが情報を入手する時に使用する猫の使い魔《キー坊》がここでも威力を発揮しているだけだと言う事をここでネタバレしておこう。
 仮に判ったとしても、俊敏な猫を捉える事は非常に難しく、何より少しぶっきらぼうだが、それとなく可愛さを持ち合わせている黒猫に危害を加える様な輩の所には寄越してないから大丈夫だったりするのだ。

『兎も角ダ。説明をするト、明日の丁度深夜0時キッカリに、コノ《神秘の秘薬》を使い、剣を作ったら、成功スルらしい。成功率とかは、まだまだ統計を取ッテ無いから 判らないが、確率は高いダロウ。後金属素材(インゴット)もソレなりに良いヤツを使用した方が良い、っていう情報もアル。この変は真偽は定かではないガ』
『ちょい待ち。あたし以外にも試した人がいたりするの? 統計を~って言ってる時点で絶対に他にいるんでしょ? これ』
『モチだ。ダガ、スキル値が皆低いのが殆どで 形と性能は成功したらしイガ、本家と比べたラ、持続効果が雲泥の差。攻撃力も低イし 殆ど一瞬なら大して使い道が無いダロ?』
『なーる。そこでリズさんの出番ってわけね。よーし! あたしにいっちょまっかせーなさい! ばっちりと、あの時(・・・)の源○パイの剣を作っちゃる!』

 気合が更に入るのはリズ。
 何だかんだで、あの時は楽しかった。ネタ武器としても面白いと言う事もあり、少々意地が悪いが、慌てるレイナやアスナを見るのも楽しい。

 それに何より、素直な自分自身とまた会えるのも悪くないとリズは思った。……たまには自分自身に素直になったとしても、悪いものじゃない。

『オオー。頼もしいナァ、リズっち! まっかせタ!』
『まっかせーなさーい!』

 どんっ、と胸を張るリズ。そしてその日はアルゴとは別れた。




 ここで、少し説明をしておこう。



 旧アインクラッドでの出来事を。
 キリトが珍しい鉱石をドロップした事から話が始まった。
 それはアルゴに訊いてもリュウキに訊いても、まだ判明した事の無い鉱石であり、アインクラッド初ドロップと言っても良い鉱石。
 
『リズ! これで凄いヤツ作ってくれ!』

 と訪れて二言目には依頼をしていた。
 頼ってくれる事はリズにとっては嬉しいし、キリトの顔を見れて良かったんだけど、やっぱりそれなりに拭えない部分があったりもする。アスナがキリトを想ってる事も キリトもまんざらではなさそうな所も知っていたから。 
 でも、まだゴールインは出来ていない。レイナも言わずもがな。

 リズは、色々な想いを頭の上に浮かべて……(主にキリトの事) ばしっ と成功させたら 出来上がったのは源○パイみたいな……、ハートの形をした剣だった。

 色々とひかれてしまったが、その効果が本当にやばかった。

 キリトがクラインに訳あってその剣でツッコミを入れた所。

『キリトぉ~♡ 実はよぉ。オレ リュウキだけじゃなく、お前の顔だって好みなんだぜ? ……だからよぉ、あん時みてぇな残念そうな顔すんなよぉ? マジで好みなんだ。お前ら同列なんだ♡』

 と、頬にハートの形をオブジェクトが浮かび上がって……、漫画みたいな展開になってしまったのだ。
 その後『一回だけ! 一回だけ!!』と訳が判ってはいけないであろう単語を繰り返し、追いかけてきて、その内にたまたま街に出てきていたリュウキと遭遇。

『ふぉぉぉーーー!! リュウキじゃねぇかぁぁ♡ 愛してるぜぇぇ♡』

 と目まで♡に変えて突撃してきた。
 いつも冷静沈着なリュウキだったのだが……、この時ばかりは眼を白黒させていた。
 けれど、素早い体術スキル《閃打》をカウンター気味に炸裂させて悶絶させた所でキリトと一緒に逃げた。

 それで、リズやらと色々協議をしてみると『この剣で攻撃したら惚れさせる様な効果があるのでは?』と言う結論に至る。

 そんな事ありえるのか? と誰もが思ったが人間の脳を支配していると言ってもいい仮想世界。前頭葉でも麻痺させる電波でも流されたり……とまったく有り得ない話じゃないから、気味が悪いが、クエストスタートの前振りの可能性だって大いにあり得る。

 だから、キリトが盛り上がり、リュウキも何だかんだ言いつつも付き合って、色々と調査を開始したのだ。

『レイー? リュウキ行っちゃったけど、追っかけなくて良いの?』
『ふえっ!? だ、だいじょーぶ、だいじょーぶだから!』

 想いが通じ合った2人だけど、やっぱりそれなりに恥ずかしさはあるから大っぴらには出来ないとの事。……それでも客観的に視たら十分過ぎる程イチャコラ(リズ語)してるけど。

『ほーら、ちゅー くらいしたらどーなの? もっともっとさぁ(羨ましい!!!)』
『や、やめてよー、リズさんっ!』
『ふふっ、ほんっと妬けちゃうからねー。2人を見てたら。レイはもっともっとぐいぐい行くべきだと思うよ? まだまだリュウキ君は鈍感さんだからさ?』
『うぅ…… おねぇちゃんまでぇ……』

