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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第二章 Lost Heros
  銀白VS英霊

「あの八神はやてがやられただと!?」

『うん・・・・剣崎さんから連絡があった。今はまた別のところに身を寄せているみたいだけど・・・・』



あの戦いの後、八神はやて陥落の報はすぐに「EARTH」メンバーの間を駆け巡り、激震を起こした。


それはそうだ。
ブレイド達ライダーと、残ったヴォルケンズ達総出を以って蒔風を迎え撃ったというのに、その代償が敗北、しかも八神はやてがやられてしまった。

これはあまりにも大きなダメージだった。



ここは、地方都市「冬木市」
そのまた郊外にある、衛宮邸だ。

そこに、サーヴァントやマスター、総てが集まっていた。
あくまでリストに載っていた者だけだが、それでもかなりの戦力だ。


凛は他のアサシンやキャスターなども呼ぼうと提案したのだが、士朗がそれを許さなかった。
「関係のないあいつらを巻き込むことはできない」らしい。


アーチャーはその考えを甘いと言いそうだが、戦いの範囲が広がれば結果的に被害者が増えるという考えで納得していた。



「だが・・・・・まさかこんなにも早く主力の一人がやられてしまうなど・・・・・」

「そういえば、ギルガメッシュはどうした?あいつも狙われてんだぞ?」

「知らねぇよ。あの金ピカ野郎なら簡単にはやられないだろうよ」



と、応えるのはランサーだ。
現在居間に居るのは、士朗、凛、アーチャー、ランサーだ。イリヤと桜は寝室で寝ていて、その部屋の前にセイバーがいる。
門の前では霊体化したバーサーカーが張っているし、屋根の上ではライダーが周囲を警戒している。


本来ならばライダーの仕事はアーチャーのものなのだが、さすがに休みなしは英霊にもキツイ。
と、言う事で魔眼を持つライダーとの交代になったのだ。魔眼の効果は石化だが、魔眼はそれだけで普通の目を超える性能を持つ。遠くを監視することは別に難しくない。








「それで・・・蒔風の目的が戦いだって・・・どういうことだ!?」

『おそらく、舜は・・・・世界を今まで守ってきた、という責務から離れ、自由に生きてきた。そして、失ってしまったんだ。力の向け先を』

「つまり・・・「奴」の消失が?」

『そうなるかもね・・・・これは士さんが言ってたんだけど、あいつはいつだって「自分」の正義を貫いてきた。それがオレたちに牙を向いただけ・・・だって』

「ふざけやがって・・・・・」

『クラウドさんは「堕ちた」って言ってたけど・・・・』



士朗が話している通信相手は理樹だ。
こうやっていろんなところに情報を流しているらしい。


「そういえば・・・・アリスとの連絡は取れないのか?」

『アリスさんがこの世界にいたのは舜との約束が元だったから・・・・・こっちから彼女に連絡を取ることはできないと思う』

「そうじゃなくても!この現状を見れば・・・・」


そこまで言って、士朗が気付く。
そうだ・・・そういえばこの襲撃事件が始まってから、一度もアリスを見ていないんじゃないか?


『それは僕らも思ってた。だけど、管理者だったらこんな回りくどいことはしない。そもそも、管理者は力があっても人の意志までは変えられないそうなんだ。相手が翼人なら、なおさら』

