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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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外伝~仔猫の宅急便~前篇

12月5日、同日18:10――――



翌日、バリアハートに潜入して情報収集をしていた鉄道憲兵隊からの連絡を聞く為にアリサ達はレグラムにある”アルゼイド家”の屋敷の執務室に集合し、部下達からの報告を受け取っていたクレア大尉がアリサ達に説明を始めた。



~湖畔の町”レグラム”・アルゼイド子爵邸・執務室~



「―――それでクレア大尉。メンフィルによって占領されたバリアハートの様子はどうだったんだい?」

「はい。まずメンフィル軍による略奪や虐殺は一切起こっていなく、平民達に関しましては普段通りの生活をしているとの事です。」

「とりあえず最悪の事態には陥っていないようだな……」

「恐らくケルディックも同じような状況でしょうね。」

「ま、メンフィルは民には優しいって評判だしね。」

「”平民達に関しては”……?クレア大尉、その言い方だと貴族達は違うように聞こえるのだが。」

オリヴァルト皇子の質問に答えたクレア大尉の説明を聞いたトヴァルとエリオットは安堵の表情で呟き、フィーは静かな表情で呟き、ある内容が気になったラウラはクレア大尉に訊ねた。

「………バリアハートに住居を構えている貴族達や取引等の関係でバリアハートを訪れ、滞在している貴族達にはメンフィル帝国から謹慎の命令が出されている上屋敷の門やホテルの出入り口の前にはメンフィル軍の兵士達に見張られている為、事実上の軟禁状態との事です。」

「貴族達は軟禁状態か………」

「まあ~、今の所メンフィルは貴族連合軍を”滅ぼすべき明確な敵”としているみたいだから、貴族連合軍に加担している貴族達を殺さないだけマシじゃないかな~。」

ラウラの質問に答えたクレア大尉の答えを聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、ミリアムは静かな表情で呟いた。



「…………いえ、既に貴族連合軍に加担していた貴族達はメンフィル軍によって処刑されてしまいました。バリアハートが占領されたその日にメンフィル軍が貴族連合軍に加担していた貴族達の屋敷や宿泊しているホテルの客室に踏み込み、当主達を拘束し、占領した城館へと連行。そして翌日の朝には連行された当主達の生首がアルバレア公爵夫妻の生首と共に貴族街に”晒し首”にされていたとの事です。」

「何ですって!?」

「さ、”晒し首”………」

「バリアハートでの騎馬隊による突入の時と言い、”晒し首”と言い、メンフィルは随分と時代遅れな考え方をしているみたいね。”晒し首”なんて、相当昔―――”獅子戦役”の時代にされていた”見せしめ”じゃない。」

クレア大尉の口から出た凶報を聞いたサラは厳しい表情で声を上げ、アリサは表情を青褪めさせ、セリーヌは厳しい表情で呟いた後呆れた表情で溜息を吐いた。

「ハハ……”リベールの異変”の件からメンフィルは敵には一切の容赦はしないと知っていたから覚悟はしていたが、まさかそんな大それた事をするとはね……」

「恐らくバリアハートの防衛部隊の領邦軍の兵士達も一人残らず殲滅されているでしょうね。かつて”リベールの異変”で投入した結社の猟兵達はメンフィル軍によって一人残らず殲滅されたとの事ですし。」

「そ、そんな……確かに貴族連合に加担した貴族の人達にも罪はあるけど、処刑をして、しかも晒し首だなんて幾ら何でも酷すぎるよ……」

「そうなると……メンフィルはクロウもいつかは殺すんだろうな……」

オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、シャロンは真剣な表情で答え、トワは悲痛そうな表情をし、ジョルジュは辛そうな表情で推測した。



「あ………」

「クロウは貴族連合に協力しているから、間違いなくメンフィルにとって”滅ぼすべき明確な敵”の一人なのだろうな……」

「しかもクロウ―――――いえ、”帝国解放戦線”は”西ゼムリア通商会議”で”鉄血宰相”の暗殺が失敗した後オルキスタワーに乗り込んで来た飛行艇に積んだ爆薬を使ってオルキスタワーにいる多くの人達や各国のVIP達ごと”鉄血宰相”を葬ろうとしていたわ。その件もあるからメンフィルは当然”帝国解放戦線”も皆殺しにするつもりでしょうね。」

