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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第10話

~緊急避難用ガレージ~



「先制攻撃だよ、ガーちゃん!ぶっ放せ~!」

「――――!」

アリサ達と共にベルフェゴールとの戦闘を開始したミリアムはアガートラムに指示をし、ミリアムの指示に応えたアガートラムは瞳の部分から高熱のレーザー―――ライアットビームをベルフェゴール目がけて放ったが

「うふふ、お人形遊びなんていかにも小さな女の子らしいわね♪」

「む~!子供扱いするな~!」

ベルフェゴールは余裕の笑みを浮かべて襲い掛かるレーザーを回避し、ベルフェゴールの言葉を聞いたミリアムは不満げな表情で声を上げた。

(しろがね)の剣よ、お願い――――イセリアルキャリバー!!」

「逃がさない―――メルトレイン!!」

そこにエマが前方に数本の銀色の剣を発生させてベルフェゴール目がけて放ち、アリサは導力弓による攻撃で上空から炎の矢を降り注がせてベルフェゴールの逃げ場をなくした。

「ふふ、貴女達は魔法使いに弓使いね。魔法使いは女の子なら一度は夢見るし、弓を使う貴女はメイドに”お嬢様”って言われていたからどこかの富豪のお嬢様って所かしら?」

二人が放った逃げ場のない攻撃に対してベルフェゴールは転移魔術を発動して二人の背後に現れ

「!?い、いつのまに私達の背後に……!」

「チッ、転移魔法を戦闘に組み込んで戦うなんて、相当厄介な相手よ……!」

「そんな……詠唱も無しに転移魔法を発動するなんて……!」

背後から聞こえてきたベルフェゴールの声を聞き、慌ててベルフェゴールから距離を取ったアリサは驚きの表情でベルフェゴールを見つめ、舌打ちをしたセリーヌは厳しい表情でベルフェゴールを睨み、エマは信じられない表情でベルフェゴールを見つめた。

「行きますわよ――――」

するとその時シャロンがベルフェゴールに襲い掛かり

「っと。」

「シャドウステッチ!!」

ベルフェゴールが再び転移魔法でその場から消えて別の場所から現れるとベルフェゴールがいた場所を中心に無数の鋼糸(ワイヤー)が発生した!

「あらあら、メイドの貴女はあやとりが趣味なのかしら♪」

「ふふ、今のを”あやとり”扱いするとは、どうやら私の想像以上の使い手のようですわね。」

ベルフェゴールの言葉に対してシャロンは微笑みを浮かべて答えながらもベルフェゴールを最大限に警戒していた。



「燃え尽きなさい……ファイアッ!!」

「アークス駆動―――ルミナスレイ!!」

そこに左右に別れたアリサが炎を宿した矢を解き放つクラフト―――フランベルジュを、エマは幻属性のレーザーを放つアーツをベルフェゴールを挟み撃ちにして放ち

「うふふ、狙いは悪くないけど相手が悪すぎたわね♪」

「キャア……ッ!?」

「あう……っ!?」

左右から襲い掛かってくる炎の矢とアーツに対してベルフェゴールは片手を振るって自分の周囲に無数の魔力弾を拡散させて二つの攻撃を相殺し、拡散した魔力弾が地面にぶつかって発生した衝撃波の余波を受けたアリサとエマは思わず怯んだ。

「ぶっ飛ばせ~、ガーちゃん!」

「――――!」

ベルフェゴールが二人への反撃を終わるとアガートラムが正面から強烈な一撃―――バスターアームでベルフェゴールを攻撃した。

「ふふ、”まず一人”ね――――超ねこパンチ!」

対するベルフェゴールも正面から力を抑えた一撃を自分に襲い掛かるアガートラムの腕目がけて攻撃した。

「――――!?」

「ガーちゃん!?うわっ!?」

ベルフェゴールの一撃が腕に命中したアガートラムはそのままふっ飛ばされてミリアムにぶつかり

「ミリアムちゃん!?」

「きゅう………」

「―――――………」

それを見たエマは声を上げてミリアムに視線を向けるとアガートラムとぶつかった衝撃によってアガートラムの下敷きになっているミリアムは気絶し、主人の気絶によってアガートラムは動く事ができず、その場から消えた。