「じゃあ・・・これは本当に?」

『舜の仕業。しかも、的確にこっちの居場所を突き止めてきている。僕らもそろそろここを離れるところなんだ。一カ所に、しかも、由縁のある場所は絶対にまずいから』

「わかった。オレたちも移動する」

『気をつけて。舜の戦い方は・・・僕らの知ってる舜のものと違うから』





そうして、連絡を切る。
一同はその話を聞いて、気落ちはしたものの、上がることはなかった。


「今の話、本当?」

「らしい・・・信じられるか?こんなの・・・・」


凛の言葉に、士朗が辛そうに答える。
だがそんな彼らに、ランサーだけがいつもと変わらない様子であっけらかんと言った。


「何気落ちしてんだ。「昨日の敵は今日の友」ってのがあんだろ?だったら、「今日の友が明日の敵」ってことがあんのも道理だろうが。敵は敵。やるだけだ」


戦士然としたランサーの言葉に、アーチャーも頷く。
今そのようなためらいがあっては、すぐにやられてしまうぞ、と。




と、そこに




カランカランカラン・・・・・・









衛宮邸に仕掛けられている、侵入者を知らせる音が、静かに、だが確かに鳴った。
その音を察知して、庭にバーサーカーが顕現し、ライダーが降りてくる。


「今の音・・・・!!」

「ああ・・・・誰かが・・・・きた」



否、誰かが、などではない。

彼らは知っている。一体誰がここに来たのか。
しかし、その可能性を消したいというのもまた事実。


出来れば戦いたくないのだ。


心境的にではない。
自らの安全のためにだ。



居間で構えて、待ちうける一同。
何が起こるかわからないため、下手に動くことができないのだ。


だが、こうしていても仕方がない。敵はすでにこの敷地に入っている。


アーチャーが凛と士朗を促して、桜とイリヤを起こしてくるように言った。
確かに、セイバーがいるといっても、今は離れている彼女らの方が心配だ。

こちらに合流させた方がいい。


そうして、二人が居間から出ていこうとして、一歩その敷居を踏み越えたところで









ゴバッ!!!!!









という字練りのような音が、地面の底から轟いてきた。
と、言うかそれはそうだろう。


なぜならば、蒔風のものであろう土惺竜が地面から顎を開いて現れ、居間をばっくりと呑みこんでしまったのだから。



だが、その程度反応できない英霊ではない。
ランサーとアーチャーは怪我も無くその今から脱出していたし、凛と士朗はそのままダッシュして桜とイリヤを起こしに行った。


「怪我はないか?」

「へ、誰に言ってんだ?」


アーチャーの言葉に減らず口をたたくランサーだが、今はそうも言ってられない状況だ。
地面から生えてくるように出てきた土惺竜が、とぐろを巻いてこちらに狙いをすまし、一気に突っ込んできたからだ。

その狙いは、ランサー。



猛烈な勢いで、土惺竜がランサーに向かっていく。
当然、それを避け、回避するランサーだが土惺竜は止まらない。

バーサーカーなどがその体を削っても無駄だ。地面から土を補充してすぐに再生してしまう。


「ク・・・・ッソ!!術者本人が見えねェからゲイ・ボルグも撃てやしねぇ!!!」


ランサーの宝具「ゲイ・ボルグ」は相手の心臓を一撃で破壊する脅威の武器だが、相手が見えなくては狙いようもない。
この土惺竜を止めるには、大質量の大技で吹き飛ばさないと無理だ。しかし、それをやっている間にランサーに直撃してしまう。


そうして、ランサーがどうしようもなく避け続けて、バックステップで下がった瞬間。


ザキュッ!!という音とともに、地面から十五本の刃が突き出てきて、ランサーの体を傷つけていく。


「グア!?・・・ッチィ!!!!」



その剣に足止めと怪我を食らったランサーに、土惺竜が迫る。
だが、その前にバーサーカーが立ちふさがり、巨大な戦斧を以ってそれを真正面から塵芥までに吹き飛ばして防いだ。



「すまねぇな・・・・・」

「・・・・・」


その場を離れ、礼を言うランサーに寡黙で答えるバーサーカー。


そのランサーがさっきまで立っていた場所。
十五の刃が突き出している地面の中から、蒔風がボコリ、と地面を押しのけて出ていた。



「ふう・・・さて・・・・ランサー、傷つけたのは、利き腕か?反対の腕か?まあどっちにしろ、宝具は打てないだろうな」

「貴様・・・・最初からそれが狙いか」

「いーや?それだけじゃないけどね」




そう言って、二枚のカードを取り出す蒔風。
そこにあったのは、イリヤと桜のカードだった。

それを見て、ライダーとバーサーカーが目を見開く。
この男は、土惺竜にランサーを追い回させている間にこの二人を打ち取っていたのだ。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