「そ、そんな……」

ジョルジュの推測を聞いたトワは呆けた声を出して辛そうな表情をし、ガイウスの後に重々しい様子を纏って答えたサラの推測を聞いたエマは悲痛そうな表情をした。

「……クレア大尉、先程メンフィルは貴族連合に加担した貴族達の当主達を処刑したとの事だが、彼らの家族や貴族連合に加担していない貴族達には手を出していないのか?」

「はい。それと肝心のユーシスさんの安否の件ですが、今の所生存している事は確認されています。」

目を伏せて黙り込んでいたアルゼイド子爵は目を見開いてクレア大尉に問いかけ、アルゼイド子爵の問いかけに頷いたクレア大尉はアリサ達にとって朗報となる情報を口にした。

「ほ、本当ですか!?」

クレア大尉の答えに仲間達が血相を変えている中エリオットは驚きの表情でクレア大尉に訊ねた。



「ええ。理由は不明ですがユーシスさんはメンフィル兵達と共にバリアハートにいる各貴族達の元へと訪問していたとの事です。」

「へ……な、何でそんな事を?」

「しかも何故メンフィルの兵士の方達と共に行動をしているのでしょうか……?」

「状況から考えるとメンフィル兵がユーシスと行動をしているのは恐らくユーシスの監視と逃亡防止の為だろうが……何で貴族達の元へと訪問しているんだ?」

クレア大尉の説明を聞いたマキアスとエマは困惑し、トヴァルが不思議そうな表情で首を傾げたその時、扉がノックされた。

「お館様、会議中の所申し訳ありませんが、少々よろしいでしょうか?」

「ああ、構わない、クラウス。」

「――――失礼します。」

アルゼイド子爵の許可を聞いたアルゼイド子爵家に仕えている執事であるクラウスは扉を開けて部屋に入って来た。

「それでクラウス、何かあったのか?」

「はい。少々風変わりなお客様がお館様達との面会を希望されています。」

「”風変わりな客”だと?クラウス、その者は何者なのだ?」

クラウスの報告が気になったラウラは眉を顰めてクラウスに訊ねた。



「はい。名前を伺った所”仔猫の宅急便”とお答えしまして……お館様とオリヴァルト皇子殿下、そして”Ⅶ組”の皆様に直接届ける必要な物がある為、お館様達との面会を希望しているとの事です。」

「”仔猫の宅急便”……?」

「一体何者なんだ……?」

「しかも何で私達にまで用があるのよ……?」

「どう考えても怪しすぎ。」

「!ちょっと待って……子爵閣下はわかるけど、この屋敷にあたし達やオリヴァルト殿下がいる事をその”仔猫の宅急便”と名乗っている人物は何で知っているのよ!?」

クラウスの話を聞いたガイウスとマキアス、アリサは不思議そうな表情で首を傾げ、フィーはジト目で呟き、ある事に気づいたサラは厳しい表情で声を上げた。

「あ……っ!」

「その人物は貴族連合やメンフィルから身を隠している私達の正体に加えて居場所まで把握していたとの事になりますね。」

「……状況から考えて貴族連合かメンフィル、どちらかの勢力に所属している人物でしょうね。」

サラの言葉を聞いたトワは声を上げ、クレア大尉とセリーヌは真剣な表情で推測した。



「クラウス、その”仔猫の宅急便”と名乗っている人物は一体どういう人物なのだ?」

「そうですな……年齢はフィー様くらいに見える菫色の髪の少女です。」

「え……フィーちゃんくらいの年齢の女の子ですか?」

アルゼイド子爵の質問に答えたクラウスの答えを聞いたエマは戸惑い

「菫色の髪の少女に”仔猫”………―――!」

「まさか……いや、でも”彼女”ならこんな大胆な事をしてきてもおかしくないな……」

一方クラウスの話にあった謎の人物について心当たりがあるシャロンは目を見開き、オリヴァルト皇子は信じられない表情をしていたがすぐに苦笑した。

「殿下はその人物について心当たりがあるのですか?」

「ああ。―――私の予想通りなら、”彼女”とすぐにでも会って話をするべきだ。”彼女”ならばユーシス君の件を含めたメンフィルとエレボニアの戦争についての事情に詳しいだろうしね。」

「ええっ!?じゃ、じゃあ、その人って……!」

「間違いなくメンフィル帝国の関係者だろうね。」

トヴァルの質問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたエリオットは驚き、ジョルジュは不安そうな表情で呟いた。

