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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)

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間章 5話 焼け落ちる世界樹~地上に墜ちた勇者ども

 
前書き
本作品の設定では、アフリカは、開戦前にアフリカ連合という統一国家が存在していた設定です。 

 
C.E 70年 2月20日

地球で南アメリカ合衆国が地球連合傘下に入ったのと同じ日にプラントは、 自分達と同じくL5に存在するスペースコロニー群に創設されたばかりのザフト艦隊を派遣、制圧作戦を開始した。

この作戦の目的としては、L5の宇宙拠点の制圧によって地球連合艦隊が再び侵攻してくるのを防ぐ為であった。
L5スペースコロニー群は、大半が戦わずして降伏するか中立を宣言し事実上の半独立国と化した。
一部では守備隊が抵抗したもののそれらは、ザフト軍MS部隊が制圧した。
このコロニー内での小戦闘によってMSが従来の地上兵器よりもコロニー戦に適しているということが証明された。

この動きに地球連合は月面 プトレマイオス基地の宇宙艦隊を派遣しようとしたもののL1の宇宙ステーション 世界樹に集結した時点でL5宙域が制圧された為作戦は中止となった。

その2日後の2月22日 L1の地球連合軍の橋頭堡 世界樹を攻略すべく、ザフト軍は侵攻を開始した。

L1宙域 最大のスペースコロニーである世界樹は、C.E 11年に完成した宇宙都市で、当時は、初の恒久的宇宙ステーションとして話題になった。C.E 15年の木星探査船「ツィオルコフスキー」も、ここの宇宙船ドックで建造され、木星へと旅立っていった。

またC.E 34年より開始されたプラントの建設の初期、工事の為の人員や物資、資材の輸送に使われた。
そしてC.E 70年の時点でも世界樹は、改築とドッキングを重ね、当初の面影を失いながらも宇宙基地としての機能は健在で、地球と月を結ぶ流通拠点として存在していた。

軍事的にも地球連合は、L1宙域における艦隊の補給拠点として重要拠点の一つで、ザフト艦隊がこの世界樹を目標としたのも、そのような理由からだった。
地球連合側は、第1艦隊、第2艦隊、第3艦隊を派遣、地球連合第1統合戦闘集団を結成、L5方面より侵攻して来るザフト宇宙艦隊を迎撃する構えをとった。

この時、地球連合艦隊の将校達は、自軍の勝利を確信していたとされる。
それも当然と言えた。
地球連合の艦艇は、ザフト軍に対し、艦載機数でも火力でも上回っていた。艦載機では、最新鋭機のメビウスだけでなく、旧世代機のミストラルも含まれていた。

ザフト艦隊戦力は、地球連合艦隊の3分の1程の規模で、質的にも連合側艦艇と互角に戦える新鋭艦 ナスカ級とローラシア級は少数で大多数は、民間船を改造した仮設艦艇とプラント独立時に接収、闇ルートで入手した連合製艦艇であった。


しかし、この圧倒的戦力の差を埋めるためザフトは地球連合艦隊が持っていなかった新兵器を使用した……一つは、ナスカ級やローラシア級から仮設輸送艦や鹵獲連合艦艇にも搭載された人型機動兵器 モビルスーツ

もう一つは、核分裂を抑制し、電波障害を引き起こすニュートロンジャマーであった。

ニュートロンジャマーの使用によって旧式の核分裂炉を運用していた地球連合側旧式艦艇は機能を停止し、単なる的と化した。さらに、電波障害によって従来の誘導兵器は無力化されたことで戦況は、またしても多くの人間の想定と逆に地球連合軍の不利、ザフト軍の圧倒的優勢となった。

それでも数に勝る地球連合軍は、L1宙域のコロニー住民避難の為に世界樹の無人工業区画を盾にする等して奮戦、戦闘は、ほぼ互角となった。

激戦の最中、流れ弾の被害と老朽化によって世界樹が突如崩壊を始めた。

それを見た地球連合艦隊は、住民の救出を継続不可能と判断し、撤退を開始、
ザフト軍は一部が追撃したものの世界樹の崩壊に巻き込まれることを恐れて同じく撤退した。

両軍の艦隊が見守る中、古代ゲルマン人が信仰した世界樹の名を継ぐ宇宙ステーションは各所から爆炎を吹き上げて崩壊していった。

あたかもそれは北欧神話のラグナロクの再現であった・・・…と この戦闘に参加したある地球連合のMAパイロットが証言したほどの壮絶な光景であった。

世界樹攻防戦は、地球連合に多大な打撃を与えると同時に、ザフト軍も作戦目的の世界樹の制圧に失敗したことで双方の痛み分けとなった。 その後、世界樹攻防戦によって発生したコロニーや艦艇の残骸を中心に地球を包み込む形で巨大なデブリ群 デブリベルトが形成された。

このことによって地球航路の幾つかが通行不能となったことは、地球の経済を悪化させ、長期にわたる悪影響を齎した。


C.E 70年 3月8日

ユーラシア連邦とアフリカ連合(後に北のアフリカ共同体と南部を中心とする南アフリカ統一機構に分裂) が共同管理するビクトリア湖を干拓して建設されたビクトリア地区に存在するマスドライバー「ハビリス」を占領すると共に、 周辺部の干拓によって形成された穀倉地帯の制圧による食糧確保を目的とした軌道降下作戦を発動させた。


世界樹攻防戦後、確保した宇宙ステーションの一つで補給したザフト艦隊は、地球軌道アフリカ上空に侵攻、
防衛艦隊を瞬く間に殲滅し、事前砲撃としてビクトリア地区周辺に対して軌道攻撃弾を80発投下すると同時に降下カプセルによって降下を開始した。