「シュン・・・・・あなたはッッ!!!!!」



「ああ、部屋の前にセイバーがいた気がしたがな?シカトしていったよ。ランサーのほうが脅威だったし」




そう、いつものように言い放つ蒔風。
と、そこに現状をようやく把握したのか、蒔風に向かって突風の塊が飛んできた。


風王結界による「ストライク・エア」


それを畳返しでその場を動かずに防御する蒔風に、セイバーが突っ込んで行って剣をぶつかり合わせた。


「貴様・・・それでも戦士かッッ!!!!」



ガァン!!



セイバーの剣を弾き、全員を目の前に見据えながら、蒔風が剣を構える。


「・・・・ライダー、バーサーカー・・・・申し訳ございません。イリヤスフィールとサクラを・・・・・私は・・・・」

「そう思うなら、あの男を殺すために全力で協力してもらいます」

「■■■■■■■■!!!!!」



セイバーの謝罪に、ライダーが応え、バーサーカーも何かを叫んだ。
その言葉に、セイバーがより一層覚悟を決めた。

こいつはここで倒すと。




「ランサー、君は戦えるか?」

「へ、なめんな。宝具は打てなくても槍をふるうことはできらぁ」

「その元気があるなら、少し頼まれごとをしてくれないか?」

「あん?」










と、各々が小声で話していると、蒔風が待ちきれないとばかりに声を荒げた。



「おいおいおいおい・・・・早くしろよ!!!じゃねぇとこっちから・・・」



ゴォッ、ドォン!!!




「んおッ!?」



「ハアアアアアアアアアア!!!!」


ガゴンッ!!!



蒔風がそうしてしびれを切らして走り出そうとした瞬間。
まさにそのタイミングでセイバーとバーサーカーが同時に突っ込んできた。


(う・・・うまいなッ!?・・・・くっそ!!!!)