「………―――ハッ!」

するとその時気配を完全に消してベルフェゴールの背後へと回ったシャロンがベルフェゴールの背後から鋼糸を投擲してベルフェゴールを拘束しようとしたが

「うふふ、まさか気づいていないと思っていたのかしら?」

「……っ!……まさかこれを受け止められるとは思いもしませんでしたわ……!」

ベルフェゴールはすぐに振り向いて鋼糸を掴んでシャロンの動きを制限し、動きが制限されたシャロンは自分の動きを制限している鋼糸を離そうとしたが

「それぇっ!」

「しま――――くっ……!」

そうはさせないかのようにベルフェゴールは鋼糸ごとシャロンを振り回して壁めがけて投擲し、投擲されたシャロンは壁に叩き付けられる前に即座に鋼糸を離した後空中で受け身を取って地面に着地した。

「それじゃあ、そろそろ反撃させてもらうわよ♪」

「え……………」

「あ……………」

そして眼に魔力を纏わせたベルフェゴールはアリサとエマに微笑み、ベルフェゴールの魔術―――淫魔の微笑みを受けてしまった二人は放心状態になり

「お嬢様!?」

「エマ!?クッ……あんな一瞬で暗示の心得があるエマにまで暗示状態に陥らせるなんて、アンタ、一体何者よ!?」

二人の様子に気づいたシャロンと共に血相を変えたセリーヌはベルフェゴールを睨んだ。



「うふふ、わざわざ敵に自分の正体を教えてあげる程私はお人好しじゃないわよ♪さて、この後二人はどうなると思う?」

「まさか――――」

「「…………」」

ベルフェゴールの言葉を聞いてある事を察したシャロンがアリサとエマを見つめると何と虚ろな目をしたアリサとエマがそれぞれシャロン目がけて攻撃を始めた!

「くっ………同士討ちを発生させるとは見た目とは裏腹に随分と悪辣な性格をしていらっしゃいますわね……!」

二人の攻撃を回避しながらシャロンは怒りの表情でベルフェゴールを睨んだ。

「うふふ、”戦い”は殴り合いが全てじゃなく、相手を錯乱させる同士討ちも立派な戦術でしょう?―――と言う訳で、そろそろ貴女も眠りなさい。」

「しま――――」

シャロンの言葉に対して微笑みながら答えたベルフェゴールはシャロンの背後に現れ、突然背後に現れたベルフェゴールに驚いたシャロンは慌てて振り向いて反撃しようとしたが時既に遅くベルフェゴールの片手がシャロンの肩に置かれ、そのままベルフェゴールは魔術を発動した!

「―――精気の接吻術。」

「キャアアアアアァァァァッ!?ち、力……が……ぬけて…………」

ベルフェゴールの魔術によって精気を奪われたシャロンは悲鳴を上げ

「これ程……とは……申し訳ござい……ません……お嬢様……皆様………」

魔術を終えたベルフェゴールがシャロンから離れるとシャロンは地面に倒れてそのまま気絶し

「ご苦労様。貴女達も眠っていいわよ♪」

「「……………」」

更にベルフェゴールが指を鳴らすとアリサとエマの暗示状態も解け、暗示から解放された二人はそれぞれ意識を失った状態で地面に倒れた!



「光よ、煌めけ―――昇閃!!」

「「うわっ!?」」

「うっ!?」

「ぐっ!?」

エリオット達との戦闘を開始したメサイアは先制攻撃に聖なる力が込められた魔法剣を解き放ってエリオット達にダメージを与えると共に怯ませ

「ふふ、まだ終わりませんよ?行きなさい―――双子水精弾!!」

続けてメサイアと戦術リンクを結んでいるリザイラが水の魔力球による2連続攻撃で追撃した。

「いたた……みんな、今助けるね!届け―――癒しの歌!!」

リザイラの攻撃が終わるとエリオットは自分や仲間達の傷を回復する為に魔導杖に搭載されている回復の特殊魔法――――ホーリーソングで自分達の傷を回復し

「ありがとう、エリオット。吹き飛べぇっ!」

ガイウスは反撃に風を纏わせた十字槍で突きを放ち、竜巻状と化した風の刃はメサイア達を襲った。

「ハアッ!」

襲い掛かって来た風の刃に対してメサイアは自身の得物である聖剣を振るって斬り裂いた。

「「アークス駆動――――」」

「時の結界よ、砕けちれっ!」

「アルテアカノン!!」

「エクスクルセイド!!」

その時マキアスのクラフト―――バーストドライブによってエリオットとトヴァルが瞬時にアーツを発動し、二人の発動によってメサイア達の上下から逃げ場のない光の魔法攻撃が襲い掛かったが

