機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
間章 6話 地球が凍結した日
前書き
本作品では、日本列島は大西洋連邦領になっています。
C.E 70年 3月15日
ビクトリア攻略戦より8日後の3月15日 プラント最高評議会は、前作戦の失敗を踏まえて立案された
・「地上での支援戦力を得るための軍事拠点を確保」
・「宇宙港やマスドライバー基地制圧による地球連合軍を地上に封じ込める」
・「核兵器、核分裂エネルギーの供給抑止となるニュートロンジャマーの敷設」
の三柱からなる赤道封鎖作戦「オペレーション・ウロボロス」を可決した。
3つ目のニュートロンジャマーの敷設は、開戦直後に行われた地球連合軍の核攻撃 血のバレンタインの報復 という側面が存在した。
当初、プラント内では、パトリック・ザラを中心とする強硬派が地球主要都市に対する限定核攻撃を主張していた強硬派の報復案の中には、廃棄コロニーや資源衛星を地球に落下させるという荒唐無稽なものさえあった。
これに対し、プラントの穏健派は、核攻撃による報復を招く危険性があると反対した。
現状、プラントに対しての核攻撃はニュートロンジャマーによって不可能となっていたが、スペースコロニーを破壊するのは、艦隊の艦砲射撃でも可能な為、未だに地球連合の有力な宇宙艦隊が月に存在する状況では 報復核攻撃にはリスクがあったからである。
そして穏健派はその対案として核兵器を使用不能にし、通信網を遮断することで地上戦を遂行可能に出来、更には、ニュートロンジャマーによる原発停止による混乱で戦わずして地球連合を瓦解させる可能性もある地球上へのニュートロンジャマー敷設を主張し、それが通ったという経緯があった。
この時、あるプラント最高評議会員は、「野蛮な核攻撃を行った地球連合に対して、核を使用不能にするという プラントの理性を示した決断である」と発言している。
それが、歴史的に真逆の評価を与えられるとも知らず………
同時に全世界に向けてグーン、ザウート、バクゥ、ディン、シグーなど新型MSの存在を全世界に対して発表した。 これはには、プロパガンダの要素が多分にあった。
実機が量産可能だったのは、ジンの改良型のシグー、コロニー内建設作業用重機を転用した移動砲台 ザウートのみで グーンとディンは試作機がようやく製造され、 バクゥに至っては、未だに実機すら完成していない為、3Dプリンターを用いた実寸大の模型を使用する始末であった。
これら発表された「新型機」に対して地球連合軍の将官達は一部を除き、嘲笑した。
これは、ビクトリア攻略戦での勝利もあったが、宇宙は兎も角、広大で重力や自然環境
の存在する地球に「コロニー軍」に過ぎないザフトが侵攻するなど無謀を通り越して冗談である
と考えていた為である。
そして、人類は、地球は、運命の4月1日を迎えることとなる………
C.E 70年 4月1日
地球軌道を一時的に制圧したザフト艦隊は、地球上に対してニュートロンジャマーを投下、
地上に投下されたニュートロンジャマーの正確な数は120から1000ともいわれているが、
正確な数は、ザフトが秘密裡に製造していた点もあり不明である。
地球全土に散布されたニュートロンジャマーは、一定の高度に達すると決められたプログラムに従い次々と作動した。
直後、地球全土では通信障害が発生し、再構築戦争以来、地球の大部分に置いて主要なエネルギー源となっていた原子力発電所がその機能を停止した。
突如発生したエネルギー危機になすすべもなく、その電力の過半を原発に頼っていた地域は、暗闇に落ちた。
突如信号が停止したことで道路では、交通事故が多発した。
大西洋連邦のある州では 、この日だけで、一年の平均的な交通事故の発生件数の3倍以上もの事故がこの時発生したということさえあった。
さらに突如として発生した停電による暗闇と混乱を利用した犯罪も多発し、対応すべき警察機構も混乱の中でまともに活動できるはずもなかった。
病院は、停電後も非常電源によって機能を失っておらず、重篤患者に対して一部医師達の必死の看護を行った。 だがそれは、非常電が停止するまで重篤患者の命を延ばす空しい行為に過ぎなかった。
飲食店やスーパーでは、単なる箱と化した冷凍保管庫の中の生肉を初めとする食料品が、次々と腐敗を初めていた。
更に大学や研究機関で冷凍保存されていたS2インフルエンザやその変異体を中心とする病原菌が次々と冷凍庫の停止によって目覚めつつあった。