そのタイミングは完璧だった。
蒔風はこれから駆けだすという体制で、そこに向かって突っ込んでいったのだから、蒔風の行動はどうやったって咄嗟になる。


その攻撃を前周りに受け身を取ってすり抜け立ち上がり、右にセイバー、バーサーカーを、左にアーチャーたちを取るという、挟み込まれた形にされた蒔風。




「よし・・・!!!」

「周囲を囲め・・・凛は絶対にこちらに来るなよ!!!」



「わ、わかってるわよ!!!」



「・・・・・・」




周囲を囲んだサーヴァントたちを見て、蒔風が息を深く整える。
アーチャーが凛と士朗にこちらには来ないように注意し、二人がそれに従う。


これからの戦いに、生身の人間が入り込んでいいものではない。




そして、動く。





バーサーカーが戦斧を地面に叩きつけ、その衝撃が地面を跳ねあげながら蒔風に向かう。
だが、それを蒔風は先ほどと同じように畳返しで防ぎ、その姿を一瞬二人から消す。



その間に蒔風は屋敷側、つまりはアーチャー達に向かい、武器を振るう。



走りながら十五天帝を次々と投げ、アーチャーを串刺しにしようとする。
だが、ここで蒔風が疑問に思う。



ランサーがいない。



一体彼がどこに行ったのか。
それは疑問になったものの、今の彼は宝具を使えないので無視することにした。

むしろ今の相手がアーチャーとライダーになった事のほうが僥倖だ。



が、ただ飛んでくるだけの剣ならアーチャーに当たることはない。
そのすべてがかわされ、屋敷や地面に剣が突き刺さる。


そして、アーチャーの手にいつもの「干将・莫邪」が投影されて、それが蒔風に向かって振るわれた。
それを手元に残った天馬で受け止め、背中から翼を出した。

器用なことに、翼の先端が回り込むようにアーチャの背中を左右から狙う。


だが、アーチャーはそれを受け止めながらも蒔風の腕を器用に蹴り、反転ジャンプしてその「枠」から逃れ、そのタイミングを見計らってライダーが鉄杭を投げ放ってきた。


それを肩に受け蒔風が痛そうに顔をゆがめるが、それを掴んでライダーを引っ張り上げてきた。



無論、ライダーは英霊だ。
そのような力押しで負けるようなことなどない。


多少ぐらついたものの、しっかりとその引っ張り合いに勝っている。
そして、それを引きながらライダーが目を隠している眼帯に手をかけ、その双眸をあらわにした。


「なグッ!?」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」



いきなり体が硬直する蒔風。
その背後から降りあげられ、猛烈な勢いで振り下ろされる巨大な戦斧。



(キュベレイ・・・・石化の魔眼!!・・・・・)




ドゴォッ!!!!




直後、蒔風の身体が戦斧の下に消えたかどうかも見えず、一瞬で猛烈な土煙を上げていった。
その衝撃は凄まじく、周囲にいたセイバー達は空気に叩かれたような衝撃を受けていたほどだ。



さすがにこの一撃。
やったか!?と、凛と士朗は思った。

他の者も、楽観視するつもりはなくとも少なからずそう思っただろう。


この場にいる者は皆、あの一撃の重さを知っている。
しかも、イリヤを奪った者に対してだ。容赦など欠片も無いに決まっている。


しかし





ザキッ!!ザギギギギギギギギギギギギギ!!!!





なにかが土煙の中に湯っ込んでいき、金属の刃が肉を貫いていく音が中からしてきた。
直後に、土煙が晴れる。




現れたのは、バーサーカーと蒔風だ。




そして、バーサーカーには十五天帝すべてが急所に突き刺さっており、蒔風が何かをバーサーカーに向かってかざしていた。
バーサーカーの戦斧は、その「何か」の前でピタリと止まっており、その踏み込んだ足は地面にめり込むほど踏みとどめられている。



蒔風が持っていた剣は、天馬。中心となる剣だ。
だから、ここにこうして十五天帝のすべてが集まってきたのは不思議ではない。


しかしどうやって、蒔風はあの状態から石化を解き、バーサーカーの攻撃を止めたのか。






繰り返すが、蒔風の持っていた剣は天馬だ。
そして、ライダーの真名は「メデューサ」。彼女は自らの仔である「天馬(ペガサス)」を駆る。

彼女ら英霊は「概念」というものに縛られる存在だ。
いくら蛇より強くても、過去蛇に負けた逸話を有すれば圧倒的な弱点、天敵になる。また、力は弱くとも信じられないような化け物に勝っていれば、そう言ったモノに対して優位になれる。

つまり直接の関係などなくとも、「天馬」という存在はライダーにとっては使役対象であり、その効力を緩和できる。
敵を石化させた際、自らの天馬まで石化させては元も子もないからだ。


無論、こちらの天馬にとってそんな事実は知ったことではない。
バーサーカーが止まった瞬間、蒔風の手から人神体になって飛び出し、剣に戻って突き刺さり、他の剣を集めればいいだけなのだから。



そして、どうやってバーサーカーを止めたのか。



その答えを見せるかのごとく、効力が弱まったのか蒔風の身体に自由が戻る。
そして、その盾のように掲げていたものを皆に見せながら、蒔風がライダーやアーチャー、そちら側にまわったセイバーに向かって歩いてきた。





狂戦士(バーサーカー)なんて言いながら、かわいい事にこいつには人質が効く」




そして、カードを振りながらいやらしく笑って見せた。




イリヤのカード(これ)見せたらさ、簡単に止まったよ!!!!」




そう言い放って見せる蒔風。

あの時の土煙は、振り下ろすのを止めるためにバーサーカーが地面に踏みとどまった際に起こったものだったのだ。
そしてその理由が、イリヤのカード。



それを前にして、バーサーカーは止まったのだ。
それを見せつけた蒔風の後ろで、バーサーカーが光りになって消え、カードになって蒔風の手に収まる。




「しっかり十五回、だ。三回はオーバーキルかな?」



「蒔風・・・貴様・・・誇りはどうした!!!!戦士の誇りを・・・失ったのか!!!!」


その蒔風に、セイバーが叫ぶ。
騎士王とまで言われる彼女だからこそ、この男のやり方は許せなかった。

ここまで戦士を侮辱した戦いなど、許されていいはずかない。



だが、蒔風は



「戦士の誇り?間違っているな、セイバーよ。オレは決して戦士じゃない。お前と最初にやり合ったときを忘れたか?オレの本領は・・・・・」





ドフン!!!!