「ふふふ、”その程度”ですか?」

リザイラが瞬時に展開したドーム型の結界によって二人は逃げ場のないアーツ攻撃を無効化した。



「ええっ!?き、効いていない!?」

「後ろにいる奴の方が厄介だ!まずは奴を潰すぞ!」

自分達が放った同時アーツ攻撃を無効化した事にエリオットは驚き、トヴァルはリザイラを睨んでエリオット達に助言した。

「わかりました!―――喰らえっ!」

トヴァルの助言に頷いたマキアスはリザイラ目がけてショットガンで銃撃したが

「―――させませんわ!」

メサイアが瞬時に間に入り、剣を振るって銃弾を斬り落とした。

「ハアッ!―――喰らえっ!!」

そこにガイウスが跳躍してリザイラの正面に着地するとともに十字槍を叩き込んで衝撃波をリザイラに襲わせ

「竜巻よ、薙ぎ払え!!」

続けて十字槍を頭上で回転させて竜巻を発生させてリザイラにぶつけた。

「―――その程度ですか?」

しかしリザイラはガイウスの連携攻撃を全て片手で展開した簡易結界で防ぎ

「!まだだっ!」

攻撃を防がれた事に驚いたガイウスは簡易結界を貫く為に十字槍で簡易結界を攻撃したが、リザイラの膨大な魔力によって発生した結界は罅すら入れる事ができなかった。

「―――虚空の迅風!!」

「グアッ!?」

リザイラは至近距離で魔力風を命中させてガイウスを吹き飛ばし

「エニグマ駆動―――」

メサイアはアーツを放つ為に戦術オーブメントを駆動させた。



「”ENIGMA(エニグマ)”だと!?」

そしてメサイアが呟いたある言葉を聞いたトヴァルが驚いたその時

「ゴールドハイロゥ!!」

「あうっ!?」

「うわっ!?」

「ぐっ!?」

「うっ!?」

エリオット達の周囲に無数の金色の球体が発生した後一斉にエリオット達を襲ってダメージを与えた。

「猛りの風よ!撃滅の大嵐!!」

「「うわああああああっ!?」」

「チィッ……!?」

「グッ……風が……怒っている……!?」

その時リザイラが魔力風を広範囲に発生させてエリオット達を苦しめながら空へと舞い上がらせ

「―――止めです。桜よ、咲き乱れよ!ハァァァァ……!!」

エリオット達が落下してくるとメサイアが聖剣を桜の花びらの形を描くように高速に振るうと共に衝撃波を発生させ

「奥義――――桜花乱舞!!」

聖剣を高速に振るった最後にエリオット達の背後へと駆け抜けた後聖剣を一閃させると桜の花が咲くかのような形の闘気の大爆発が襲った!

「みんな、ごめん……僕はもう、無理……」

「クッ……こんなところで……」

「みんな……すまない……」

「クソッ……ここまでか……」

メサイアの奥義によるダメージに耐えきれなかったエリオット達は戦闘不能になり、地面に跪いた!



「コォォォォォ……………ハアッ!!」

アイドスとの戦闘を開始したアルゼイド子爵は魔法能力を犠牲にし、身体能力を大幅に上昇させ、さらに”心眼”状態にするクラフト―――洸翼陣で自身の能力を上昇させ

「―――行くわよ。」

対するアイドスは舞を舞うかのような動作で自身の身体能力を強化するクラフト―――飛燕の舞で自身の能力を強化した。

「フンッ!!」

身体能力を強化したアルゼイド子爵は剣圧によってすざましい衝撃波を発生させ、光の速さで襲わせるクラフト―――洸迅剣をアイドスに放ち

「星の光よ、貫け―――星光地烈斬!!」

対するアイドスは”星”の力を利用して衝撃波を放つ飛燕剣の魔法剣の一つ―――星光地烈斬を放った。二人が放った剣技によって発生した衝撃波はぶつかると一瞬でアイドスが放った衝撃波がアルゼイド子爵が放った衝撃波を呑みこんでアルゼイド子爵に襲い掛かった!

「!」

襲い掛かって来た光り輝く衝撃波を回避する為にアルゼイド子爵は側面へと跳躍し

「………ハッ!」

アルゼイド子爵の動きに対してアイドスは跳躍してアルゼイド子爵目がけて強烈な一撃を放った。



「紅燐―――舞華斬!!」

「!!」

アルゼイド子爵はアイドスの正面から攻撃を受け止めようと大剣で防御態勢に入ったが

「ガッ!?」

アイドスが放った剣技―――高速剣を主体としている”飛燕剣”の中で一撃の意力を重視している事に加えて神剣やアイドスの莫大な魔力も剣技に乗せられていた為、アルゼイド子爵は攻撃を受け止めた瞬間吹っ飛ばされた。