 顔を赤くさせて、しゅうぅ……とさせてるレイナを見てやっぱり可愛らしいと思ってしまう。

『ほら、この剣を使ってリュウキを叩いてみたら、レイの事もっと求めてっ……て あっ』

 リズが、その例の剣をぶんぶんと振っていたら、手元を誤って離してしまい……それがレイナの頭に激突。

『わぁっっ!!』

 結構大きな音がなってしまったが、圏内では特にダメージは気にしない。
 でも、気になる部分は大いにある。

『あいたた………』

 頭を摩っているレイナ。
 まだ、頬の部分は位置的に見えないが、それでも これからどーなるのか心配だ。色んな意味で……。

『わ、わぁ や、やばいよ! アスナっ! どーすんのっ これっっ』
『り、リズのせいじゃん! で、でも レイとリズがそんな関係になったら、わたし……ドキドキ』
『きょーみしんしんって顔するんじゃないわよー! わたしゃ、百合色なマスターメイサーにされたくないわよー!』

 レイナは同性から見ても凄く可愛い。アスナ似で美人でもあるが 何より天然系が少し入ってて それらが上手くかわいらしさを際立たせている。そんなレイナだったら――と、何処か危ない事を考えてしまいかねなかった状況だったが……。

 それはあっという間に一変する。

『リズさん……おねぇちゃん……』
『『は、はいっ!』』

 呼ばれた事に思わず礼儀正しく返事をする2人。
 でも、ここで既に違和感があった。リズが剣を使ったのにレイナは、リズだけじゃなくアスナの事も呼んだのだから。

『私っ! リュウキくんと、もっともっとイチャイチャしたいっ! たとえ、恥ずかしくったって いつだってくっ付いていたいっ! リューキくんの温もりをいっつも感じていたいっ! 眠る時だって、リューキ君の腕の中が良いっ! 夢の中でだって リューキくんと一緒がいいっ! 現実世界ででも、リューキ君のお嫁さんになりたいっっ! いや、きっとなってみせるよっ!』

 少々早口だが 間違いなくそう言った。
 頬には♡がしっかりと出来ていて、さっき言っていた『惚れてる』状態になっている様だった。

 それでも……、やっぱり色々とおかしい。リズが攻撃? したのに レイナはリズではなく リュウキ一筋になっているのだから。それはいつも通りなんだけど、ここまでアグレッシブに攻めるレイナは見た事が無い。

『こうしちゃいられないよ! リュウキくんを追いかけなくっちゃっ! リュウキくんと沢山チューだってしたいからっ! みんなに見られたって、リューキくんが好きだからっ!』
『わ、わぁ! レイ、レイまって!!』
『すとっぷ、すとぉっぷ!!』

 アスナとリズの2人掛かりで何とかレイナを捕まえて、強行手段。圏内はHPが減少する様な毒は使用しても意味はないが、行動不能になる麻痺毒は効くから 痺れ毒をレイナに与えて強制ダウンさせたりしたのだ。

 つまり――その武器の効果がはっきりした瞬間でもあった。
 
 慌てている最中に、アスナも剣の一撃を喰らってしまって、『キリトくんのお嫁さんになりたい! レイに負けてられない!』とキリトを追いかけようとしたが、唯一残ったリズのファインプレイで暴走を阻止する事が出来たのだった。



















 と、言うアインクラッドをそれなりに盛り上げた時間があったのだ。

 アルゴも偶然の色が濃いが使い魔を使い、色々と情報を仕入れていて大筋は知ったのだ。 
 その武器の恐るべきとも呼べる効果を。

 そして、場面はアルゴの元に戻る。
 リズと別れた後のアルゴはと言うと。
 
『ムっフフ~ あの剣は、アインクラッドの時よりパワーアップして出現する可能性があるんダヨナァ。バカバカしく聞こえるかもしれないガ、《自分の心に素直になって、隠してることを行動に移させる》以外でも、攻撃成功者に自分自身が好意を持っていれバ追加効果がアル。《意中の相手に、短時間だけ夢中になって貰える》、と言う隠し効果ガナ! コーンナ倫理的にも色々とアウトな武器は直ぐ運営に削除サレルと思うし、……ソレニ、永久持続なんて、有り得ないンダカラ。ちょっとくらい……リューに、オレっちの事夢中ニなって貰っテモ……』

 アルゴがリズに出した条件の1つが、その武器を作成が出来たら使用する権利貰えると言う密約を交わした。譲渡や売買ではなく、貸出(レンタル)だから、リズにとっても別に不利益だと言う事はないし、何より良い情報をくれた、と言う事もあってリズは二言目にはOKを出した。

『マァ、所謂、仮想世界の媚○の様なモノかもダナ。こーでもしないと、無理ッポイし、何ヨリ、レーちゃんばっかりズルい! オレっちダッテ色々と貢献したんだシ。少しくらいリュー分を分けて貰ってモ……ッッ!』

 その時、だった。
 アルゴは それなりに周囲には気を使っていた筈だ。隠蔽(ハイド)のスキルもSAOの時同様にALOでも最高クラスに優先的に上げている。情報屋として、おいそれと出し抜かれる訳にはいかないからだ。
 
 だと言うのに、現時点で最高レベルの隠密スキルを掻い潜ったとでも言うのだろうか、冷徹な殺気に似た何かが背中に直撃した。
 氷の様な冷たい何か――威圧感が。

 そして、その正体は直ぐに気付く事になる。






『…………詳しく聞かせてもらえる? それ』







 いつもいつも背後をチェック。
 いつもいつも隙あらば 冷静沈着に急所を狙う。

 今は冷静か? と言われれば 首を横に振るが……、冷静と情熱の2つを併せ持っているという事だろう。


 そんな猫な彼女が、いつの間にかアルゴのスキルさえ掻い潜り、後ろに立っているのだった。
 
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