世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
襲撃者、止まらず
桜井侑斗が襲撃されてから数日。
まるでその事が嘘だったかのように、それ以来襲撃はぱったりと止んでいた。
「なぜ・・・なにもアクションがないんだ?」
「おそらく警戒してるんだろう。前回の襲撃は多分、二人まとめて仕留めるはずだったんだろうからな」
一刀と蒔風が、「EARTH」にある指令室で現状を話し合っていた。
侑斗を襲った襲撃者は、おそらくデネブも一緒に倒してしまうつもりだったのだろう。
そうすれば、あの広大な時の砂漠の中だ。見つけることは難しい。
だが結果としてデネブは逃げ、事は「EARTH」全体に知れ渡ることになった。
こうなっては、敵も手を出しにくいのだろう。
しかし、ここまでだ。
ここまで推察して、二人の考えは行き詰ってしまった。
一方、「EARTH」地下ドックでは、いまだに大破したゼロライナーナギナタの調査が行われており、何か小さな証拠一つでもないか探されている。
「あかん・・・なにも見つからへん」
「この「時の列車システム」自体も、どこの時間でどんなふうに作られたかわからないんだもんねぇ」
「オーナーさんの協力があっても・・・私たちではこれ以上は何もわからないわね・・・」
そう理樹に報告しているのは魏国で工兵をしていた武将、真桜と、デバイスマスターのシャーリーという、機械に強い二人だ。
さらに機械のデータを見るという意味合いで、御坂美琴も来ている。
が、その調査結果は芳しくはないようだ。
なにぶん、損傷がひどすぎるのだ。
残ったデータは軒並み破損。
回収したのはゼロライナーだったモノだけという惨状。
修理にはまだ数日間かかりそうで、走り出すかどうかは五分五分だそうだ。
「そう・・・何の手がかりもないんだね?」
「そうなりますわな。こっから何かを見つけ出すのは、ちょっと無理があると思わん?」
「私も見たけど、もうなにも残ってないわよ。証拠っぽいのはあったけど、多分どれもハズレね」
「こういう時じゃなきゃ、楽しんで解析するんですけど・・・事件ですもんね・・・・」
襲撃者の証拠はない。
正体は依然として不明。
そう感じ取った理樹は、彼女らに礼を言ってから、ゼロライナーの修復に取り掛かってくださいと頭を下げて、蒔風に報告を入れる。
その報告を受け、蒔風が指令室のモニターを見る。
あれから、世界はなにも起きていない。
なにも無さ過ぎるのだ。
その事が、余計に恐怖を感じさせる。
「なにが・・・起きているんだ?」
「桜井侑斗との連絡、依然として付きません」
「こうなると・・・本格的に監禁されているか、消されたか・・・・」
オペレーター要員として席に座る朱里や雛里からの報告を聞き、更に頭を悩ませる蒔風。
と、そこに、プープープー、という電話音が鳴って、蒔風がその電話にでる。
どうやら外部からの電話で、蒔風に聞きたいことがあるそうなのだが・・・・
「ああ、繋いでくれ」
「はい。三番の通信です」
その電話をここにつないでもらい、受話器のボタンを押して話し始める蒔風。
「もしもし。蒔風ですが」
『あ、蒔風?覚えてる?私よ、藤林杏』
「おお、どうした?」
『いやぁね?朋也と渚が旅行に行くっているから、汐ちゃんを預かってるんだけど、実は・・・・・』
「うん・・・?・・・・・な・・・・・・・・わかった。じゃあ汐ちゃんは渚の両親に預けといてくれ。ごめんな」
『はいはーい。まあ、久しぶりに二人で水入らずの旅行に行ってるんだから、しょうがないと思うけどねー』
「まあ・・・そんなもんだろ」
『うんうん。よかったー。じゃあ、そっちに連絡入れとくわ。じゃーねー』
プツン
そうして会話が終わり、蒔風が受話器を置く。
それと同時に、携帯を開いてあるところに電話をかけた。
だが、繋がらなかったのか、もう一回、今度は別のところにかけてみるが、やはり繋がらない。
「どうした、蒔風」
「おい。今そこらへん見回って来たが、「EARTH」の周りに変な奴はいなかったぞ」
「オレたちの方も・・・どうした?血相変えて。なにかあったのか?」
と、そこに「EARTH」ビル周辺に怪しいものがいないかを見てきた天道達や士達が指令室に入ってくる。
その言葉に、蒔風がイラついたように身体を揺らし、たたんだ携帯をダン!!と机の上に叩きつけて指令室全体に指示を飛ばした。
「全員!!各世界の主要、最主要人物だった者の安否を確認しろ!!いいか!「EARTH」登録、非登録に関わらずだ!!!」
「い、いったいどうした」
「リストはここにある。全員の所在を明らかにしろ!!!急げ!!」
その言葉に、訳もかからない状態だがとりあえず蒔風がだした携帯のアドレス帳に入っている各主要、最主要人物へと、連絡がとらされて行く。
そうして、最初の報告を待つ。
それまでに、三分とかかりはしなかった。
「岡崎夫妻が旅行と言って家を出たきり連絡が途絶・・・・・娘の汐は、彼らの友人の保母に預けられているようです・・・」
「それは聞いた。今の電話だな・・・他は!?」
「文月学園の坂本雄二が、数日間学校に出てません。彼を慕っている霧島翔子という同級生も同様です」