「フッ!!」

ふっ飛ばされたアルゼイド子爵は空中で受け身を取って着地をしたが

「沙綾―――身妖舞!!」

「な――――グッ!?」

その隙を逃さないかのように人間離れした動きで一気にアルゼイド子爵に詰め寄ったアイドスが高速の連続斬撃をアルゼイド子爵に叩き付けてダメージを与えた。

「オォォォォォ………――――鉄閃刃!!」

一方アルゼイド子爵は跳躍し、光のエネルギーを纏わせた刃で装甲をも破壊する重き一撃で強襲するクラフト―――鉄閃刃で反撃をして来た。



「沙綾―――紅燐剣!!」

対するアイドスは広範囲の無数の真空の刃をアルゼイド子爵目がけて解き放った!

「なっ!?クッ…………!」

襲い掛かる無数の真空の刃に驚いたアルゼイド子爵は空中で次々と捌きながら着地したが

「舞え、星の力―――星光身妖舞 !!」

「!!グッ!?」

アイドスの星の力を宿した連続攻撃を受けてしまい、思わず呻き声を上げた。

「逃がしはせぬ!!」

しかしすぐに立ち直ったアルゼイド子爵は自身を中心に光の渦を発生させて敵を引き寄せ、薙ぎ払いを放つクラフト―――洸閃牙を放ったが

「爆ぜよ、星の力!!」

「ガッ!?」

薙ぎ払いを放つ瞬間、放ったアイドスの一閃技―――星光円舞剣に打ち負けて吹っ飛ばされ

「ガハッ!?」

そして壁に叩き付けられて呻いた!



「これで”力の差”はわかったでしょう?……まだ続けるのかしら?」

アイドスは静かな表情でアルゼイド子爵に問いかけ

「先程も口にしたはずだ。『振るうのはあくまで”己”の魂と意志―――最後にはそれが全てを決する』、と。例えどのような強大な相手であろうと我がアルゼイドの剣は何者にも屈せぬ……!」

アイドスの問いかけに対して静かな表情で答えたアルゼイド子爵は大技を放つ為に全身に膨大な闘気を練り始めた。

「……そう。だったら、これ以上貴方が傷つかない為にも私もそろそろ決めさせてもらうわ。」

アルゼイド子爵の答えを聞いたアイドスも全身に膨大な闘気や魔力、神気を練り始めた。

「アルゼイドの真髄……お見せしようっ!!」

「飛燕剣奥義!飛燕――――――」

そして互いの闘気等を練り終えた二人はそれぞれが放てる奥義を同時に放った!

「絶!洸凰剣!!」

「姫神恍舞!!」

アルゼイド子爵は一刀両断攻撃を、アイドスは最大の高速連続攻撃を繰り出し、互いの奥義を放ち終えた二人は互いの背中を相手に向けた状態で止まり

「ぐっ……見事……皆、すまぬ………」

アイドスの奥義によるダメージに耐えきれなかったアルゼイド子爵は利き腕から大剣を落として気絶し、地面に倒れた!

「………”人”の身でありながら私の結界に罅を入れるなんて、”見事”なのは貴方の方よ。私が”人”だったら、最後に立っているのは貴方だったかもしれないわね………」

アルゼイド子爵に勝利したアイドスは自身が常に自分の全身を覆っている結界に罅を入れたアルゼイド子爵を称賛した後、静かな表情で呟いて神剣を異空間に収納した。



「ポイっと。」

「コォォォォォ……………ハアッ!!」

「アークス駆動―――」

リィン達との戦闘を開始したフィーは先制攻撃代わりにFグレネードをリィン達の足元へと投擲し、ラウラはクラフト―――洸翼陣で自身の能力を上昇させ、クレア大尉はアーツを放つ為に戦術オーブメントを駆動させ

