ソードアートオンライン 孤独者と闇裂く対剣
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ビーター
第一章
shall we dance?
「はぁ、はぁ、はぁ、」
コイツ……ヘル・ビーストと戦いはじめてから何時間が経過したのだろう。
擦っただけでみるみる減少するHPを見ながら、ふと思った。仲間たちも見るからに疲弊し、恐らくは立っているのもやっとの筈だ。
しかし、ゲージは残り一本。全員が倒れずに、ミスなく立ち回れるなら、勝てる戦いだ。
「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」
前衛の血盟騎士団副団長のアスナが、凄まじい剣速で四連突きを繰り出す。
それに続くようにエギル、ヒースクリフも上位スキルを発動させていく。
「団長!エギルさん!」
「了解した!」
「いくぜ!」
アスナの掛け声で3人がほぼ同時にウェポンバッシュを発動させる。
(よし!これでスタンが……!?)
後退しようとしたアスナたちの目に動揺が浮かぶ。
「三人とも!全力で後ろに跳べ!」
俺の声は虚しく響き、ヘル・ビーストは前肢を大きく掲げる。
「ぐるぁ!」
獣は短く吠え、両の爪を交差させながら振り抜く。
先端から光の軌跡が伸び、アスナとエギルを穿った。
タンクとダメージディーラーが倒れ、局面は刻一刻と移り変わる。
「後ろに下がれ!俺たちがやる!」
素早く前衛に入り、同時に武器を変更する。
光を灯しながら俺の剣は二つに別れ、手に装着される。
ナックル系の両手装備、イヴィル・クロー。
「パリィは任せてください!」
ジンが震えながらも告げる。
「わかった。ナギ。二人で押し切るぞ。」
「りょーかい!」
3人の目が徐々に光を減らしていく。
「3,2,1…」
「ゴー!」
俺の合図で三方向に別れ、敵を翻弄する。
「オォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!」
ジンがヘイト上昇スキルを使用すると、狙いはジン一点に絞られていく。
「ぐるぁ!」
きた!
「っ…らぁっ!」
ジャストタイミングでパリィが成功し、大きなダウン時間に入る。
おれとナギは双方向から持てる範囲の最高技を叩き込む。
「オラオラオラァ!」
「せぇ……やぁぁぁぁぁぁぁっ!」
体術複合スキル、アンリミテッドチェイン。
不可視とも言える速さで光芒が閃き、ヘル・ビーストを穿つ。
ナギはダンシング・ヘルレイザー。
そして、技が終わると同時に足に意識を向ける。
「「っ……ぁぁぁぁあっ!」」
体術スキル、弦月。
この連撃で相手の残り体力は3割。
二人の足が弧を描き、獣の頭部を蹴り飛ばす。
俺とナギは同時に跳躍し、スキルを発動させる。
「「shallwedance?」」
剣の切っ先は的確に獣の急所を捉えていく。右薙ぎ、左袈裟斬り、クロス。
さまざまな光芒が暗い部屋を明るく照らしている。
所々にかする鉤爪が確実に近づく死を指し示している。
「ギャゥァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
ヘル・ビーストが叫び、猛攻を仕掛けてくる。
「っ!ふっ!」
矢継ぎ早に繰り出される鉤爪をスキルとステップでいなし、ダメージを押さえる。
やはり、一瞬も気が抜けない。これが命のやり取りだ。
俺は死なない為に、あれを倒すために拳を振るう。
あれば俺を殺すために鉤爪を振り回す。
双方が必死なのだ。それなら……
「これが俺なりの手向けだ。」
俺はスキル、ペイルライダーを発動させ、獣の顎を蹴りあげる。同時に体術スキル発動。エアリアルステップ。
空中で背後を取り、大きく上空へ駆け上がって行く。
天井にたどり着き、下に方向転換をする。天井を全力で蹴り飛ばし、急降下攻撃をする。
「……ぁぁぁぁっ!」
ナックル単発、かつ最上位スキル。復刻の幻影
(ファントム・リヴァイヴ)。
空を一瞬で切り裂き、獣の真下へ降り立つ。
「俺の勝ちだ。」
獣は力なく叫び、体が縮小。そして、音もなく砕け散った。
イヴィル・クローをハートリフレクターに戻し、皆の方へ歩き出す。
「ヒースクリフさん、悪いけど、次の有効化頼める?」
「む、良いだろう。今日はいい活躍をしてくれた。ゆっくりと休みたまえ。」
「ああ。言われなくてもそうするよ。」
「おつかれさん。」
「お疲れ様です、エギルさん。」
拳を打ち合わせ、互いを労う。
「相変わらずかてぇなあ。エギルでいいってのに。」
「じゃあ、ちょっと今度から意識してみますね。」
「おう。お前さんも、しっかり休めよ。」
「はい。」
俺たち3人は転移結晶を手にもち、唱える。
「「「転移!ファーフニル!」」」
戦いは終わった。帰るべき場所に、仲間の待つあの宿を目刺し、再び歩き出す。
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