さらに電波障害によって起った通信障害で空港では、管制不能となった航空機が次々と事故を引き起こした。
ユーラシア連邦のフランクフルト国際空港では、管制塔からの指示を失った旅客機5機が滑走路と周辺に墜落し、1000人以上の死傷者が生まれた。
この際に行方不明になった船舶、航空機は、農薬散布用等の自家用機等まで含めると確認不可能な数値を記録した。
更に有人飛行機だけでなく、無人飛行機に至っては、誘導電波や衛星からの地図、気候データが得られなくなったことで制御不能に陥って、その全てが、墜落して行った。
それでも軍用機や政府機関の使用しているタイプは、緊急不時着プログラムが正常に作動して事なきを得たが、大半は、地上にそのまま激突し、被害を及ぼした。北米では、自然公園等で環境データ採取に用いられていたドローンが多数墜落し、その一部が山火事を引き起こした。
一部港湾では、誘導を失った船舶同士が激突し、船舶の残骸により閉塞されたことで使用不能となった。
原子力潜水艦や原子力空母を初めとする原子力艦艇は、突如動力を機能停止に追い込まれ、幸い、サブの通常動力で付近の港湾に避難する事で、重大な事故を引き起こした艦は存在しなかったが、これでは戦闘には投入できない為、戦力価値を喪失した。
地球連合の海軍力の大半は、ザフト軍の魚雷やミサイルを受ける前に失われたことを意味した。
これら重大な被害に対して、迅速に対応すべき地球連合の中核をなす理事国や取るに足らない小国の指導者、政府に至るまで電波障害による情報途絶によって被害の全貌を把握することは叶わなかった。
民間でもテレビやインターネットといったメディアの機能停止による混乱が発生していた。
人類最悪のエープリルフールはこうして幕を開けたのであった。
このエープリルフール・クライシスで特に被害が酷かったのは、原発がエネルギー生産の中心を占めていた大西洋連邦とアフリカ連合、東アジア共和国の中国地区10州とユーラシア連邦のフランス州とその電力に依存する周辺地区だった。
また大西洋連邦のアラスカ州、ユーラシア連邦のロシア州などの寒冷地では、凍死者、餓死者が大量発生した。
中には、住民や建物が、そのまま凍りついた都市すら存在した程である。
逆にアフリカや中東、インド、東南アジア等では、冷房や浄水場の停止によって渇きや熱中症、浄水施設が機能停止したことにより、清潔な水の調達が困難になったことによる衛生面の悪化で、伝染病の流行による犠牲者が発生した。
特にアフリカ連合は、混乱に乗じる形でエジプト州、リビア州等初めとする北部が独立を宣言、アフリカ連合の一極支配の打倒を訴えた。
こうしてアフリカ連合は、後にザフト軍の支援を受け、親プラント国家のアフリカ共同体とアフリカ再統一を国是とする南アフリカ統一機構に分裂することとなった。
逆に被害が少なかったのは、再構築戦争以前に原発からレーザー核融合炉や太陽光発電その他の発電方法に転換していたスカンジナビア王国、大西洋連邦領 日本列島、 ユーラシア連邦領 ヨーロッパ地区の一部、太平洋に存在する国家 オーブ連合首長国等であった。
特にオーブは、赤道連合、汎ムスリム会議に対してエネルギー、物資支援を行い、それと引き換えに中立国家同盟を維持するように要請した。
ユーラシア連邦と東アジア共和国は、中立国の2か国に硬軟織り交ぜた圧力をかけ、支援物資輸入の密約を締結させた。
これにより、2ヵ国からオーブの高性能太陽光パネルや宇宙艦艇の動力源である核融合炉用のレンズ等を初めとする戦略物資が、地球連合に流れ込むこととなった。
この物資のルートは、通過する地域が赤道連合のベトナムを除き旧イスラム圏であったことからモスク・ルートと呼ばれることとなる。
また地球唯一の親プラント国家であった大洋州連合は、事前にプラント側からの通告を受けていたことで混乱は少なかった。
地球全土を打ちのめしたこの事件は、地球上の反コーディネイター、反プラント感情を爆発的に高めることとなった。
このエープリルフール・クライシスで、数億~10億もの人命が失われたと予測されたが正確な犠牲者の推計は不可能であった。
更に地球連合加盟国がプラントとの戦争遂行を優先したこともあって被害は大戦中を通して拡大を続け、地球住民の多くは、エネルギー事情の回復のめどが立つまで苦しめられ続けることとなった。
地球連合加盟国がプラントとの戦争遂行を優先したこともあって被害は大戦中を通して拡大を続け、