「―――そこっ!」

自分達に向かって投擲されたグレネードをステラがライフルで狙撃して空中で爆発させた。

「セイッ!」

そこにクラフト―――電光石火を放つ為にサラがリィン達の上空から強襲し

「させるか!」

「これはオマケよ!」

「ハアァァァ……ッ!」

サラの強襲攻撃を太刀で受け止めたリィンは続けて放たれた雷の銃弾を太刀を振るって全て斬りおとした。

「ハイドロカノン!!」

その時オーブメントの駆動を終えたクレア大尉がアーツを発動して凄まじい威力の水流をリィン達に放ったが

「吹雪よ、吹き荒れなさい――――ハリケーンブリザード!!」

セレーネがリィン達の前に出て自分の周囲に猛吹雪の結界を展開して襲い掛かる水流を防いだ。

「ゆくぞ―――セェイッ!!」

セレーネがクレア大尉のアーツを防ぎ終えると跳躍したラウラがクラフト―――鉄砕刃でセレーネに襲い掛かったが

「刃よ、伸びよ!」

「何!?……ッ!」

エリゼの連接剣による剣の伸長攻撃によって弾かれ

「ヤアッ!」

続けてステラが追撃する為にAグレネードをラウラ目がけて投擲した。

「させません!」

しかし投擲されたグレネードはラウラに届く前にクレア大尉の銃撃によって空中で爆発した為ラウラに命中しなかった。

「行くよ―――シュッ!!」

「させるか!」

フィーは最初に銃による援護をするステラを戦闘不能にする為にクラフト―――スカッドリッパーでステラに襲い掛かったが、ステラと戦術リンクを結んでいるリィンがステラの前に移動してフィーの強襲攻撃を太刀で受け流した。



「二の型・改―――紅蓮剣!!」

「いたっ!?」

「「ッ!?」」

「キャッ!?」

フィーの攻撃を受けながしたリィンは反撃に太刀に炎を宿して電光石火の斬撃をサラ達に叩き込み

「―――続きます。風の刃よ、爆ぜなさい―――エアバースト!!」

続けてリィンと戦術リンクを結んでいるステラが広範囲に無数の風の刃を発生させる弾丸を放つクラフト―――エアバーストで追撃してサラ達に更なるダメージを与えた。

「異界の波よ、全てを呑みこめ―――デネカの津波!!」

「落ちよ、聖なる雷―――ライトニングプラズマ!!」

「「アアアアアァァッ!?」」

「キャアアアアアァァァッ!?」

「うあああああぁぁっ!?」

ステラの攻撃が終わるとエリゼが発動した魔術によって発生した津波がサラ達を襲い掛かり、津波による攻撃が終わるとエリゼと戦術リンクを結んでいるセレーネがタイミング良く追撃してサラ達の頭上から雷を落とし、津波によって全身が水で濡れたサラ達は雷を受けると感電して悲鳴を上げた。



「伍の型―――」

サラ達の様子を見たリィンは更なる追撃をしようとしたが

「”紫電(エクレール)”を舐めんじゃないわよ!」

「させない……!」

「!」

サラとフィーの牽制射撃によって追撃を中断して攻撃の範囲外へと後退した。

「クッ………今回復します―――ヒールスター!!」

状況を立て直す為にクレア大尉はライフルを空に向けて回復光線を放って自分達の傷を回復し

「七色の光の矢よ―――プリズミックミサイル!!」

「吹き飛べ―――地裂斬!!」

セレーネが放った魔術によって発生した虹色の光の矢をラウラが地を走る衝撃波を放って相殺した。

「風よ、我が仇名す者達の戦意を奪え――――消沈の竜巻!!」

その時魔術の詠唱を終えたステラが魔術を発動してサラ達を中心に低威力の竜巻を発生させた。



「何……これ……見た目の割に威力はそんなに大した事はないけど……」

「クッ……何だ、この気怠さは……!?」

「動きなさい……ッ!」

「不味い……このままでは……!」

攻撃が目的ではなく、敵の戦意を奪う事を目的としている特殊な竜巻は戦闘で高揚していたサラ達の戦意―――闘志を奪って動きを鈍くさせてサラ達を苦しめた。

「エニグマ駆動―――ダークマター!!」

そこにエリゼのアーツが発動してサラ達にダメージを与えると共に一か所に固めて重力でサラ達の動きを封じ込め

「風巻く光よ――――我が剣に集え!うおぉぉぉぉ……!」

エリゼが作った好機を逃さないリィンは地面を蹴って神速の抜刀によって発生した無数の斬撃でサラ達を攻撃し

「奥義―――――風神烈波!!」

最後に闘気によって発生した風を纏った強烈な一撃をぶつけてサラ達を吹き飛ばした!

「あぐっ!?あ、あたしとした事が………」

「うあっ!?クッ……ここまで……か……」

「あうっ!?ミッション失敗………」

「キャアッ!?申し訳ございません、皆さん……これ以上は………」

リィンが放った八葉一刀流の奥義の一つ―――風神烈波によるダメージに耐えきれなかったサラ達は戦闘不能になり、全員地面に跪いた!




