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サマーチョコレート

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第一章

                 サマーチョコレート
 佐古下七海はこの時家族で家の車の中にいた。目的地はファミレスだ。
「夏休みもそろそろ終わりだしな」
「この夏最後のお楽しみよ」
 父の俊彦と母の玲子が七海と彼女の姉の空美、そして弟の陸に言ったのは夏休み最後の日曜日の朝だった。
「今日のお昼はファミレスに行くぞ」
「食べ放題のね」
「あっ、ファミレス行くの?」
 子供達は三人共ファミレスと聞いて笑顔になった。
「じゃあそこでね」
「好きなのを食べていいのね」
「ああ、いいぞ」
 俊彦は子供達に笑顔で答えた。いつもの優しい父の顔だ。
「あそこにあるのならな」
「じゃあ私ステーキね」
 まずは姉の空美が言った、小六で母譲りの赤髪を伸ばしている。大人びた感じで目は優しげだがきりっとしたものがある。背は高く発育がいい。
「それとスープにサラダ」
「僕はスパゲティね」
 小三の弟の陸も言う、父親に似て眠そうな目と少し癖のある黒髪だ。ゲーム好きで車の中ではよくゲームをしている。
「色々食べるよ」
「私も甘いものをね」
 最後に七海が言った。細く奇麗なカーブの眉の下の目は大きく黒目がちで黒のショートヘアの右側をちょん髷にしている。ピンが可愛い。小五でまだ幼い身体つきをしている。小柄で足は細い。口元がかなり可愛く歯は真っ白だ。
「ケーキとかシュークリームを」
「ははは、何でも食べていいからな」
「お昼に行くわよ」
 両親は子供達に笑顔で答えた、そして昼前にだ。
 一家五人で車に乗って父が運転してファミレスまで向かった、玲子が助手席に乗って子供達は後部座席にいる。その後部座席でだ。 
 七海は真ん中にいてファミレスのメニューを母のスマホでチェックしつつだ、姉と弟にこんなことを言った。
「チョコレートフェスタやってるね」
「ええ、スイーツはそうね」
 空美が左から応えた。
「チョコレートケーキにシュークリームに」
「チョコレートフォンデュってあるけれど」
 そのスイーツの中でだ、七海はこうしたものも見付けた。
「これ何?」
「ああ、それね」
 空美はそのチョコレートフォンデュに対して答えた。
「チョコレートが機械で上から下に流れてるの」
「チョコレートが?」
「そこにマシュマロとかクッキーを入れてチョコレートを付けて食べるの」
「そうしたのなの」
「ただ、私も聞いたことはあるけれど」 
 空美はここで少し言葉を止めてだ、あらためて言った。
「ちょっとね」
「食べたことないの?」
「見ることもね」
 それもというのだ。
「ないわ」
「そうなの」
「僕もないね」
 七海から見て右にいる陸はゲームをしつつ話に入った。
「チョコレートフォンデュって」
「陸君も?」
「どんなのだろうね」
 ゲームをしつつ言うのだった。
「一体」
「じゃあファミレスに入ったら」
「うん、一緒に食べようね」
「チョコレートフォンデュもね」
「どんなのかしらね」
 顔に期待を出してだ、七海は言った。
「チョコレートフォンデュって」
「それは着いてからよ」
 玲子が七海に助手席から応えた。
「それで見てね」
「そうしてだよね」
「食べなさい、いいわね」
「うん、じゃあね」
「さあ、着いたら飲むか」
 俊彦は運転しつつ楽しそうに言った。 
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