「子爵閣下、その”仔猫の宅急便”と名乗っている人物をこの場に通してもらえないかい?」

「―――わかりました。クラウス、すぐに連れてきてくれ。」

「かしこまりました。」

そして数分するとクラウスが突然何の前触れもなく自分達を訪ねてきた謎の人物と共に部屋に入って来た。

「―――ご指示通り、お連れしました。」

「ゴロゴロウニャ~ン♪グッドイブニング(こんばんわ)、”仔猫の宅急便”よ♪」

クラウスが連れてきた謎の人物―――レンは猫の鳴き真似と動作をした後小悪魔な笑みを浮かべ、レンの自己紹介の仕方にアリサ達は冷や汗をかいて脱力した。

「!あ、貴女は………!」

「へ~……君だったんだ。」

「……”殲滅天使”。」

すぐに我に返り、レンの顔を見たクレア大尉は信じられない表情をし、ミリアムは意味ありげな表情をし、フィーは警戒の表情でレンを見つめて呟いた。

「せ、”殲滅天使”……?何なんだその物騒な名前は……って、あれ?」

「あ、あれ……?何かその名前って、最近聞かなかった……?」

「……聞いていて当然よ。今朝の話にメンフィル皇女の一人である”殲滅天使”の話も出ていたんだから。」

フィーが呟いた言葉を聞いたマキアスは戸惑っていたが聞き覚えがある事にエリオットと共に思い出し、二人の疑問に答えたセリーヌはレンを厳しい表情で見つめていた。



「ええっ!?じゃ、じゃあ、本当にその娘がメンフィル帝国の皇女の一人なの……!?」

「ええ……そしてメンフィル皇族の中で最も残虐な性格をしている皇女でもあるわ。」

「おい、サラ!」

「彼女がメンフィル帝国の皇女の一人………」

「ど、どうしてメンフィ帝国のお姫様が一人でこんな所に……」

セリーヌの話を聞いたエマが驚いている中厳しい表情でレンを見つめて呟いたサラの言葉を聞いたトヴァルは焦った様子で声を上げ、ガイウスは真剣な表情でレンを見つめ、トワは信じられない表情でレンを見つめ

「残虐な皇女だなんて失礼ね~。レンは”天才美少女”のお姫様なのよ♪」

「何、その自画自賛………」

「――彼女が”天才”である事は事実ですわ。それに彼女がこの場にいるという事は恐らく”パテル=マテル”もこのレグラムのどこかに潜んでいると思われますわ。」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えを聞いてジト目でレンを見つめるアリサにシャロンは指摘した後真剣な表情で推測を口にした。



「”パテル=マテル”……?」

「うふふ、そう言えばメイドさんは結社の”執行者”の一人だったわね。―――改めて自己紹介を。メンフィル皇女、レン・H・マーシルン。”英雄王”リウイ・マーシルンと”闇の聖女”ペテレーネ・セラの娘にして”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”プリネ・カリン・マーシルンの妹よ♪初めまして、トールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”の皆様に”協力者”の皆様。そして久しぶりね、オリビエお兄さん♪」

シャロンの言葉が気になったジョルジュが不思議そうな表情をしている中興味ありげな様子でシャロンを見つめて呟いたレンはスカートを両手で摘まみ上げて、上品に自己紹介をして小悪魔な笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめた。

「……ああ、”西ゼムリア通商会議”以来だね、レン君。2年前の”お茶会”の時といい、今回この館を訪れた時の名乗り方といい、正直こういった心臓に悪い冗談(いたずら)は勘弁して欲しいんだけどね……」

レンの言葉に頷いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いた。

「クスクス、それは無理な相談ね♪”お茶会”のお客様にスリルとサプライズを届けるのは”お茶会”を開く”主催者”であるレンの”特権”だもの♪」

「意味不明だし。」

オリヴァルト皇子の指摘に笑顔で答えたレンの答えにアリサ達が冷や汗をかいて脱力している中、フィーはジト目で指摘した。

「……お初にお目にかかります、レン皇女殿下。このレグラムの領主を務めているヴィクター・S・アルゼイドと申します。ちょうど夕食の時間でもありますし、すぐに夕食の準備をさせますので少々お待ちください。」