地球住民の多くは、エネルギー事情の回復のめどが立つまで苦しめられ続けることとなった。
エープリルフール・クライシスで混乱状態の地球に月と一部の宙域以外の宇宙を制圧したザフト軍は
地球侵攻作戦を開始した。
国内や隣国の混乱状態を収拾するのに少なからざる数の軍を割いていた地球連合は、宇宙艦隊が世界樹攻防戦の被害から戦力回復する為に艦隊保全主義(フリート・イン・ビーイング)を取っていたもあって降下を阻止出来なかった。
C.E 70年 4月2日
昨日のニュートロンジャマー投下による混乱の最中にザフト軍は、軌道上から地球唯一の親プラント国家であった大洋州連合領 オーストラリア大陸 カーペンタリア湾に基地を設営する為、基地施設を分割降下させ、同時に組み立ての為の工兵部隊を含むザフト軍を降下させた。
事前に大西洋連合内のスパイより、情報を得ていた地球連合軍は、エープリルフール・クライシスの混乱の中でハワイ基地より太平洋艦隊をカーペンタリア湾に派遣、基地建設の阻止を図った。
太平洋艦隊の航空部隊に対し、ザフト軍は、空戦モビルスーツ ディンを投入、誘導兵器を封じられた地球連合軍側航空兵力は、宇宙空間でのモビルアーマー部隊と同様に壊滅した。
更に航空機の傘を失った太平洋艦隊にグゥルを装備したD型装備のジンを含む艦攻部隊が強襲、
ギリシャ神話の女神の持つ鉄壁の盾の名を冠するイージス艦のイージスシステムもニュートロンジャマーによる
電波障害下では、本来の性能を発揮できず、太平洋艦隊は、射撃演習の的に成り果てた。
数時間で太平洋艦隊は、戦力の8割を喪失して退却した。
こうしてカーペンタリア制圧戦は、NJ下の戦場に適応したザフト軍の勝利に終わったのであった。
その後、カーペンタリア基地は、モビルスーツを作業用に転用したことも相まって翌月の20日に
完成、地球上におけるザフト軍の最大の基地として機能することとなる。
C.E 70年4月10日
珊瑚海 旧西暦時代、史上初の空母機動部隊同士の海戦が行われたこの海域で、大洋州連合領ポートモレスビー攻略を企図する大西洋連邦艦隊を主軸とする地球連合海軍と大洋州連合海軍とザフト軍との間で戦闘が発生した。
ザフト軍は、指揮下の大洋州連合艦隊を囮として特定海域に地球連合海軍を誘引し、その海域に予め待機していた世界初の水中戦モビルスーツ ジン・フェムウスで構成されたモビルスーツ部隊による奇襲攻撃により、大損害を与え、攻略を断念させた。
この時、モビルスーツ部隊の指揮官を務めたのは、元海洋生物学者のザフト軍人 マルコ・モラシムであった。
後に彼は、紅海方面でユーラシア連邦と南アフリカ統一機構海軍で構成される地球連合艦隊をボズゴロフ級潜水空母で構成される潜水艦隊と飛行、水中MSの連携で壊滅させ、紅海の鯱の勇名を得ることとなる。
この珊瑚海海戦で地球連合海軍は、大損害を被った。特にモラシム小艦隊と最初に交戦した第21ASW(対潜水艦戦)艦隊は、所属艦艇が全艦撃沈という文字通りの全滅であった。
この第21ASW(対潜水艦戦)艦隊は、旗艦のカンバーランド以下、キングズビル、アストリアら3隻のヘリコプター駆逐艦と、カナジアン、ブラッドフォードら2隻のミサイル駆逐艦で構成されていた。
これらの艦艇は、再構築戦争期に建造された廃艦寸前の艦艇でニュートロンジャマーによる核分裂炉が使用不能になったことによる原子力艦艇の損失の穴を埋める為、急遽投入された部隊だった。
その為、他の艦艇に比べ、性能が劣り、乗員の技量が低下していたことが、この様な悲劇を招いたのである。
彼らの苦難は戦闘後も続き、命からがら艦艇より脱出した将兵は、海上にて救援を待っていたが、ニュートロンジャマーによる電波障害によって救援は大幅に遅れたことで、地球連合海軍によって救助されたのは、対潜ヘリのクルー1名のみ、それ以外は全員が海の藻屑となった。
この二つの戦いでザフト軍は、NJ下の戦場でのモビルスーツの有効性を再認識し、陸海空全ての主要戦力を、モビルスーツで補完するモビルスーツ中心主義を推し進めることとなる。
地球連合軍は、対潜装備、対空火器の拡充、具体的に言えば、第二次世界大戦中のヘッジホッグ 対潜迫撃砲やアメリカ海軍の対空弾幕に代表される無誘導式の弾幕を張るタイプの装備の復活、再構築戦争期の核戦争下の電波障害下でも運用可能な旧式通信機の再生産や信号弾などによる連絡によって電波障害下の地上戦に備えようとしていた。
ページ上へ戻る