「つ、強すぎるよ……」

「!?う、嘘だろう……!子爵閣下まで負けたのかよ……!?」

「な――――ち、父上!?」

全員が敗北し、戦闘によるダメージで呻いている中エリオットは不安そうな表情で呟き、地面に倒れているアルゼイド子爵に気づいたトヴァルとラウラは信じられない表情で声を上げ

「しっかりしろ、アリサ!ミリアム!委員長!シャロンさん!」

「起きなさい、エマ!アンタ達も早く目を覚ましなさい!」

意識を失っているアリサ達にはガイウスとセリーヌが血相を変えて呼びかけていた。

「公爵夫妻は見つかったか!?」

「いや、まだだっ!」

「向こうはまだ探していないぞ!」

するとその時扉の外からメンフィル兵達の声が聞こえてきた。



「しまった……!」

「え、援軍のメンフィル兵……!」

「万事休す……だね……」

「クッ……!」

外から聞こえてきたメンフィル兵達の声を聞いたクレア大尉は血相を変え、マキアスは表情を青褪めさせ、フィーとサラは厳しい表情をした。

「制圧完了、ですね。」

「お兄様、彼らをどうしますか?」

一方戦闘不能になったサラ達を確認したステラは武器を収め、セレーネはリィンにサラ達の処遇を訊ねた。

「…………トヴァルさん。貴方にはユミルが襲撃された時猟兵達に撃たれて重傷を負った父さんの応急手当をしてもらった恩があります。その恩もありますから、条件付きで貴方達をこの場から逃がしてあげても構いません。」

「リィン……」

「……その条件とはどういうものでしょうか?」

解放していた”力”を抑えて元の姿に戻り、太刀を鞘に収めたリィンの話を聞いたトヴァルは驚き、クレア大尉は真剣な表情で問いかけた。



「条件は二つです。一つはユーシス・アルバレアの救出を諦める事。その代わり彼の身の安全の保証は約束します。」

「そ、そんな……」

「……下っ端の兵士が国の判断に口出しできると思っているのかしら?」

リィンが口にした条件を聞いたエリオットは辛そうな表情をし、サラは厳しい表情でリィンに問いかけた。

「勿論俺達の”上司”に当たる副長達――――リフィア皇女殿下の親衛隊を率いるゼルギウス将軍閣下やシグルーン副将軍閣下を通しての嘆願になりますが、リフィア皇女殿下御付きの専属侍女長であるエリゼを通してリフィア殿下にも彼の身の安全の保証を約束してくれるように嘆願してもらいますので心配は無用です。エリゼ、頼めるか?」

「はい、お任せ下さい。」

リィンに視線を向けられたエリゼは静かな表情で頷き

「リフィア皇女殿下……メンフィル帝国の次期皇帝であられる御方か。確かにメンフィルの帝位継承者であられるリフィア殿下ならば、メンフィル帝国が捕虜にしたユーシスの処遇についても口出しできるだろうが……」

「……それ以前にわたし達と大して変わらない年齢のメイドが”聖魔皇女”付きのメイド長とか、普通に考えて信じられないんだけど。」

リィンの話を聞いたラウラとフィーはそれぞれ真剣な表情でエリゼを見つめて呟いた。



「いえ、彼女―――エリゼさんがリフィア殿下の専属侍女長である事は事実です。”西ゼムリア通商会議”でも彼女はリフィア殿下御付きの専属侍女長としてクロスベルを訪れていた事が確認されていますし、会議に参加していたオリヴァルト殿下もエリゼさんがリフィア殿下の専属侍女長である事をご存知です。」

「………なるほどね、少なくてもあんたの妹がリフィア皇女の専属侍女長である事はハッタリではないみたいね。それで?もう一つの条件ってのは何かしら?」

クレア大尉の情報を聞いたサラは真剣な表情でリィン達を見つめながら問いかけた。

「それは―――この剣を俺達が預からせてもらう事です。」

サラの問いかけに対してリィンは倒れているアルゼイド子爵に近づいてアルゼイド子爵の傍に落ちている”宝剣ガランシャール”を回収した。

「あの剣は子爵閣下―――いや、ラウラ達”アルゼイド家”の………」

「”宝剣ガランシャール”をどうするつもりだ……!?」

リィンが回収したガイウスは静かな表情で呟き、ラウラは厳しい表情でリィンを睨んで問いかけた。

「貴方達を撃退した証拠として一旦こちらが預かり、メンフィル帝国に渡させてもらう。」

「”宝剣ガランシャール”は”アルゼイド子爵家”の家宝として有名ですから、”光の剣匠”を撃退した証拠としてこれ以上の物はありませんね。」

リィンの話を聞いたステラは静かな表情で呟いた。

「勿論可能な限り早く―――遅くてもメンフィルとエレボニアの戦争が終われば、”アルゼイド家”にこの剣を返還してもらえるように手配する。―――そういう訳で立て続けになって悪いが、頼めるか、エリゼ。」