これに対する地球連合の動きは早かった。

アフリカ連合は、軍事面では、大規模な陸軍、空軍に比べ、海軍力が弱小で宇宙軍は、存在するものの装備は武装シャトルや偵察衛星、 旧式の宇宙艦艇が中心という3か国には及ぶべくもないものであったが、 ユーラシア連邦と軍事同盟を結んでいた関係から地球連合発足の6日後に地球連合に加盟しており、 地球連合軍が駐留していた上、地球連合からの軍事支援により比べ物にならないほど強化されていた。

防衛艦隊からの通信を受けた段階で地球連合軍は、主要都市に対する軌道爆撃が行われると予想していた。

直ちにアフリカ連合の首都 ナイロビを初めとする主要都市では、住民に対する避難命令が発令された。同時に迎撃命令が発令され、迎撃ミサイルと迎撃部隊が出動した。
80発の軌道攻撃弾は、すべて迎撃ミサイルや高高度迎撃レーザー攻撃機により撃墜されるか軌道を逸らされた。

間髪入れず、地球連合軍はザフト軍の降下部隊に対してのミサイルが発射命令を下した。

マスドライバー基地周辺の軍事拠点から軌道爆撃対策の高高度ミサイルが次々と発射された。白い雲の柱の様にも見えるそれらの中には、事故対策用のミサイルすら動員されていた。通常の軍用軌道降下カプセルは、妨害電波発生装置やデコイアーマー、チャフ・フレアディスペンサー等の対策が施されていた。
だが、ザフト軍は、鹵獲品等一部を除き民間の輸送用カプセルを改造しただけのもので全くの無防備であった。何の妨害も全く受けなかったミサイルの群れは、次々と目標に着弾した。

ビクトリア地区の遥か上空で射撃演習の標的の様にザフト軍を積載した降下カプセルは破壊されていった。

宇宙で無敵を誇ったモビルスーツ ジンを搭載したカプセルは、ミサイルを受けて爆砕し、巨大な鋼鉄の手足を飛び散らせた。

装甲車両部隊のカプセルが爆散し、そこから飛び出したコロニー駐留軍から鹵獲されたと思しき、戦車が落下していく光景は、まるでCGを駆使した映画のワンシーンと錯覚する程であった。

その横ではミサイルを受けた機械化歩兵部隊を満載したカプセルが、焼け焦げた肉片とポリマーを撒き散らしていた。
それでも約半数がミサイルを突破したが、彼らに対しては、各基地より発進した戦闘機部隊が襲い掛かった。

パラシュート降下するジンは、次々と機銃でパラシュートを破かれ、高速で落下する鉄の棺桶に変換された。
一部は、76mm重突撃機銃で抵抗したが、所詮は無誘導兵器に過ぎず、超音速で襲来する戦闘機を撃墜することは、ハンマーでハエを叩き落すかのごとき至難の業であった。

重火力で連合兵とコロニー住民を恐怖のどん底に陥れたD型装備のジンは、機銃掃射を受けただけで誘爆して爆散した。

ある一定の高度に達した段階で潮が引く様に戦闘機部隊は離脱していった。弾と燃料が払底して撤退したのだとザフト兵達は、安堵した。彼らは、半数以下に撃ち減らされながらもマスドライバー施設「ハビリス」を制圧できると考えていた。


彼らの足元・・・地上では、各所にフジヤマ社製の155mm電磁重対空砲、アドゥカーフ社の120mm電磁重高射砲 75mm重高射砲 モルゲンレーテ社30mm対空機関砲を初めとする対空火器が設置された対空陣地群が罪人を突き殺すべく待ち受ける地獄の剣山の如く待ち受けていた…………僅かな部隊が干拓されたビクトリア地区の土を踏むことが出来たものの圧倒的多数のユーラシア連邦軍とアフリカ連合軍に数分で殲滅された。

こうしてザフト軍最初の地上降下作戦は、無残な失敗に終わったのであった・・・…この様な無謀な作戦をプラントが行ったのは、宇宙空間での相次ぐ大勝でザフト上層部が油断していたこと、後に北アフリカの親プラント国家 アフリカ共同体を構成する北アフリカ地区が蜂起するという情報であった。

彼らは、アフリカ連合加盟地域の中では広範な自治権を認められていたものの再構築戦争で荒廃した地域の再開発資金を供出させられており、自らの富が腐敗した地域の私腹を肥やすためだけに充てられていると不満を募らせていた。

その為、分離独立の機運が以前から存在し、プラントは、開戦前から独立派と秘密裡に接触し、協力の約束を取り付けていた。

ザフト上層部の中には、ビクトリア降下作戦降下と同時に中国の星火燎原の故事の如く全土に広がった反乱でアフリカ連合は崩壊すると見ていた者もいたである。

そんな彼らの楽観的予想とは裏腹に北アフリカは一部を除き平穏を保っていた・・・……
この失敗を受けたザフト軍は、作戦失敗の原因を軌道爆撃の不徹底と地球連合軍が宇宙とは異なり、誘導兵器が使用出来たことであると判断した。

そして彼らは、こう考えた・・・…地上も宇宙の様に誘導兵器が使用できない様にしてしまえば、ザフト軍とモビルスーツは無敵を誇るだろうと・・・
またこうとも考えた・・・そのためには地球に〝あるもの〟を降下させる必要があることを・・・後に人類最悪の四月とよばれ、反コーディネイター感情を爆発させることとなる悪魔の決断は、こうして下されたのだった………


 
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