「あら、別に気を遣わなくてもいいわよ?今日は”アルゼイド家”に渡す物があったから来ただけで、それを渡したらすぐに帰るつもりだもの。」

「殿下が私達”アルゼイド家”に……?」

アルゼイド子爵の言葉に対して謙遜した様子で答えたレンの話のある言葉が気になったラウラは不思議そうな表情で首を傾げ

「いえ、我々としても殿下には伺いたい話がありますので、どうか今夜は我が家で殿下をおもてなしさせてください。」

「ふふっ、”光の剣匠”と名高い子爵さんにそこまで頼まれたら、断るのも失礼ね。――――いいわ、今夜のディナーは”アルゼイド家”の厚意に甘えさせて頂くわ。勿論オリビエお兄さんを含めた他の人達も一緒で構わないわよ?食事は大勢で食べた方が賑やかで楽しいしね♪」

アルゼイド子爵の厚意に応える事にしたレンは笑顔を浮かべてアリサ達を見回し

「寛大なお心遣い、ありがとうございます。――――クラウス、すぐに夕食の準備を。ラウラは殿下を客室にお連れし、夕食の準備が整うまでの話し相手を務めてくれ。」

「かしこまりました。」

「わかりました、父上。―――レグラムの領主の娘、ラウラ・S・アルゼイドと申します。不肖ながら、殿下の話し相手を私が務めさせていただきますので、よろしくお願いします。」

「うふふ、よろしくね、ラウラお姉さん♪」

その後夕食の支度が整うとアリサ達はそれぞれレンに自己紹介をした後、レンと共に夕食を取った。



同日、19:20――――



~食堂~



「―――ごちそうさま。どれも美味しかったわ♪」

「皇女殿下の御口に合い、幸いです。」

「それで殿下。私達”アルゼイド家”に渡す物があると仰っていましたが………」

食事を終えたレンの評価を聞いたアルゼイド子爵は会釈をし、ラウラはレンに問いかけた。

「ええ、その為にレンがレグラムに来たもの。」

ラウラの問いかけに頷いたレンが指を鳴らすと異空間からアルゼイド家の家宝―――”宝剣ガランシャール”が現れた。

「ふえええっ!?何もない所から剣が……!」

「い、異空間収納の魔術……それも無詠唱で瞬時に発動させるなんて……!」

「……”殲滅天使”はあらゆる方面の”才”に長けている話は聞いてはいたけど、まさか魔術の”才”にまで長けていたとはね。」

それを見たトワは驚き、エマは信じられない表情をし、セリーヌは目を細めてレンを見つめた。

「そ、それよりもあの剣って確か……!」

「リィン――――メンフィル帝国に奪われてしまったアルゼイド家の家宝――――”宝剣ガランシャール”……!」

ガランシャールに見覚えがあるエリオットは目を見開き、トヴァルは驚きの表情で声を上げた。そして異空間から現れた”ガランシャール”はアルゼイド子爵が座っている席の傍まで移動した。



「リィンお兄さんが約束していた通り、その剣が”アルゼイド家”の家宝である事の確認が終わったから”アルゼイド家”に返還するわ。」

「……本当によろしいのですか?」

予想外の出来事に驚いた様子のアルゼイド子爵はレンに問いかけ

「ええ。その剣をアルゼイド家に返還する事にレン達―――メンフィル帝国に異存はないわよ。」

「……わかりました。メンフィル帝国の寛大なお心遣いに心から感謝いたします。」

「我が家の家宝をこんなにも早く返還して頂き、本当にありがとうございます……!この御恩は一生忘れません……!」

「……私からも感謝する。本当にありがとう。」

レンの答えを聞いたアルゼイド子爵はレンに頭を下げた後宙に浮いているガランシャールを手にし、ラウラとオリヴァルト皇子もアルゼイド子爵に続くようにレンに頭を下げて感謝の言葉を述べた。



「うふふ、これでレンの用事は終わった訳だけど……子爵さんの口ぶりからするとオリビエお兄さん達の方はレンに聞きたい事があるみたいね?」

「ハハ、この状況でむしろ無いって言った方が怪しまれるよ。ちなみに君がこの屋敷を訪れた時に私達にも渡す物があると言っていたそうだが、それは一体何なんだい?」

「ああ、あれはオリビエお兄さん達にスリルとサプライズを届ける為の”冗談”だからオリビエお兄さん達に渡す物なんて特にないわよ♪」

「ぼ、僕達にスリルとサプライズを届ける”冗談”……?」

「一体どういう意味なのだろうか?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたレンの答えの意味がわからないマキアスは困惑し、ガイウスは不思議そうな表情でレンに訊ねた。