「はい、兄様。―――私がリフィア殿下にユーシスさんの件も合わせて”アルゼイド家”の家宝である”ガランシャール”を必ず返還するように説得する事を確約しますので、どうかご安心下さい。」

「何の保証もなく戦争相手である君達が約束を守ってくれるなんて、普通に考えて信じられないぞ……!」

リィンとエリゼの話を聞いたマキアスは反論したが

「信じる、信じないの問題ではないわ。アタシ達の命運は向こうが握っているのよ。アタシ達に反論する権利はないわ。」

「そ、それは…………」

セリーヌの指摘を聞くと複雑そうな表情で黙り込んだ。



「…………―――わかりました。そちらの条件を全て呑みます。サラさん達も構いませんね?」

「……ああ。」

「………ッ!それで?どうやってあたし達を味方(メンフィル)の目を誤魔化して逃がしてくれるのかしら?」

少しの間考えた後結論を出したクレア大尉は静かな表情で頷いてサラ達に視線を向け、クレア大尉の言葉にトヴァルは重々しい様子を纏って頷き、唇を噛みしめてユーシスを見つめていたサラだったがすぐに気を取り直してリィンに問いかけた。

「ベルフェゴール、頼めるか?」

「了解♪どこまで送ればいいかしら?」

「俺達突入隊がバリアハートに突入するまで待機していた場所に頼む。」

「わかったわ。じゃ、送ってくるわね~。」

リィンの指示に頷いたベルフェゴールは転移魔術を発動してサラ達と共にその場から消えた。ベルフェゴール達が転移して数秒が経つと扉が開かれ、メンフィル兵達がガレージに現れた!



「お前達は……」

「!アルバレア公爵夫妻を発見!」

「……既に死んでいるな。」

「L小隊、まさか公爵夫妻をお前達が討ち取ったのか?」

ガレージに現れたメンフィル兵達はアルバレア公爵夫妻や領邦軍の兵士達の死体を見つけると驚き、そしてリィン達に問いかけた。

「―――はい、つい先程討ち取ったばかりです。なお、アルバレア公の次男並びに執事を生かして捕えました。」

「アルバレア公の次男まで……!」

「しかも生かして捕えるとは……!」

「大手柄じゃないか、L小隊!」

リィンの報告を聞いたメンフィル兵達は驚いたり、感心した様子でリィン達を見つめ

「―――了解した。よし、後は城館の制圧だけだ!まずは各部隊にアルバレア公爵夫妻がL小隊によって討ち取られた事を連絡し、その後は城館の制圧をするぞ!」

「おおっ!」

すぐに次の行動に移る為にガレージから出て行った。



「……俺も甘いな。幾ら父さんの件があるとはいえ、みすみす”光の剣匠”達を逃がしてしまったんだから。」

「お兄様………」

「―――そんな事はありません。」

メンフィル兵達が去った後溜息を吐いて苦笑しているリィンをセレーネが心配そうな表情で見つめている中ステラが静かな表情で答えた。

「ステラ………?」

ステラの答えを聞いたリィンは不思議そうな表情でステラを見つめた。

「彼―――ユーシスさんの救出の為だけに”戦場”であるこの場に現れ、私達とも剣を交えたのですから彼らの仲間意識は相当なものです。もし、あのまま彼らを捕縛しようとすれば自滅覚悟の激しい抵抗をした可能性も考えられます。彼らにユーシスさんの救出を諦めさせ、素直に撤退させた事は私達にとってもよかったと私は思っています。」

「私もステラさんと同じ考えです、兄様。第一私達メンフィル帝国が戦争している相手はエレボニア帝国ではありますが”メンフィルが滅ぼすべき明確な敵”は貴族連合軍。貴族連合軍ではない勢力―――それもまだ学生の彼らまで捕縛すれば、周辺諸国のメンフィルに対する印象も良くないものへと発展する可能性も考えられますから、兄様の判断は間違っていません。」

「はい……!それにトヴァルさんに対する恩も返さずにトヴァルさん達を捕まえたら、シュバルツァー卿達も悲しむと思いますから、お兄様の判断はわたくしも間違っていないと思いますわ……!」

「万が一貴方達の上司がその件で貴方達を罰しようとすればメンフィルの”客将”が私達が庇って何とかしますから、ご安心ください。最も、後で”代償”として毎晩たっぷりとご主人様に返してもらいますが。ふふふ……」