そこで蒔風が地面を踏み抜き、自分の身体を土煙に隠す。


「これは・・・・」

「舐めているのか・・・・蒔風ッ!!!」



そう、それはかつてここで行った模擬試合。その時蒔風は取った戦法と全く同じだった。
その中にセイバーが突っ込んで行こうとする。


しかし



「行くな!!セイバー!!!!」



アーチャーがそれを止める。
その瞬間


土煙の中から蒔風が飛び出してきた。



まったく予期することのできないその突進に、セイバーがとっさに反応してそれをいなし、後ろに流す。


だが、彼の狙いは最初からセイバーなどではなかった。




「アーチャー・・・・撃ち取ったり!!!」



青龍刀を構え、アーチャーに振るって来る蒔風。
しかし、その動きが止まる。


ライダーだ。
ライダーがその目を以って再び蒔風を止め、同時に横っ腹に鉄杭を突き刺していた。


しかし、そこでライダーが異変に気付く。
一気に動いたためここまでやってしまったが、魔眼を発動させた瞬間に気付いたのだ。



「アーチャー!!こいつは・・・・」

「ネタばれは禁止だよ」


シュカッ!!


「!?・・・カッ!?・・・カ・・・・ヒッ・・・・ア・・・・・」



ライダーの言葉と共に蒔風の言葉が聞こえ、彼女の首がかっ切られていた。
ライダーの姿が光と消える。


何が何だかわからないアーチャー。
だが、比較的にではあるが一人離れていたセイバーは気付いていた。


残っている土煙の中から、蒔風が「もう一人」飛び出してきたということに。



と、その瞬間に魔眼が切れ、アーチャーに斬りかかっていた蒔風の身体が一瞬で青龍の巨大な獣神体へと変わり、その体を締めあげていった。
そう、こちらの蒔風は、青龍の変化体だった。




今までの戦い、凛と士朗は離れて見ていたが、何が起こっているのか全く分からない。
いや、眼には見えているのだ。魔力を目に回し、それを強化して様子を見ていたのだから。

しかし、そこで隙があれば宝石魔術や投影した剣を投げつけようと思っていた二人の思惑は外れた。


まったくその隙がないのだ。
あっても、そこにはすかさずサーヴァントたちが攻撃に入っている。
自分たち魔術師はあくまでも人間だという事を、否でも思い知らされる。


今も、アーチャーが締めあげられていくのを見ていることしかできない。



が、その巨大な身体をセイバーが逃すはずがない。
剣を振るって、その体に斬りかかっていく。

しかし、当然その前には蒔風が立ちふさがる。



「ッ・・・貴様!!」

「オレの青龍をいじめないでくれよなぁ?」




ギィン!!!



そういって交戦する二人。
だが、蒔風はどう見ても全力を出していない。

楽しんでいるのだ。
セイバーとの打ち合いを。そして、アーチャーを見て悔しそうに顔をゆがめるセイバーを見て。



「ヌあああああッ・・・・・ッッ!!!『身体は剣でできている』・・・・・!!!!」




だが、そうしている後ろで爆発音が起き、青龍の腹部が爆ぜた。
何事かとセイバーがそちらに目を向けるが、わかりきっている蒔風はそのセイバーの腹を蹴りだして押しのける。

そして、まったく振り返ることなく、後ろの状況を正確に口にした。



「・・・・・至近距離での「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)」か。無茶するよなぁ?青龍、戻れ」