「吉井明久によればきっと彼女のキツイアプローチから逃げているのだろうという事ですが・・・・」
「泉こなたさんたち四人が、学校に休学届を出して旅行に出たそうですが・・・・位置がつかめません。なお、どこの鉄道、飛行機にも、彼女らが乗ったという記録はないです」
「あいつらはまだ高校生だ・・・免許持ってる奴もいないし、旅行なら鉄道か飛行機しかないはずなのに・・・・!!」
「川神市の直江大和が、友人に会ってくると言って昨日寮を出てから帰っていないそうです」
「誰に会うかは?」
「誰も聞いてないようです・・・・彼の交友関係は広いため、特定は難しいかと・・・・」
「お、おい・・・蒔風・・・・」
「まさか・・・これは・・・・」
「ああ・・・・最悪だ・・・・完全にやられた!!!」
一連の報告を聞き、蒔風が机に両手を叩きつけて俯く。
そして起き上がりながら、今明らかになったその事を、憎々しげに言い放った。
「狙われてんのは「EARTH」だとかそんなんじゃない・・・・・各世界で、主要、最主要だった者たちだ!!!」
「な・・・・」
「主要、最主要たちが・・・・・狙われている!?」
蒔風の言葉に、驚愕する一同。
いままで、狙われているのは世界だとか「EARTH」だとかと思い、危機の通達を戦闘力のある「EARTH」登録の戦士のみに行ってきた。
だが、そうではなかったのだ。
敵の目標は、主人公たちだった。
しかも、彼らがいなくなった時間を考えれば、それはゼロライナー襲撃よりも前だ。
つまり
「とっくに事件は始まってたんだ・・・・・唐突にどころじゃねえ・・・とんだ『後出し』だ!!!クソッタレ!!!」
このいままで、襲撃に会っていたのは力なき者たちだった。
なにも起こっていなかったわけではない。何か起こっていたにもかかわらず、それに気付けなかったのだ。
「チクショウ!!!他に!!連絡の取れないものはいるか!?」
「舜君。見回り終わったよー。皆もじきに戻ってくると思うんや。だからここで・・・・って、どうしたん?なにかあったん?」
そこに、士達と同じように、別エリアを見回っていたはやてが戻ってきた。
どうやら、ヴォルケンズとは別々に行動しているらしく、ここで合流するつもりだったのだそうだが・・・・・
「・・・・・・・反応が・・・・ロスト・・・・・」
「ッッ!!どこで!!誰がだ!!!」
オペレーターの言葉に、蒔風が振り返ってその席へと近づく。
「場所は・・・・そんな・・・ポイント00より、西に三キロの地点・・・・・」
「ポイント00・・・・からだと?」
「そこ・・・って・・・・・・」
「ここ・・・・」
「「EARTH」・・・・本部ビルから三キロです・・・・・・!!!!」
「バカな!!!!!」
報告に、蒔風が部屋を飛び出してその位置に走っていく。
その後を士達も追うが、入っていたばかりのはやては、その場にぺたりと座りこんでしまった。
そのはやてを、天道がとっさに支えて立ち上がらせる。
「そ・・・・その位置って・・・・・・たしか・・・・」
「・・・・ロストしたのは・・・・誰だ」
はやてが恐怖に目を見開き、天道が覚悟を決めてオペレーターに聞く。
そして、帰ってきた返答は、何より残酷なものだった。
「ロスト反応者は、ヴォルケンリッター・・・・・ザフィーラとシャマルです」
「~~~~~~~~~~~ッッ!!!」
それを聞いて、はやてがその場に再び倒れる。
だが、今度はあまりのショックに立ち上がれない。
そんな彼女を、天道が壁際のソファに座らせ、モニター上の地図に写るその地点を睨みつけていた。
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「・・・・・・・・・なにがあった・・・・・・」
現場に到着し、蒔風が呟く。
だが、それに応える者などいない。
「なにがあった・・・・・・」
現場は、大通りから外れた裏道。
ビルとビルの、広い隙間だった。
「一体ここで・・・・なにがあった!!!」
蒔風が叫ぶ、だが、やはり何も答える者はいない。
残っていたのは、両側のビル壁に残った、何らかの攻撃でつけられた抉り跡。
そして、はやて達とヴォルケンズ分、計八人分の飲み物の入ったコンビニのビニール袋が転がっていた。
これが示すことはたった一つ。
ついに、襲撃者が本格的に動き出したという事だった。
to be continued
後書き
ついにあの、ヴォルケンリッターの一角までもが墜ちてしまいました!!!
ザフィーラ
「我々がどのように負けたのかの描写もなしか・・・・・」
シャマル
「確かに私たちは戦闘向きじゃないですけど・・・・・」
ザフィーラ
「だが、襲撃してきた瞬間、俺は見たぞ」
シャマル
「私も見ました!!襲撃者!!でも・・・・」
はい、そこまで。
それ以上はダーメダーメよ?
ザフィーラ
「む、そうか・・・・ならばその情報、この盾の守護獣が守って見せよう」
シャマル
「次回から、どんどんやられていってしまうみたいですよ?さあ、どうなるのか!!」
なんだか楽しそうだね
ではまた次回
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