「クスクス、オリビエお兄さん達はレン達メンフィル帝国に加えて貴族連合からも必死で身を隠しているのに、突然現れたミステリアスな訪問者が居場所を知っているというサプライズでメンフィルか貴族連合、どちらかの勢力にお兄さん達の居場所が割れているスリルをお兄さん達に感じさせる事ができるでしょう?だから子爵さんだけじゃなく、わざとオリビエお兄さん達も指名したのよ♪」

悪びれもなく笑顔で答えたレンの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「そ、そんな事の為だけに……」

「ふふ、レン皇女殿下がクラウス様に名乗った名前通りまさに”仔猫”のような気紛れな”宅急便”ですわね。」、

「噂以上に性格が悪い皇女だね。」

「む~!ボク達に感じさせた無駄なスリルとサプライズを返せ~!」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!相手は皇族なのですから最悪”不敬罪”を問われてもおかしくありませんよ!?」

「フィーちゃんもレン皇女殿下に失礼な事を言わないで下さい!」

アリサは疲れた表情で肩を落とし、シャロンは微笑みながらレンを見つめ、レンに文句を言うフィーとミリアムにクレア大尉とエマはそれぞれ注意した。



「うふふ、レンは言葉遣いや態度程度で腹を立てるような器量の狭いエレボニア帝国の貴族とは違うから別にいいわよ?」

「あのー、レン君?エレボニアの貴族全てが器量が狭いという訳じゃないんだよ?」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中、オリヴァルト皇子は苦笑しながら指摘した。

「クスクス、わかっているわよ。―――さてと。ディナーをご馳走になったお礼にみんながレンに聞きたい事を答えてあげてもいいけど、際限なく答えてあげるつもりはないわ。――――質問は3つよ。」

「質問は3つ……と言う事はその3つの質問に関しては正直に答えて頂けるのでしょうか?」

レンの説明のある言葉が気になったジョルジュはレンに質問し

「ええ。3つだけ、レンが知る限りの情報になるけど全て正直に答えてあげるわ。ちなみに質問の内容によってはレンでもわからなくて答えられない事もあるけど、その質問も一つとしてカウントするから質問の内容をよく考えて質問する事ね。」

「えー!そう言う場合は他の質問を答える事で一つとしてカウントするのが常識だと思うんだけど~!」

「ケチだね。」

「ミリアムちゃん!レン皇女殿下のせっかくのご厚意を無駄にしかねない発言をしないでください!」

「フィーちゃんもです!」

「頼むから君達は黙っていてくれ……」

レンの答えを聞いたミリアムは不満げな表情で文句を口にし、フィーはジト目でレンを見つめ、クレア大尉とエマはそれぞれ焦りの表情でミリアムとフィーに注意し、マキアスは疲れた表情で溜息を吐いた。

「と言うかどうして答えて頂ける質問の数を3つにしたのですか?」

「え?だって、こういう場合の質問は3つなのが”お約束”じゃない♪」

エリオットの質問に笑顔で答えたレンの答えを聞いたアリサ達は冷や汗をかいて脱力し

「お、”お約束”って何の”お約束”なのか意味不明なんですけど……」

「うふふ、お嬢様もわかる時がいつか訪れますわ♪」

ジト目でレンを見つめて呟いたアリサにシャロンは微笑みながら指摘した。



「……急に数を絞られてもどれを質問すればいいかわからないから、質問の内容を絞る為の時間を貰えないかしら?」

「ええ、別に構わないわよ。とは言ってもレンも忙しいし、そんなに待ってあげられないから……――――あの時計が20:00ちょうどになったら質問を受け付けるから、それまでに質問の内容をどれにするかみんなで相談して決めてね♪」

気を取り直したサラの要求に頷いたレンは食堂に備え付けてある時計に視線を向けて答え

「今が19:30分頃だから相談する時間は約30分だな。」

「すぐに食堂を出て質問の内容を決める相談をするわよ。」

「はいっ!」

「……私はこの場に残って皇女殿下の話し相手を務める。クラウス、食後の茶の準備を。」

「かしこまりました。」

レンにつられるようにアリサ達と共に時計に視線を向けたトヴァルは静かな表情で呟き、サラの指示にアリサ達は頷き、アルゼイド子爵はアリサ達に自分のやる事を伝えた後クラウスに指示をした。



その後食堂を出たアリサ達は質問の内容を相談して決めた後、再び食堂に入って席についた――――





 
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