と、青龍を脇の鞘に戻し、そこで振り返る。
アーチャーの腹部からは煙が上がり、口からは血がこぼれる。


「アーチャー!!!」

「っと、テメェはこの期に及んでオレを無視すんな!!!」

「ッ!!」



パンパンパン!と銃声が鳴り、セイバーに銃弾が飛んで行く。
それを弾くセイバーだが、それと同時に投げつけられてきた手榴弾の爆発に、少しばかり後退する。



そこで少し落ち着いたのか、蒔風がアーチャーに言葉を向けた。


「ランサーがどこに行ったかは・・・・・わからん?」

「貴様に・・・教える義理はないな・・・・・・」


「おお、息絶え絶え。だがまあ、大方言峰教会だろう。あそこにいる自分のマスターに助けを求めに行ったか?」

「・・・・・・」


そこまで読まれて、アーチャーに揺らぎはない。
なぜなら、そろそろランサーが戻ってくるころだったからだ。


「彼女」の「アレ」ならば、蒔風に絶対的に有効だろうと。



そう考えていたアーチャーには、また勝算があった。



しかし




「あー、すまん。もうわかってんだわ」



ズンッ、と地面に手を突っ込み、そこからズルズルと何か巨大な筒を抜く。
知ってる者は知っている。


それの筒の名は「イノーメスカノン」
時空管理局で押収されていたその巨大な大砲を、蒔風はここまで持って来て、地面に潜んでいる時に埋めっぱなしにしていたのだ。


後は簡単。
自分の立っている場所に土惺の力で移動させて引き抜くだけだ。


「そっち」




ドォン!!!!





そう一言だけいって、蒔風がイノーメスカノンを最高出力で発射させる。


と、ちょうどその延長線上に、自身のマスター「カレン・オルテンシア」を抱えて屋根を跳躍してきたランサーが現れた。



「ッッッオオオオオオ!?」



ドッゴオ!!!!!




そして、直撃―――というよりは直前で爆発し、二人を飲み込んだ。

しかし、結果は変わらない。空中の彼に、避けるすべなどなかった。
光が一つだけ走り、煙からランサーが落ち、何とか着地する。




そして光からはカードが飛び出して、蒔風の手に。
カードにはカレンの姿が描かれていた。



「来るならそっちの方向だと思っていた」

「な・・・・・・」

「彼女の持つ礼装「マグダラの聖骸布」は男性に対して強力な拘束力を持つ。それを持ってこられると厄介だからな。いい手だが、それなら最初から用意しておくべきだった」


「なん・・・だと!?」



アーチャーが腹を押さえこみながら驚愕する。



なぜならば、蒔風とカレンに面識はないはずだからだ。



確かに、会話の中に出てきたことはあったし、「EARTH」設立の際にその存在を知ってもいただろう。
だが、彼女の持つ礼装や、その能力まで把握していることなどあり得ない。




一体どこで知ったのか。
彼はいったい何者なのか、本気で困惑し始めるアーチャー。

と、話しているところで、蒔風の首元に槍が振るわれる。
それをパシッ、と片手で受け止める蒔風。

ランサーは耐えたと言っても、あの砲撃はあの世界でランクSとまで言われる威力を持っていた。

ダメージは、かなり刻まれている。



そのランサーにイノーメスカノンを真上から降り降ろして叩きつける。
ランサーはそれを槍を横にして頭上で受け止めるが、ベキョ!!と巨大な砲首がへし曲がり、イノーメスカノンが爆発した。



その爆破に吹き飛んで地面に倒れるランサー。


現状を見て、五体満足なのはセイバーのみ。
魔術師とはいえ人間の凛や士朗にこの男は手に負えない。

自分は脱出のためとはいえ爆破をゼロ距離で受け、ランサーはダメージを負い過ぎた。



それを見て、アーチャーが覚悟を決める。




「セイバー!!ランサーと凛たちを連れて、この場から逃げろ!!!」



「アーチャー!?」



と、それと同時にアーチャーが一瞬の間に詠唱し、固有結界を発動させる。


そのために魔力を取られたマスターの凛が具合を崩したように倒れ、士郎が支える。
それを見て、セイバーも決心した。

倒れるランサーを抱え、二人の元に向かって更に担いで逃走を図る。


それ止めようとする蒔風だが、すでに固有結界は発動している。
アーチャーの無数の剣が、蒔風に向かって降り注いで行く。





「クソッ・・・心象的世界破壊(イマジナリティ・ワールドエンド)