「リ、リザイラ様……え、えっと、きっと大丈夫ですよ、リィン様。リィン様にとって上司にあたるシグルーン様やゼルギウス様は”軍人”ですが柔軟な考えをお持ちでいらっしゃる方達ですし、誇り高いリフィア殿下もその件でリィン様達を罰するような事はしないと思いますわよ?」

「―――貴方の判断は決して間違っていないと私達も断言できるわ、リィン。」

「みんな………―――ありがとう。」

ステラ達のフォローの言葉を聞いたリィンは目を丸くした後ステラ達に感謝した。



~南クロイツェン街道~



一方その頃サラ達はベルフェゴールの転移魔術によってリィン達突入隊が待機していた場所に現れた。

「ここは………」

「どこかの街道みたいだけど……」

「あ!あれって、バリアハートじゃないか!?」

「ああ……!それにここは南クロイツェン街道だ……!」

「ええっ!?さ、さっきまで僕達、バリアハートにいたのにどうなっているの!?」

街道に現れたガイウスとフィーは不思議そうな表情で周囲を見回し、バリアハートに気づいたマキアスは声を上げ、見覚えがある風景にラウラは驚き、エリオットは困惑していた。

「まさかこんな大人数を無詠唱で転移させるなんて、少なくても”魔女”として最高峰の力を持つヴィータですら比べものにならない術者のようね……」

「うふふ、”上には上がいる”と言う事よ♪それは私だけに限らず、ご主人様達を含めたメンフィル帝国の”力”もそう。今回の件で貴方達も思い知ったでしょう?」

セリーヌに睨まれたベルフェゴールは微笑みながら答えてサラ達に問いかけ

「…………ッ!」

「やれやれ……リィンと言い、エステルと言い、あの二人は一体どうやってこんな非常識過ぎる存在を仲間にできたのか、本気で気になってきたぜ………」

「………我々をあの場から脱出させてくれた事、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。この御恩は一生忘れません。」

ベルフェゴールの言葉を聞いたサラは悔しそうな表情で唇を噛みしめてベルフェゴールを睨み、トヴァルは疲れた表情で溜息を吐き、クレア大尉は静かな表情でベルフェゴールに感謝の言葉を述べた。



「感謝をするのなら、貴女達を逃がす事を決めたお優しい私達のご主人様に感謝しなさい。ま、これにこりたらこれ以上メンフィルとエレボニアの戦争にちょっかいを出さない事ね。」

「待ちなさい!エマ達の暗示はまだ解いていないわよ!」

クレア大尉に指摘し終えたベルフェゴールが去ろうとしたその時セリーヌが制止の声を上げた。

「あら、その娘たちの暗示ならそこのメイドを無力化した後に解いているわよ?―――ほら、ちょうど起きたわよ。」

「う、う~ん……?」

「ん……」

「アリサ!委員長!」

ベルフェゴールに視線を向けられたアリサとエマは目覚め、それを見たエリオットは明るい表情で声を上げ

「それじゃあね~。」

ベルフェゴールは転移魔術でその場から去った。



「あ、あれ……私、さっきまで戦っていたのに……――――え……シャロン!?嘘でしょう……!?起きてよ、シャロン!」

目覚めたアリサは気を失って倒れているシャロンに気づくと表情を青褪めさせて悲痛そうな表情で声を上げ

「セリーヌ……もしかして私達……」

「ええ……さっきまでアンタ達が戦っていた女の暗示にかかっていたのよ。」

エマの疑問にセリーヌは重々しい様子を纏って答えた。

「………とりあえず、まずは手当をした後カレイジャスに作戦失敗の連絡をして、あたし達を回収してもらうわよ……」

そしてサラは重々しい様子を纏って今後の方針をアリサ達に伝えた。



その後バリアハートの防衛部隊はメンフィル軍によって一人残らず殲滅され……ケルディック、オーロックス砦に続いてバリアハートもメンフィル帝国によって占領されてしまった。また今回の戦いによってリィン達L小隊はアルバレア公爵夫妻の殺害とアルバレア公の次男であるユーシスの捕縛に加えてエレボニア最高の剣士と謳われている”光の剣匠”率いるユーシス・アルバレアの救出部隊の撃退と言う大手柄を立てる事ができた。



一方アリサ達はユーシスの救出に失敗し、更には”アルゼイド子爵家”の家宝である”宝剣ガランシャール”が奪われるという事態に陥ってしまった――――――


 
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