それに対し、蒔風も固有結界を展開させ、打ち消してきた。
この場合、打ち消したのは固有結界そのものをだ。


固有結界という魔法に限りなく近い魔術は、世界を侵食するものである。
故に、それを発動させると同時に世界空の修正力が働き、維持するためにはかなりの魔力量と意志が必要になるのだが、こうして固有結界を重複して発動させてしまった場合、それぞれの結界が反発しあい、消滅してしまう。


しかし、その反動は凄まじい。
アーチャーはそのまま地面に倒れ、蒔風は胸を押さえて脂汗をたらしている。


が、それでもやることはやる。

アーチャーの胸に「天」を投げ放って刺し、その体をカードに変える。
そして、三人を抱えて衛宮家の塀の上から跳躍しようとするセイバーに向かって手を伸ばし、簡易的にだが獄炎弾を三発、正確に放った。



しかし、それは彼女らには届かない。




灰色のオーロラが彼女らを覆い、どこかへと連れ去ってしまったからだ。




「ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・・あれは・・・・・・」




そして、そのオーロラが蒔風の前にも表れ、そこから四人の影が現れた。


その四人は




「間に合わなかったか・・・・」

「だが、彼女らは逃がしたよ」

「舜・・・・お前はオレたちが倒す!!」

「もう・・・・私も容赦しません」




世界を旅する仮面ライダー。



破壊者・ディケイド





彼と、その仲間だった。












to be continued

 
 

 
後書き
ライダー
「私がやられた後にライダーがやってくるんですか」


「あ、そうなるね」


バーサーカー
「■■■■■・・・・・」

イリヤ
「文句言わないのバーサーカー。私と桜なんて寝ている間に一瞬よ?」


マークの柄は、全員それぞれの令呪のマーク、でした。




とりあえず、アリスは連絡が取れません。
蒔風にやられているのか、それとも・・・・・

カレン
「なんで私の事を知っていたのかもわかりませんしね」


「そうそう!!なんででしょうか?」


それはこの事件の秘密に結構関わってきます。


イリヤ
「え?え?どういうこと!?」

バーサーカー「■■■■(正解)」

イリヤ
「なるほど!!!」



ライダー
「わかるんですか!?」




「次回、このまま連戦。世界の破壊者です!!」

ではまた次回




リスト残り


キョン
朝比奈みくる
長門有希
古泉一樹
響鬼
ハクオロ
エルルゥ
オボロ
べナウィ
クロウ
カルラ
トウカ
泉戸裕理
泉戸ましろ
応龍

城戸真司
秋山連
吉井明久
姫路瑞樹
島田美波
木下秀吉
土屋康太
津上翔一
芦原涼
氷川誠
上条当麻
インデックス
御坂美琴
クラウド・ストライフ
前原圭一
竜宮レナ
園崎魅音
園崎詩音
北条沙都子
古手梨花
古手羽入
国崎往人
神尾美鈴
門矢士
小野寺ユウスケ
光夏海
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
キンタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
棗鈴
井ノ原真人
宮沢謙吾
来ケ谷唯湖
三枝葉留佳
乾巧
衛宮士朗
セイバー
遠坂凛
ランサー
ギルガメッシュ
天道総司
加賀美新
矢車想
剣崎一真
皐月駆
水奈瀬ゆか
草壁美鈴
橘菊理
広原雪子
田島賢久
百野栞
紅渡
ガルル
バッシャー
ドッガ
左翔太郎
フィリップ
高町なのは
フェイト・T・ハラオウン
アリシア・テスタロッサ
シグナム
ヴィータ
リィンフォースⅡ
スバル・ナカジマ
ティアナ・ランスター
キャロ・エ・ルシエ
エリオ・モンディアル

 
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